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“育児中”がメリットになるお仕事!赤ちゃんが生きることの大切さを教えてくれる「赤ちゃん先生プロジェクト」

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特集「マイプロSHOWCASE関西編」は、「関西をもっと元気に!」をテーマに、関西を拠点に活躍するソーシャルデザインの担い手を紹介していく、大阪ガスとの共同企画です。

あなたは、出産後も仕事を続けたい(あるいはパートナーに仕事を続けてほしい)と思いますか?日本では「育休・産休がとりづらい」といった職場環境の問題などから出産前に仕事をしていた女性の6割が、産後に離職しています。

今日は「赤ちゃんと一緒にいることがそのまま仕事になる」という、とても画期的な取り組み赤ちゃん先生プロジェクトをご紹介します。

小学生からお年寄りまで、赤ちゃんに学ぼう!

「赤ちゃん先生プロジェクト」は、0歳から3歳くらいまでの小さな子どもと、母親がペアになり、学校や高齢者施設で「命の授業」を行うというもの。赤ちゃんは「赤ちゃん先生」、母親は「ママ講師」と呼ばれるのが何ともユニーク。授業は月に1度、合計9回(9ヶ月)にわたって続きます。

驚いたのは、授業を開催する先々で、学びのポイントと授業内容が的確にプログラムされていること。「赤ちゃん先生プロジェクト」を運営するNPO法人「ママの働き方応援隊」理事長の恵夕喜子さんにお話を伺いました。

“命の偉大さ”を知る→いじめ防止に

「そもそも、人間の誕生そのものが奇跡。小・中学校では“命の偉大さ”を伝えます」と恵さん。授業では、妊娠から出産までの道のりを「ママ講師」に語ってもらったり、おむつや着替えでぎっしり重いマザーバッグを見せてもらったり。

授業を経るごとに成長する「赤ちゃん先生」と、お世話する「ママ講師」。二人の様子をつぶさに見つめ、自分自身の成長にもたくさんの愛がふり注いでいるのだと知ります。「自分は特別な存在」だと認識すると、隣のお友達も自分と同じように「大切な存在」だと気づくことができるのです。

今の子どもたちは自己肯定感、つまり「自分はこの世に必要な存在だ」という認識が低い。自分の命の大切さに気づかないから、クラスメイトの存在も大事に思えない。それが自殺やいじめにつながってしまうのだと思います。

授業では赤ちゃんの振る舞いや反応から、赤ちゃんの思っていることを想像して、想像力や共感力を養います。結果、いじめにつながるような、人をからかう空気がなくなったと、先生たちも大絶賛です。

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小学校での授業の様子。数組の「赤ちゃん先生」と「ママ講師」、進行をサポートする「トレーナー」で授業を行います

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「赤ちゃんってこんなに小さい!」赤ちゃんと自分、手足の大きさを比べて「僕はこんなに成長したんだ!」を体感。9ヶ月を通して「私の赤ちゃん」と感じるほどにまで愛着が湧くそうです

「赤ちゃんは24時間かわいいわけじゃない」を知る

高校・大学での授業ポイントはズバリ「親になる準備」。例えば赤ちゃんが泣くことは、赤ちゃんのコミュニケーションのひとつ。ですが、乳幼児にほとんど触れたことがないまま親になる今の若い世代は、”泣く=ネガティブなこと”と捉えがち。ひたすら泣く赤ちゃんを抱っこして「あなたが泣かせた」とパートナーを責めてしまうその前に、子育てのリアルを体感し、働き方や生き方までを「赤ちゃん先生」と一緒に考えます。

男子学生には赤ちゃんを抱っこして、マザーバッグを持ち、ベビーカーを担いで階段を上ってもらいます。初回の授業では1時間泣き続けている赤ちゃんもざらにいますよ(笑)。そんな現実に直面して「子育てってこんな大変なんだ!」とはじめて気づくのです。中には「パートナーが出産をしたときに、育児を手伝える仕事につきたい」と言う学生もでてきます。

学校で学ぶことの最終ゴールを「就職」に設定していると、働くことの本当の意味を見失いがちです。肝心なのは、大切な人を守るために、自分がどんな仕事をして社会とつながるのか。「築きたい家庭」のイメージありきで職業を選択していく。すると“就職=大手企業”という図式にとらわれない、色んな生き方が肯定されます。

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パートナー選びは「育児の価値観が同じか」も大きなポイント。ママ講師による説得力抜群!?のライフプランニングも学びます

高齢者施設のお年寄りに→笑顔と涙を届ける

実はこれを書く私も、毎日子育て中の身。出産して驚いたのが、子どもを連れていると、とにかくどこでもいろんな人に話しかけられる(特にご年配の方に)ということでした。単調になってしまいがちな施設暮らしの中で、毎月訪れる「赤ちゃん先生」は、お年寄りにも癒し効果絶大ではないでしょうか。

みなさんとっても癒されるようです。普段は無表情の方もぱっと笑顔になります。授業では施設利用者の方に、自分の子育ての智恵や、生活の工夫を「ママ講師」に伝授してもらうコマもあります。受け身で受講するだけではなく、誰かの役に立つことで「生きがい」を呼び覚まします。

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大変だったはずの子育ても、時を経れば輝かしい思い出に変わる。ご自分の育児を追体験するのか、中には涙をこぼす方も

ママは赤ちゃんと一緒に働きたい!

