いきなりですが、読者のみなさんに質問です。もし一週間、全面ガラス張りの部屋で暮らさなければならないとしたら、どうしますか?常に道行く人の視線を浴び、監視されているようで、気が気でないかもしれません。
しかし、人々から注目されることを逆手に取り、自らの意思でそれを実行している人がいます。アメリカ人アーティストのTyler Ramsey(以下ラムゼーさん)です。
外から丸見えの環境で制作を行なうラムゼーさん
ラムゼーさんはカリフォルニア州ヴェニスにある「TOMS」という靴屋の前で、ガラス張りの部屋に暮らしています。彼の私生活はとても変わっており、3食とも同じミートボールのサンドイッチを食べ、3日以上風呂に入らないこともしばしば。寝るときにテントに入る以外は、常にガラス張りの工房にいるのだとか。
世界に一つしかないオリジナルシューズ
ラムゼーさんはこの工房で自分の作品を制作をしているだけではなく、TOMSの靴のペイントも行なっており、靴を購入したい場合はTOMSのホットラインから直接注文することができます。その際必要となるのが、”好きな3つの色”と”インスピレーションとなる言葉”。この二つをもとに、ラムゼーさんは顧客の一人ひとりに合った靴をオーダーメイドで制作するのです。
グリーンズでも以前紹介したように、TOMSは「One For One」という社会貢献活動を行なっています。これは、靴が一足購入されるたびに、靴を持っていない世界の子どもたちに新しい靴を贈る、というものです。
僕の目的は「One for One」の取り組みにたくさんの注目を集めることなんだ。ガラスケースのなかで作品をつくることが、僕ができる最高の貢献だと思っている。
とラムゼーさんがいうとおり、TOMSにとっては、自社の製品と取り組みの認知向上につながり、ラムゼーさんにとっても、自分の名が広く知られるきっかけになる、お互いにWin-Winな関係になっているのです。
ガラス張りの工房はGoogleハングアウトで生中継されているため、全世界で作品制作の様子を見ることができます。また、ハングアウトの連続通信時間のギネス記録を狙っていることが、さらに通行人の注目を集めているそう。
映像を見ると、このガラス工房が単に通行人の興味を引いているだけではなく、誰もが気楽に足を運べる場所になっていることが分かります。
また、ラムゼーさんのもとには時々、TOMSの靴とは関係のない変わった注文が入ることもあるとか。ある人は、自分の飼い犬にイラストを描いてほしいと尋ねてきたり、またある男性は、彼女をガラス張りの工房に連れて行きたいとお願いしてきたり…。
赤ちゃんを連れた人が通り過ぎるとき、自分の赤ちゃんにも絵を描いてほしいと思ってるだろうよ、ワクワクするね。
とラムゼーさんは言います。
恵まれない子どもたちへ靴のプレゼント Some rights reserved by TOMS.
お互いの専門分野を結びつけ、それを画期的な方法でアピールすることで、Win-Winな関係をつくるTOMSとラムゼーさん。自分が持っている得意分野を誰かと組み合わせることで、あなたにしかできない貢献方法が見つかるかもしれません。
(Text:細貝太伊朗)
[via fastcoexist]