一人ひとりの暮らしから社会を変える仲間「greenz people」募集中!→

greenz people ロゴ

パーマカルチャーにヒップホップをかけたら、こうなった。持続可能な暮らしを学びながら、ラップで表現力を養う「May Project Garden」

ヒップホップといえば、セックスや暴力を表現するもの。
そしてラッパーの人って、ちょっとコワモテ。
そんなイメージを持っている方は多いかもしれません。

しかし、それは本来の姿ではないようです。生みの親であるAfrika Bambaataaがヒップホップのモットーとしたのは、「平和、愛、団結、楽しむこと」。ドナルド・トランプ政権が誕生して以降は、マイノリティの声を代弁したり、平和を願う政治的メッセージを発信するツールとしてヒップホップが注目を浴びているのです。

その一方、アメリカ西海岸を中心に広がっているのがパーマカルチャー。人生の傍観者にならず、これからの暮らしを自らの手でつくりだしたい。そのためのスキルを身につけ、実践し続けたい。そんな人びとのニーズが可視化され、世界中にパーマカルチャーを体験できるスポットが誕生しています。

このヒップホップとパーマカルチャー。似ているようで似ていない(?)、両者をミックスした若者向けの学びの場が誕生しました。それが今回紹介する「May Project Garden」です。

「May Project Garden」は、、Ian Solomon-Kawall(以下、イアンさん)がロンドン南部のMordenというまちにあるイアンさんの自宅の庭で始めたプロジェクト。

2009年から開始し、毎週「Natural City Living」というワークショップを行い、これまで自然化粧品やジュースづくりといった身近なところから、コンポストやアースオーブンなど、より実践的な持続可能な暮らし方を、幅広い世代の異なるバックグラウンドの人たちに共有してきました。

しぼりたてのリンゴジュースをつくる様子

アースオーブンをつくるワークショップにて

そんな「May Project Garden」が2015年から行っているのが、主に18歳から25歳といった若い世代を対象とした「HipHop, Food and the Green Economy」という学びの場。パーマカルチャー体験にヒップホップのエネルギーが加わることで、他にはないプログラムになっているようです。

まず「May Project Garden」で学ぶのが、「食と栄養」や「食の育て方」「パーマカルチャー」について。若い参加者たちに、食がどのように私たちの心と体に影響しているか、また新鮮なものを食べることの大切さを伝えます。参加者の中にはピザにのっているトマトしか見たことがなく、スライスされていないトマトを初めて見る生徒もいるのだというから驚きです。

イアンさんの庭での体験を通して、便利に手に入るものを食べる「消費者」としてだけではなく、どのようにしたら私たちの食を、私たちがコントロールできるか、それぞれが自由に考えていきます。

次に行うのは、自分の住むまちに出かけ、どのようにしたら自分のまちの経済を持続的に発展させられるかを考えるフィールドワーク。そして、実際にまちを歩いて気づいたことを、なんとラップで表現していくんです! もちろん参加者は、ラップ未経験の人ばかり。ビートボクサーのMarv RadioやアコースティックギタリストのChild of Chiefなどが、参加者たちの強力なサポートにつくそう。

そして最後に、自分の住むまちで「Come We Grow」という音楽イベントを実施。参加者たちは、音楽を通じて、どのように持続可能な暮らしを広めていけるのか、イベントで実践・表現します。

「Come We Grow」イベントのにぎわい

自然派化粧品Lushの「Lush サミット」で開催された「Come we grow」

実は、イギリスに住む16~24歳のうち、11.5%がニートだといわれています(2016年国家統計局調査)。日本では、15~34歳のうちの2.1%がニートという状況と比べると、問題は深刻です(平成27年版 子ども・若者白書)。

「May Project Garden」での学びは、自分を活かせる場所があることを知り、身の回りの暮らしに少しでも変化を与えることができるという自信にもつながるかもしれません。

では、イアンさんにとって、なぜヒップホップだったのでしょうか。次のように語りました。

音楽は、人種差別や貧困といった、どんな辛い社会状況にあっても、自分を受け入れてくれ、安心できる、愛のある場所。その中でヒップホップは、自分の父親が、兄弟が話しかけているようで、「これだ!」と感じた。その後、イギリスでは少なかったヒップホップのDJ活動を始めたんだ。

闘病する母親の看病を20年以上していた自分にとって、ヒップホップは、そういうプレッシャーから解放してくれたし、少し周りから取り残された自分を、また受け入れてくれたような気がした。ヒップホップには、どんな人でも受け入れる愛を示しながら、身の回りの暮らしのために何ができるか考えるきっかけをつくる力があると思う。

イアンさん

自分が望んでいなくても、時に歩んでいる道から少し逸れてしまうことってありますよね。そんな時、置いてけぼりにされたように感じることもあるかもしれません。音楽には、そんな人びとを誰でも受け入れ、包み込んでくれる力があるようです。

そんな不思議な力があるからこそ、暮らしへの違和感やもっとこうだったら、、、といった思いもスムーズに周りの人に伝えられるのではないでしょうか。まずはそういった思いを「表現する」ことが、自分の暮らしを自分でつくるきっかけにつながっていくかもしれませんね。

[via May Project Garden,treehugger,crowdfunder]