出産前に仕事をしていた女性の6割が、出産を機に職場を去るという日本の現状。理由には妊娠・出産を経て「子どものそばにいたい」とママの心境が変わることもありますが、何といってもまだまだ育休・産休がとりづらい職場の環境も大きな理由のひとつです。社会人としての活動からいったん退いて、帰宅の遅い夫を待ちながら「孤独の中で育児をするママはとても多い」と恵さんは言います。

働きたくても、都市部では保育園の需要が高く、なかなか入所できない“待機児童”が溢れています。住んでいる地域で定期的に開催されている“子育て支援”の集いに行っても“支援を受ける”という立場では、なかなか自分が主体的になれず、100%自分を出せないからママ友とも深くつながれなかったりします。

恵さんは、もともとコンサルティングの会社を経営していました。ご自身のお孫さんが“待機児童”になった時、息子さんのパートナーに「赤ちゃんと一緒に、うちの会社にいらっしゃい」と声をかけ、“子連れ出勤ブログ”を書いてもらいました。

すると「私も子連れで出勤したい!」という反響が大きく、母子8組を受け入れて、フリーペーパーをつくることに。

ママ達は赤ちゃんを抱っこしながら広告営業もして、バンバン成果をあげていきました。この時、赤ちゃんを“預けて”ではなく”一緒に”仕事をしたいニーズが多いことに気づいたのです。

しかし新型インフルエンザが猛威をふるった真冬のこと。全員が「出社できません…」というピンチに直面。以降、赤ちゃんと一緒でも無理なく短時間でできる仕事はないか模索していたある日、カナダの社会起業家、Mary Gordon(メアリー・ゴードン)氏による「Roots of empathy ルーツ・オブ・エンパシー」という教育プログラムに出会いました。

「ルーツ・オブ・エンパシー」とは赤ちゃんとママが学校に出向き授業を行い「相手の立場や痛みを想像できる子を育む」というもの。恵さんはこの日本版を立ち上げようと決意し「赤ちゃん先生プロジェクト」は日本で産声をあげました。

勢い良く拡大する活動のヒント

昨年の4月にプロジェクトが本格始動してから約1年半、今では九州から東京まで活動の輪が広がるほど。スタッフはさぞかし多いのかと思いきや「委託を含めて全部で6人」と笑顔の恵さん。最初から全国展開を視野にいれた活動のシステムを教えてもらいました。

まず「赤ちゃん先生」による授業開催には1回3万円の受講料が必要です。この受講料は授業を開催する学校や施設側が負担します。この受講料から、毎回「ママ講師」に2000円、授業をファシリテートする「トレーナー」に3000円の謝金が支払われます。しかし公立の教育機関ではこうした予算の工面が困難に。そこで「赤ちゃん先生プロジェクト」に共感する企業にスポンサーとなって出資してもらうことで、開催側には経費が発生しない仕組みとなっています。

一方「ママ講師」希望者は事前講習を受け、居住地や子どもの年齢に応じて各施設に派遣されます。この一連の作業は「NPO法人ママの働き方応援隊」本部が行うのではなく、「トレーナー」が“学級”という組織を運営して行います。

この“学級”は、1学区に1つ設けることができます。そして30万都市に1つ、この学級をたばねる“学校”を設けます。この”学校”は、スポンサーになってくれる企業に営業活動をする、いわば“支店”のようなものです。

ちなみに「ママ講師」と「トレーナー」になる講習はいずれも有料で受講者が負担。「ボランティアではなくちゃんとした“仕事”にし、全国に広めたい」という強い思いがあるからです。

出産後の女性は、“育児”という新しい経験に対応するため、脳が再構築されるそうです。結果、子育てに意欲的になったり、海外でのマウスの実験によると、出産後のマウスは出産していないマウスよりも餌をとる脳力が上がるとか。つまり産後の女性は能力や意欲にあふれているので、子育て世代の女性が働けないのは日本にとっても大きな損失だと思うのです。

次のステップとしては、プロジェクトに出資してくれたスポンサー企業の良さを、ママ達が口コミで宣伝することを仕事にしようと企画しています。具体的には大手食材宅配メーカーとのクッキング教室などを開催。ママ達は、外部委託というかたちで講師やアシスタントの仕事を受ける、という具合です。

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クラスをファシリテートする「トレーナー」養成講座に集まったママ&赤ちゃんとスタッフ。理事長の恵さん(後列右から2番目)とともに。この日はNPO理事でもある、プロのアナウンサー西村講師による、伝え方の特訓!

「女性は20代後半から40代前半くらいまでに何を経験するかで、その後の人生が大きく変わります。自分ひとりで子育てして、損してると思わないで欲しい」と恵さん。

子育ては24時間休みがなく、それだけで大仕事。母子のありのままの姿をシェアすることで、誰かに愛を伝えたり、癒しや生き方のヒントになるなら「ひとりで育児を抱えるなんてもったいない!」とさえ思いました。

「赤ちゃん先生プロジェクト」では赤ちゃん先生、ママ講師、スポンサー、トレーナーを募集しています。気になったあなた、ぜひ説明会を訪れてみてください。