米元副大統領アル・ゴア氏著『私たちの選択』は、 映画でも話題となった前著『不都合な真実』の続編にあたる。アル・ゴア氏は、『不都合な真実』後、温暖化の解決方法を考える会議(ソリューションサミット)を30回以上開き、各分野の科学者や専門家と対話を重ねた。この本にはその成果が詰め込まれている。その分、質量ともに重厚感があり、読者に重い「選択」を迫る内容でもある。だから今回は、少し発想を変えて『私たちの選択』を楽しみながら読むための5つの方法を紹介したい。
1.写真集として楽しむ
『私たちの選択』は、半数以上のページに写真かイラストが差し込まれている。だから、文章を読まずに、ぱらぱらと写真やイラストを眺めるという楽しみ方もできる。関心を持った写真があれば、関連記事を拾い読みすれば良い。
例えば、第12章「よりすくないことはより豊かなこと」の初めの見開きページには、大きな新型タービンの写真が使われている。羽が幾重にも重なっているような巨大なタービンを眺めるだけでも、技術革新への関心が高まる。関心が読む動機付けになるかもしれない。
他にも、日本国内の事例も含め、世界各地の自然やエネルギー、建物、テクノロジーに関する写真とイラストがあるので、眺めているだけでも飽きない。
2.『不都合な真実』と合わせて楽しむ
書籍、あるいは映画の『不都合な真実』と合わせて『私たちの選択』を楽しむことができる。『不都合な真実』は問題提起、『私たちの選択』は課題解決、という2つの側面から比べることができるし、『不都合な真実』の内容がアル・ゴア氏の半生も織り交ぜながら描いていたように、政治家としてアル・ゴア氏の哲学や行動を追いながら『私たちの選択』が書かれた意図をくみ取るという楽しみ方もできる。
3.修行として楽しむ
もちろん、この分厚い一冊を隅から隅まで読むのもひとつの選択だ。この本をじっくり読み込めば、地球温暖化に関する技術や課題についてかなり詳しくなれる。専門家でも、ここまで広い範囲の知識をカバーしている人は少ないかもしれない。とにかく、温暖化について網羅的に知っておきたいという方には、修行としてのいっき読みをおすすめする。修行に入るときには、コーヒーと甘い物を準備しよう。
4.辞書として楽しむ
『私たちの選択』は、厚さにして約2.6センチ。本としてではなく、辞書として楽しむ方法もある。風力発電や有機的な農法などの直接的な解決方法のみならず、類似本には抜けがちな土壌や森林の役割、人口増加の問題などの根本的な課題についても詳しく書かれているので、辞書として使うことも可能だ。
巻末の索引からさかのぼれば、気になるキーワードや確認したい新技術について調べることができる。例えば、風力エネルギー。なんとなく知っているというひとは多いかもしれないが索引からさかのぼって読むことで、世界の風力エネルギーの生産量、風力タービンの仕組み(イラスト付き)、洋上ウィンドファームの現状などについて詳しく知ることができる。豊富な写真やイラストも、読者の理解を助けてくれる。
5.「私自身の選択(My Choice)」の参考として楽しむ
本書のタイトルは『私たちの選択』。説明するまでもなく、温暖化にどう対処するのかという地球規模の課題は、科学者や政治家といった他の誰かの選択ではなく、地球に生きる私たちすべての選択なのだというメッセージが込められている。
しかし、この本を読んだからといって、私たち自身が日常レベルで何を選択していけばいいのかがすぐ分かるというわけではないし、「私たちの選択」と言われても実感がわきにくい。
だから、最後におすすめしたいのは「私自身の選択」の参考として楽しむ方法だ。地球規模の温暖化にたいする『私たちの選択』を読むたびに突きつけられていると思うと気が重くなるが、この本をすぐに手にとれるところに置いておいて、パラパラと眺めたり、気になるキーワードを調べてみたり、日常生活や仕事での「私自身の選択」に活かしていく、という楽しみ方であれば、より持続可能なのではないかと思う。
アル・ゴア氏が、この本の冒頭で引用しているアフリカの古いことわざに「急いで行きたいなら、一人で行け。遠くまで行きたいなら、一緒に行け」という一句があるそうだ。
『私たちの選択』も、一緒に行くにはもってこいの一冊だ。
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