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目標は電気を使わない自然粘土ハウス!電力やガスに頼らない暮らしかたを後押しする冷蔵庫「Mitticool fridge」

fridge from india 2
ミッチクールフリッジ

わたしたち電力」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

夏真っ盛りの天気がつづいていますが、みなさんは暑さをどのように乗り切っていますか?「家に帰って、冷蔵庫でキンキンに冷やしたビールやジュースを飲むのが待ちきれない!」という方も多いかもしれません。

ですが、消費電力が増えれば増えるほど、お財布にも地球にも良くないことはご存知の通り。便利で快適な暮らしと地球に優しいエコな暮らし。その板挟みに悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、インドで生まれた自然粘土でできた冷蔵庫「Mitticool fridge(以下ミッチクールフリッジ)」をご紹介します。

このミッチクールフリッジが画期的なのは、なんといっても電力がいらないということ。生みの親であり、自然粘土を加工する工場を営むManshuk Prajapatiさん(以下、マンシュクさん)によると、野菜なら一週間は新鮮な状態をキープ、さらに乳製品も保管しておくことができるそうです。

使い方は、とても簡単です。なんと、冷蔵庫上部にあるタンクに水を注ぐだけ。タンクに注いだ水が冷蔵庫内に染みわたり、暑い日にはその水が蒸発し庫内の食品を冷やしてくれるのです。マンシュクさん曰く、室温よりも約8度低い温度を維持できるのだとか。
 
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ローカルのテレビ番組(「vikatan TV」)で使い方を説明している様子。上部に水を注ぎ、蒸発した水分で庫内が冷やされます。

「この冷蔵庫は電気代を払う必要はないし、地球にも優しい。通常の冷蔵庫に必要なメンテナンスの面倒もありません」と胸を張って商品を推す、マンシュクさん。値段も一個50ドルと、他の冷蔵庫に比べて価格もかなり経済的です。

被災地で電気が使えない人々のために。

2001年のインド西部地震は、現地の人々に多くの被害をもたらしました。インド政府の発表によると死者2万人、負傷者数16万6千人といわれ、多くの人々が住居を失ったと言われています。

地震の直後、被害の様子を伝える当時のローカル紙の一面には、”被災者の壊れた冷蔵庫”と見出しがつけられた、壊れたウォータークーラーの写真がのっていました。

その見出しを見たマンシュクさんはいても立ってもいられず、被災地で電気が使えない多くの人々のために、電力のいらない冷蔵庫をつくることを決意します。マンシュクさんは3年間かけて最適な自然粘土を見つけ出し、2005年に最初のミッチクールフリッジを完成させました。

いまでは、毎月230個以上売れるヒット商品になったミッチクールフリッジ。インドだけでなく、アラブ首長国連邦やケニアからも注文が来るそうです。さらに、その噂を聞きつけたアブドゥル・カラーム前インド大統領がマンシュクさんの元を訪れて、商品について質問をしてきたこともあったのだとか。
 
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マンシュクさん

その後もマンシュクさんは、自然粘土の熱を伝えやすくかつ逃しにくいという特性を活かし、ノンスティックのフライパンや圧力鍋も開発。「すぐあったかくなるけど冷めにくいので、調理に使うガスがいつもよりも少なくて済む」と、こちらのフライパンも大人気なのだそう。
 
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ノンスティックのフライパンを説明するマンシュクさん

自然環境とお財布にやさしい商品で暮らしを良くするイノベーターとして、広く知られるようになったマンシュクさん。イノベーターとしての将来の目標について聞かれると、

私の夢は、自然粘土をつかったエコな住居をつくることです。室内の空調に必要な電力だけ再生可能エネルギーでまかない、その他は電気を使わないで済む暮らしを実現させたいんです。

と話します。その実現が、とても楽しみですね!

今日も工房から、電力やガスをできるだけ使わない商品を生み出しつづけるマンシュクさん。彼の取り組みは、電力やガスに頼らない暮らしかたを見直すきっかけとなることでしょう。

[via Co.Exist, The Weekend Leader, MittiCool, The Telegraph India, designsonearth]