greenz.jpの連載「暮らしの変人」をともにつくりませんか→

greenz people ロゴ

人口減少・超高齢化社会が進展する小さな港町に住む私が「地方創生会議」で感じたのは、共感の輪を広げることの大切さ。

みなさんは、自分の生まれ育った地域に「誇り」を持っていますか?

私の住むまちは、愛媛県八幡浜市。四国の西の玄関口として、古くから大阪・高知との中継交易地として栄え、四国で最初に電灯が灯り、愛媛で最初に銀行が誕生したまちです。ライト兄弟よりも早く飛行実験に成功した二宮忠八をはじめ、先人たちの挑戦や功績は、現代に生きる私にとっての誇りです。

そんな私の故郷ですが、2002年4月15日の「日経ビジネス」情報誌における特集で「全国衰退都市ランキング第4位」にランクイン。新卒1年目で地元企業に就職したばかりだった当時の私は、「まさか自分の住むまちが…」と衝撃が走り、言葉が出ませんでした。

その後、任意団体としての準備期間を経て、2014年、地元に帰ってきた同級生などともにNPO法人「八幡浜元気プロジェクト」(若者を主体とした地域活性化団体)を設立。疲弊感や閉塞感が漂う地元に、風を呼び込み、光を当てることを通じて、そこに住む人の「誇りを再建する」という考えのもと、動き出しました。

現在もその活動は続き、政府の打ち出す「地方創生」という言葉の中で、次の10年を見据え、新たなまちづくり計画と団体としての役割を再定義するべく、現場最前線で奮闘しているところです。

私の生まれ育ったまち愛媛県八幡浜市。

そんな中、地方創生会議の愛媛アンバサダーを務める大学生から「地方創生会議があるので、愛媛で活躍されている浜田さんにぜひ来てほしい」と声をかけていただきました。初めは躊躇したのですが、「地域活性化のヒントを得れるなら」と参加を決意。

2017年6月10・11日の2日間、和歌山県伊都郡高野町高野山に全国から約300人が集まった「地方創生会議」に私も参加してきました。

イベント名にある「地方創生」とは、「各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生すること」(内閣官房まち・ひと・しごと創生本部)。

今回は、さまざまなテーマによるゲストトーク、地方創生アワードの選出が行われたこの会議の中から、「新しいことに取り組みながらも、やりっ放しになっている」私のまちとの接点を感じた、「地方創生×メディア」のゲストトークを中心にご紹介します。

指出一正さん・徳谷柿次郎さんと考える「まちを編集する」ということ

テーマは「地方創生×メディア」。左から、平野さん、指出さん、徳谷さん。

「地方創生×メディア」セッションに登壇したゲストは、「ソトコト」編集長の指出一正さん、「ジモコロ」編集長の徳谷柿次郎さん。モデレーターは、地元和歌山のニュースサイト「和歌山経済新聞」の編集長、平野隆則さんが務めました。

セッションの冒頭、柿次郎さんからの「編集という視点で、地方創生について話そう」という提案に対し、指出さんから「ならば、とびきり熱いキーワードがある」という一言が飛び出しました。

「ソトコト」編集長の指出一正さん(左)。2011年6月から「ソトコト」の編集長を務めている指出さんは、「まちを編集する」という視点を持ち、各地域に入り「広げすぎた取り組みを整える」をされています。この日は活動先の出雲大社から朝やって来たそうです。

指出さん 「まちを編集する」という言葉です。その価値観を共有すると、それぞれのまちで、編集者が増えていくと思うんですよ。

で、僕も柿次郎さんも、職能は編集者。みなさんも編集者として関わってくれるようになったら、そのまちの「解像度」が上がったり、おもしろいことが起きると思うんですよ。

今、編集の手法が広がっていると感じます。たとえば、食堂やみかんも編集の対象になってますよね。本来は「みかん」と言って終わりのところを、「みかんにどうやって付加価値を付けて、受け手に届けるか」と考える。それって、編集者の仕事に似ていると思うんです。

編集って古い言葉ですが、まちづくり、コミュニティづくりに、そのスキルを使うっていうことが出てきているんです。

「それは、まちそのものを編集するということですか?」という平野さんの問いに対し、指出さんはこう答えます。

指出さん そうです。今って、新しいものをたくさん生み出して、大きく広げたままになっているものが多いんですよ。

もっと冷静な目線で見る。いっぱい集めて、捨てていかないといけないんです。

だから、編集という視点で見ると、この中から選ばなければならない。どれを今、みんなに伝えたらまちが元気になるか、物が売れるかという視点が大事なのですよ。

一方、ウェブメディア「ジモコロ」編集長として、”地方に深く埋もれているもの”を見つけてきた徳谷柿次郎さんは、こう話します。

「ジモコロ」編集長の徳谷柿次郎さん(右)。全国を飛び回り、地元の「おもしろいネタ」を独自の視点で見つけ記事にしています。

柿次郎さん 「ジモコロ」では、地域に深く埋もれている面白いものを見つけて、ウェブ上で多くの人に届けていくという活動をしてきました。それは、地元の人が自分のやっていることに自信を持てるよう、お手伝いしたいと思いからですね。

大事なのは、「ファンタジー性」。「プロレスラー=強そう」というような雰囲気づくりを、地域にどう生み出していくかが大事です。「なんか盛り上がっているらしいから、行こうよ」。そう思ってもらえる地域をつくることを、地元の人と連動して進めていきたいですね。

