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「よりよく生きる」ってなんだろう
パッケージやブランド、所属や肩書き、社会的枠組みが私たちの「生」を規定して止まない。自分の意志で選んだものが、実は、誰かに選ば〈させられ〉ていたのかもしれない―、言い知れぬ不安の中で、自らの「生」を実感することは、いかにして可能なのだろうか。
社会は、多層化・多元化しながら、急速に複雑に多様に発展していく。私たちはその速度に時に流されまいと抵抗しながらも、自分自身の「生」の手がかりとなるもの、よりよい生き方を模索してきた。
各々の日々の現場で生まれた素朴な問いから出発し、先人たちの思想を読み解き、そこで得た「微かな手がかり」を持って再び日常へと還る。この「現実と秘境との往復」が私たちの日常をより鮮やかにし、よりよく生きるための手助けに、きっとなる。そう信じている。
本会では、こうした中で各々が各々の現場で見出した世界観を自分の言葉で「提案」していきたい。はじめに3人が各々の「提案」を行い、そして、後半では対話を通じて三世界の再構成を試みる。統一性と多様性が同時に肯定される地平の探索−。
ご関心のある方、ぜひともご参加ください。
スケジュール
13:10 開場、受付
13:30 開始
・オープニング
・プレゼン①「新実在論」
・プレゼン②「他者なき世界」
・プレゼン③「労働の快楽」
・全体セッション
・クロージング
17:30 終了
3つのテーマについて
プレゼン①「新実在論」
(発表者:古瀬 正也)
いま「存在」が揺らいでいる。ドイツでは、哲学者マルクス・ガブリエルの著書『なぜ世界は存在しないのか』が異例のベストセラーとなった。彼曰く、すべてを包み込むような普遍的で客観的な「世界」は存在しないが、「世界」以外のあらゆるもの(空想や妄想も含めて)すべては「存在」する。この「新実在論」と呼ばれる思想は、私の目から見ると、フィンランド発の精神療法「オープン・ダイアローグ」や北海道浦河町にある精神障害等をかかえた当事者の地域活動拠点「べてるの家」や「当事者研究」に通ずるものがある。今回の発表では、「新実在論」を基軸に「オープン・ダイアローグ」「べてるの家」「当事者研究」を紹介し、最後には、私たちの日常生活でこの世界観がどのように役立ちそうなのかについて提案したいと思う。
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プレゼン②「他者なき世界」
(発表者:佐々木 晃也)
生の手応えが感得しづらくとも、わたしたちには仕事と生活、大切な家族や友人たちとの現実がある。こうした状況において、わたしたちの多くは日々の営みの中で生の手応えを取り戻そうとする多様な企てを展開した。彼らは現実を過度に肯定も否定もせず、クレバーなリアリストでありながら、同時にまるごとの生の欲望を肯定する実践者へと変質していったのである。では、こうした変化の後景にはいかなる世界が流れているのか。発表者が手がかりとするのは、20世紀フランスの哲学者ジル・ドゥルーズの「他者なき世界」である。他者を喪失しながらも、ついに欲望が立ち直り、運命が味方となる世界。本発表では、「他者なき世界」を読み解きつつ、スピノザ哲学も手がかりに、欲望が生の手応えへと到達する一つの航路を提案する。
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プレゼン③「労働の快楽」
(発表者:北川 真紀)
労働に「快楽」を求めることは不可能なのだろうか。産業革命を経た19世紀のイギリスで「すべての労働を芸術に」と主張した思想家がいた。日本ではデザイナーとして有名なウィリアム・モリスである。この発表では、苦役の対価として報酬を得るという資本主義的労働観を批判して「真の芸術とは、人間が労働に対する喜びを表現することである」と力強く訴えていたモリスの主張を、現代の文脈で読み解く。「生」が希薄化していく社会で、手応えを感じながら、働き、暮らすことは何によって可能になるのか。モリスの再読を通して提案するのは、芸術を、家事など誰もが経験する労働へと拡張することである。ハイデッガーの講演録「建てる・住まう・考える」やティム・インゴルドの「生」の人類学も手がかりとしながら、提案を行う。
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【対話部とは?】
対話部は、部員3名がそれぞれの持つ専門領域を活かし、暮らしの中で生まれる素朴な疑問について「対話」するユニットです。忙しなく流れていく現代社会の中で何気なく繰り返される人々の営みを”あえて”問い直し、他者と見方(価値観)を共有し、対話することで、より良い生き方を模索しています。
対話部ホームページはこちら
対話部の三人のプロフィール
■ 古瀬正也
1988年埼玉生まれ。神奈川県鎌倉市稲村ガ崎在住。フリーランスのファシリテーター。2008年、ワールド・カフェを体験し、対話に興味を持つ。2010年、47都道府県でワールド・カフェを開催し、延べ1200名が参加。2012年、「古瀬ワークショップデザイン事務所」開業。2013年、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修了。中央省庁や行政、民間企業、NPOなどあらゆる分野で300回以上のワークショップを実施。近年では、南山大学のTグループやトレーナートレーニングを経て、体験学習を基にした研修なども行う。最近の関心は、円坐、ミニカウンセリング、ファミリー・コンステレーション、新実在論、オープン・ダイアローグ、当事者研究。
■ 北川真紀
1989年滋賀県生まれ。2009年北タイに住む少数民族・リス族の村を訪れたことをきっかけに人類学と芸術(民藝)に興味を持つ。上智大学英語学科卒業後、<ウルルン滞在記>のような番組制作を夢見てテレビ局に入社。広報、美術展事業、芸術番組のプロデュースを経て2016年に退社。以後、東京大学大学院にて本格的に文化人類学に取り組む。研究関心は、「生」の手応え、感覚経験、家事労働。現在は電気やガス、水などの供給網(グリッド)から離れてエネルギーを自給しながら生活する人々の暮らし=「オフグリッド」を調査し、その感覚経験と創造性を探っている。今年中に国内にて長期フィールド調査を開始予定。
■ 佐々木晃也
1989年北海道生まれ。東京都台東区在住。2009年から他者との特異的な出会いの経験に関心を持ち、対話の研究を始める。対話の(生まれやすい)態度の研究の後、社会変革行動の起因となる対話の微視的分析の研究、対話を促進させる問いのデザイン過程の研究を行う。対話の発生を個々人の態度、相互作用の構造、そして環境因子という三つの視点から調べながら、「出会い以前」つまり「孤独の過ごし方」そのものに問題意識を感じ、スピノザ哲学に傾倒。4年の社会人経験を経て、2018年4月から京都の大谷大学大学院文学研究科(修士課程)に進学予定。 研究関心は、ストア倫理学の系譜とドゥルーズ哲学。
【日時】
2018年3月18日(日)13:30~17:30
【会場】
Ryozan Park 巣鴨(地下イベントスペース)
【住所】
東京都豊島区巣鴨1-9-1
巣鴨駅(JR山手線・三田線)から徒歩3分
【参加料】
参加費:3,000円
定員:30人
【申込み先】
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