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痛快なガンアクションを期待する人びとが観たものとは?観客を銃社会の現実にロックオンする映画「Gun Crazy」

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世界最大の広告・コミュニケーションの祭典、「カンヌ・クリエイティビティ・フェスティバル」。「Cannes Lions 2016」では2016年の受賞作の中から、新たなアクションを考える刺激になるような、ソーシャルグッドな広告を連載で紹介していきます。今回ご紹介するのは、アメリカからの事例です。

銃をめぐって不幸な事件が後を絶たないアメリカ。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の2015年の統計によると、銃による死亡者の数は33,736人。自動車交通事故の死亡者数に迫るほどの数です。

その背景には犯罪から身を守るために銃が必要だとする根強い考え方がありますが、一方でエンターテインメントからの影響もあります。

アメリカのアクション映画ではガンアクションがたびたび登場し、ヒーローが銃で敵をやっつけるシーンが定番。悪を倒すヒーローのアイテムとして、しばしば銃が登場するのです。

しかし、現実の世界で銃は問題を解決してくれるとは限りません。むしろ、殺人や事故、自殺といった取り返しがつかない不幸を招くことも少なくないのです。そんな、銃が引き起こす現実を直視してもらうために、銃暴力を止める活動をしている団体「States United To Prevent Gun Violence(以下、SUPGV)」は、ある映画を製作しました。そのタイトルは『GUN CRAZY』。

SUPGVは、まるでハリウッドの最新アクション超大作であるかのようなダイナミックな予告編やウェブサイト、ポスター広告を上映の6週間前から展開し、映画ファンの話題を喚起。初上映会には、アクション映画ファンを招待しました。
 
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どんなエキサイティングな映画なんだろうと期待の眼差しでスクリーンを見つめていたアクション映画ファンたちが観せられたものは、華麗なガンアクションでも、倒れる悪党たちでもありませんでした。そこに次々と映し出されたのは、不慮の事故で放たれる銃声と、無残に命を絶たれる人々…。

上映前のインタビューでは派手なアクションシーンや刺激的なシーンを心待ちにしているというような声が多かったにもかかわらず、上映中には目を伏せたり頭を抱えたりと、ショックを隠せない様子の観客も。

上映後に観客に話を聞くと、気分が悪くなった、恐ろしかった、心が乱されたという感想を述べる人が多数を占め、94%が銃に対する見方が変わったと回答したのです。
 
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この映画キャンペーンはスクリーンのみならずSNSでも話題となり、大統領選でも銃規制が争点のひとつになる流れにつながりました。
 

映像や音楽などのエンターテインメントは、知らないうちに私たちの考え方に影響を与えています。今回ご紹介したような「GUN CRAZY」のようなショック療法に頼らず、現実の社会で起きている問題に目を向けられるようにしていきたいものです。

(翻訳アシスタント: 大間千奈美)