柿次郎さんの話にあった「見つける」という言葉は、指出さんも大事だと言います。

指出さん 「見つける」ということ、発見するということが大事だと思います。僕のような47歳の発見より、20代の方が発見して、気の利いたコメントをしてSNSに上げてくれた方が、はるかにリーチするんですよ。

そして、それぞれの視点で発見したものを、みんなで”喜び合う”ということが大事。どの地域の中には、宝物はいっぱいあります。同じものでも表現の仕方は無限にあるので、その工夫さえ続ければ地方都市に可能性が潰れることはないんです。

指出さんの力強い言葉に、会場が静まり返りました。「20代の発見を取り入れていく」という言葉がありましたが、若い世代の発見を取り入れていくということはどの地域でも可能なのでしょうか? 柿次郎さんは、こう話します。

柿次郎さん そのためには、情報が集まる状態にしておくというのが大事ですね。好きなこと、興味があることをSNSなどでアピールする。それをやれていない人って、意外と多いんですよね。

あえて一歩踏み出し、残しておくのが大事だということは、毎回このような場ではしつこく言っていますね。

あくまで、情報の起点は、みなさん。この機会に多くの人が情報発信に興味をもってくれたらうれしいですね。僕はそこに食いついて取材に行きますから。

私が、指出さんと柿次郎さんのお話を聞き大事だと感じたのは、「まちの編集者」になるには、まず自分自身の感性を信じること、そして地域の発見を「自分の言葉」で発信すること。また、その発見を地域の人と「喜び合い」、地域が「盛り上がっている」空気感をつくることが必要だなと思いました。

それぞれの地域の地方創生の物語をつくる

さまざまなトークセッションやワークショップが開催された「地方創生会議」。その主催者である小幡和輝さんは、どんな気づきを得たのか、聞いてみました。

小幡さん 日本中の方たちと話して改めて感じたのは、みんな自分たちのまちが大好きで、まちをもっとよくしたいという想いで動いているということです。地方創生とは、1人ひとりが自分の地域のために何ができるのかを主体的に考えて、自分のできることでまちに貢献することだと思いました。

地方創生会議の主催者である実行委員長の小幡和輝さん

「地方創生×6次産業」をテーマにしたトークセッションも行われました。地域の「食」や「伝統産業」をはじめとした地域資源に目を向け、売出しに取り組まれている方々のお話を聴き、普段の生活で「当たり前にあるもの」の中でも、光の当て方を工夫すれば、輝く角度が見つけられることに気づきました。

「地方創生×お金」というテーマでは、家入一真さんから「地方創生という言葉には、上から仕組みをはめようとしているし、匂いを感じない」という言葉が飛び出しました。私も、地域に関わる一人として、現場には多くの失敗や成功の物語があり、上から枠にはめ込むのではなく、その物語を各地から集め、共有していくことが必要だと感じました。

2日目には「地方創生アワードプレゼンテーション」が行われました。予選を経て登壇した7人のプレゼンターからは、地域や産業に向き合い取り組んでいることの紹介やこれからの決意表明がありました。私は、この7人の熱い思いに耳を傾け、「地域や取り組んでいることに自信と誇りを持ち、共感の輪を広げること」の大切さを感じました。

一方、私は、この地方創生会議に参加して、感じたことが3つあります。

1つは、「自分の地域に誇りを持つことの大切さ」です。

地方創生会議では、自分の地域を愛するメンバーが大勢集まり、各地の話題で盛り上がりました。地方創生を成し遂げるためには、地域が「好き」と誇りを持って語れる人を増やすということがまず大事だと感じました。

2つ目は、「地域と向き合いながら、自律的に動くことの大切さ」です。

指出さん・柿次郎さんの話にも出てきましたが、地域の素材・人に目を向け、自らが向き合うことで、地域の編み目を見つけていくことの必要性です。また、その上で、自らが「まちの編集者」である感覚を持ち、現場で動くことが大事だと感じました。

3つ目は、「一人ひとりの物語を応援し、共感の輪を広げることの大切さ」です。

地方創生は、誰か特定の人だけ頑張れば成し遂げられるものではありません。先頭に立って活動に取り組む人もいれば、応援者も必要だと思います。日本各地で起こる様々な物語を伝え、共感と応援の輪を広げていくことが大切だと感じました。

参加者それぞれが住む都道府県の自慢を模造紙に書き込んでいます。

1日目夜の交流会では、全参加者が一同に介し、和歌山県自慢の料理を食べながら交流を深めました。私自身も積極的に交流をしながら、普段抱えている悩みやこれからしたいことを共有しました。中には、イベント開催のお誘いを受けることもあり、刺激的で今後につながる素敵なひと時になりました。また、みなさんの熱い思いに押され、私自身も「もっと頑張ろう」と決意を新たにしました。

今回ご紹介できませんでしたが、「地方創生×お金」のトークセッション中、家入一真さんが話したのは

地方創生という言葉には、上から仕組みをはめようとしているし、匂いを感じない。

ということ。その言葉に私も、強く共感をしました。

日本各地では、「地方創生」という言葉が使われるよりもずっと前から地道に活動を続けてこられている方がたくさんいます。

それに、地域ごとの特色も価値も違います。そうした中で、地方創生のあり方も、それぞれの地域でかたちが違うのではないでしょうか。

地方創生会議では、多くの方々との交流を通じ、私自身の活動につながるたくさんの気づきをいただきました。この会議は、各地域の物語が共鳴し合う、ひとつのきっかけになったのかもしれません。