みなさんは歳をとったら始めたいことってありますか?
新しいビジネスを始めたい!そう思ったシニアたちを徹底サポートし成果をあげている、イギリスで唯一のNGO「prime(以下プライム)」を今回はご紹介します。
プライムは、起業を目指す50歳以上の人々にフォーカスして支援を行っているのが特徴的です。1999年の設立からこれまで25,000人以上のシニア起業家のタマゴを支援してきました。現在スタッフは14人、イギリス南西部のウェールズのプリンスの寄付によって運営されています。
講師によるレクチャーは様々な都市で開かれます
プライムでは、財務のやりくりやソーシャルメディアの使い方など、起業に必要な基本知識のレクチャーやワークショップを無料で受講できます。(一部デポジットを払うコースもあり。)最短で1日だけの導入編から、8週間に及ぶ本格的なコースまで、レクチャーの形式もさまざま。
レクチャーへの参加はメールや電話から誰でも応募でき、ネットワークづくりイベントや個別メンタリングなど、教室での学び以外にも多彩なサポートが受けられるのも特徴です。
人生の新しい章をスタート
起業というと、野心とパワーあふれる若い20代30代がITベンチャーを立ち上げてバリバリ働くーそんなイメージがあるかもしれません。プライムを通じてビジネスを立ち上げたシニアたちの「起業物語」はどのような感じか見てみましょう。
「持っているスキルを社会に還元したい」デビッドさん 67歳
67歳のデビットさんは、海軍で会計や法律関係の文書製作に28年間携わってきました。海軍退役後、学校の会計書類担当として働いていましたが、62歳で退職。今までの自分のキャリアで培った公式文書や書類を正確に的確に書くスキルを活かして社会の役に立ちたいと思い立ち、プライムの門をたたきます。
その後、論文や契約書類の文章構成を精査するプルーフリーディングのビジネスを立ち上げました。まずは地元の会社や個人へのサービスといったところから、地道にビジネスの範囲を広げていきたいとのことです。
長年の夢が花ひらく
「大好きなことを仕事にする」バーバラさん 67歳
67歳のバーバラさんは、大学で生物学の教授として教鞭をとっていました。大学の学部長になった際には新しいコースを開設するなど精力的に働いていましたが、その傍らあきらめきれない夢も持っていました。それは、ずっと続けてきた趣味、ガーデニングを自分の仕事にすること。
60歳過ぎたとき、大学を辞めてプライムのレクチャーを受けたのち、地元でガーデニングのビジネスを始めます。長年の夢をかなえた今は、20代の時よりも忙しく充実した毎日を楽しく過ごしているそうです。
プライムのねらい
プライムが設立されたのは、寄付主であるウェールズのプリンスが市民から受け取った手紙がきっかけです。その手紙には、「今の仕事にうんざりしているが、年齢のせいで新しい職を見つけるのも難しい」と悩めるシニアたちの悲痛な叫びが記されていました。
当時イギリス国内では、仕事を失った50歳以上が急増し、経済を圧迫している現状がありました。プライムは、シニアの持てるスキルとモチベーションを活かす場としての「起業」を、一つの打開策として提案しているのです。
50歳以上のシニアが有力なワークフォースとして社会に再登場すること。彼らの経済的な自立による威厳を取り戻すこと。そして、彼らが起業によって豊かで満足に満ちた幸せな人生を送ること、それがプライムの狙いです。
昨今の経済事情をみるに、長年かかってやっと手に入れるような熟練した知識や技術が今まで以上に必要な時代になってきました。そして、それらを提供できるのが、まさに50歳以上の人々なのです。
高齢社会に突入した日本でも、定年の延長や定年後の再就職が取りざたされています。そんな中、プライムのようなサポート体制を整えることで、「起業」も定年後のあり方として一般的になってくるのかもしれませんね。
読者のみなさんの中にもしご両親がそろそろ定年という方がいたら、ぜひ一度親子で対話をしてみませんか?
(Text: 恩田ひとみ)
[via: prime]