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空に刻まれた最期の叫び。あなたは無視できる? #blacklivesmatter 運動を風化させないためのアートプロジェクト

みなさんは、最近、ふと空を見上げたことはありますか?

きれいな青空、もくもくした雲、あるいは飛行機。きっといろいろな光景を目撃していることでしょう。

ある土曜日の朝、アメリカの5大都市の空に広がったのは言葉でした。

これは、アメリカ・ミネアポリス近郊で白人の警察官に不適切な梗塞を受けて死亡した、George Floyd(以下、フロイド氏)の最期の叫びを残す、追悼アートプロジェクト。デトロイト、マイアミ、ダラス、ロサンゼルス、ニューヨークといった主要都市の上空で、フロイド氏の言葉を空中広告にのせて、人々に訴えかけたのです。

あなたは、これらの空からの言葉に何を思いますか?

デトロイトに掲げられた「Please I can’t breathe.(お願いだ、息ができない)」

マイアミに掲げられた「My stomach hurts.(お腹が痛い)」

ダラスに掲げられた「My neck hurts.(首に痛みを感じる)」

ロサンゼルスに掲げられた「Everything hurts.(体中が痛い)」

ニューヨークに掲げられた「They’re going to kill me.(彼らに殺される)」

空に言葉が飛ぶ。そんな見慣れない光景と言葉の力が作用して、#blacklivesmatter運動の渦中にいる人だけではなく、多くの人に影響を与えることができた様子。空に広がる彼の悲痛な叫びを目にして、わたしは「この運動を一過性のものにしてはならない」という強い思いを感じました。

この追悼アートプロジェクトの仕掛け人は、ダラスを拠点に活躍するアーティスト、Jammie Holmes(以下、ジェイミーさん)。普段は画家として、アメリカ南部の黒人コミュニティの日常生活を描いています。

今、誰もがフロイド氏の最後の言葉が頭の片隅にあるはずなんだ。そしてそれが、黒人コミュニティにおいて切り離せないものになっている。

このすごく広がっている言葉を、画面以外の場所に存在させたかった。この空中バナーを見た人なら、このメッセージが生活に入り込んでいっただろう。彼の言葉には力がある。他のメッセージを使うことは想像もできなかった。

アメリカでは一般的に空中広告は、大きなスポーツの試合や、企業の宣伝、あるいはプロポーズで使われることが多くて、政治的・社会的なメッセージを発信するために使われることは稀なんだ。さらに広告そのものの製作費と、飛行機のチャーター代金には莫大な予算が必要だった。けれど、フロイド氏の叫びが風化しないようにという思いを込め、空中広告を実行したんだ。

と、ジェイミーさん。

スタジオでのジェイミーさん。

ジェイミーさんの取り組みは、アーティストならではの独創的な発想と、空を使った壮大な表現で、「風化させない」という強い意思を人びとの印象づけました。

自分の意思を発信する場が多様になった一方で、人々にどうすれば届くだろうかと考えると、工夫や戦略が必要かもしれませんね。何気ない意思表示でも、伝えたい相手にいつも以上に伝わる方法を探してみましょう。

– NEXT ACTION –

日本でも、先日、医療従事者に感謝と敬意を表するべく、航空自衛隊「ブルーインパルス」が飛行しました。あなたが感謝と敬意をあらわしたい人は誰ですか? いつもより一工夫加えて、連絡をしてみてはいかがでしょう。

[via Fast Company, Jammie Holmes, Photos: Hayden Stinebaugh, Andre De Aguilar, Mark LaBoyteaux, Ricky Fabrizio, Sue Kwon]

(Text: 塩澤僚子)