世界中のどこであっても、子どもというのは無限の可能性を秘めた存在です。それは、たとえ障がいがあっても変わりません。道なき道を何時間もかけて通学する子どもたちを追った『世界の果ての通学路』のパスカル・プリッソン監督が新たなテーマとして向き合ったのが、困難な状況にあっても一心に夢を追いかける世界中の子どもたち。ドキュメンタリー映画『ウィー・ハブ・ア・ドリーム』が放つ、すみずみまで明るい光に満ちあふれるような映像を、ぜひ劇場で味わってください。
障がいとともに自分自身の人生を謳歌する
映画に登場するのは、フランス、ルワンダ、ケニア、ネパール、ブラジルに暮らす8歳から14歳までの6人の子どもたち。それぞれに障がいがありますが、学校に通い、友だちと遊び、今この瞬間を夢中で生きています。
フランスのモードとネパールのニルマラ、ケンドは片足を失い、義足を使用して生活しています。それでもバレエやダンスに励み、踊ることを諦めないどころか、義足で踊ることを楽しんでいます。ケニアのチャールズは目が見えませんが、伴走者と一緒に長距離走のトレーニングを続けます。彼ら彼女らは、障がいがあるからと言って、自分にはできないと決めつけたりしないのです。
ブラジルのアントニオは、自閉症やADHDといった障がいがありますが、両親の愛情に育まれ、元気いっぱいです。監督は、アントニオのように外からはわかりにくい障がいを持った子どもも登場させたいと考えました。
障がいや環境によって直面するハードルも人それぞれですが、スクリーンの中の6人から一番に感じるのは、障がいを乗り越えたり、克服したりしなければならないものとするより、もっと軽やかに、自分の人生を生きる姿勢。6人のそんな姿勢が、この映画の印象を明るく、伸びやかなものにしています。
子どもたちの表情の輝きとともに目を奪われたのが、彼ら彼女らが暮らす国々のバラエティに富んだ美しい映像です。アフリカの広大な草原や、大きな湖でゆったりと歩くフラミンゴの大群。燦々と陽射しが降り注ぐブラジルの海岸。人々が大切にしてきたことが伝わるネパールの伝統的な建築物。
それぞれの自然環境や文化の違いに加えて、学校での授業や友達との遊びなどからも、世界の広さと多様さが伝わってきました。世界各地のさまざまな環境や文化と、夢と希望をみつめ輝く子どもたちの表情。まるで異なる世界で、それでも同じように輝く表情のコントラストが鮮やかなのが、この作品の魅力を際立たせています。
子どもたちを取り巻く環境の大切さ。大人と社会の責任
子どもたちと同様に、作品全体に希望の光をもたらしているのが、親や周囲の人たちから子どもたちへと注がれる愛情です。
実はアントニオは、両親と血がつながっていません。車椅子を使用し、子どもを持つことができない父親は、それでも子どもがほしいと、夫婦で養子を迎えることにしたのです。そこにやってきたのが、アントニオでした。
自閉症でADHDという障がいがあるアントニオを我が子として受け入れ、彼に合った教育が受けられる学校を探し、その成長を温かく見守り続ける両親。親子3人が一緒にいるシーンでは、夫婦や親子の愛情、家族であることの歓びがスクリーンからあふれているようです。血がつながっているとか、お腹を傷めて産んだとか、そんなことを吹き飛ばしてしまうほどの強いつながりと幸福感に満ちています。
愛情は、温かさや優しさだけで表されるものではありません。アルビノのサビエルとその母親は、アルビノであることがもたらす困難を、勇気を持って乗り越えました。ルワンダには、アルビノの身体は呪術に用いることができるという迷信があり、アルビノ狩りと呼ばれる誘拐事件が発生しています。そのため、サビエルの母親は彼を学校に通わせることに恐怖を感じていました。それでも彼のために学校に通わせる決断をします。愛情は、ときに難しい決断を下す強い勇気を生むのです。
親以外にも、学校の教師や義足をつくる技師など、子どもたちの周囲のさまざまな大人たちが成長を見守り、促す存在として登場します。チャールズが出会うのは、パラリンピックの金メダリスト。競技に取り組むよう励まされ、盲学校からの転校を勧められます。チャールズは、視覚障がいのない子どもたちと共に学ぶインクルーシブな学校で、さらに高い目標を持って陸上競技に取り組むようになります。
周囲にどんな大人がいるか、またどんな環境で、どんな教育を受けるかといった子ども時代の環境が、人生にとってどれだけ重要かを改めて実感させられました。これは、障がいの有無に関わらず、どの子どもにとっても同様です。私たち大人は、環境を整えたり生活を支えたりすることで、子どもたちがもつ可能性を切り拓くことができるのです。
ただし、もし障がいのために、大変な苦労を強いられたり、何かを諦めたりしなければならないことが生じるなら、それは本人や親のせいではなく、障がいがあるために困難や諦めを強いる社会の仕組みそのものに問題があるということも忘れてはなりません。障がいをものともせず生きられることは素晴らしいことですが、そうできなかったとしたら、それは社会の責任なのです。
映画に登場する6人の子どもたちは、周囲の環境にも恵まれ、そしてもちろん本人の力もあって、夢を追い、今この瞬間を精いっぱい生きています。その姿を目にすれば、生きることの素晴らしさと命が持つたくましさを感じ取れるはずです。子どもたちを応援しているつもりが、いつの間にか逆に励まされている。そんな温かい気持ちで、劇場を後にできることでしょう。
(編集:丸原孝紀)
(アイキャッチ画像: ©Eady East Prod)
– INFORMATION –
2026年8月7日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー
監督・脚本:パスカル・プリッソン
撮影:シモン・ワテル 編集:エリカ・バロッシュ
製作総指揮:マリー・トジア
配給:ユナイテッドピープル






