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自分の中の“既にある”に気づく。リワーク支援から組織づくりまで。誰もが自分らしく働ける社会をつくるBowLの「リワークプランナー」という仕事

自分の中の“既にある”に気づく。リワーク支援から組織づくりまで。誰もが自分らしく働ける社会をつくるBowLの「リワークプランナー」という仕事
[sponsored by 一般社団法人BowL]

一般社団法人BowLの求人は、「働く」で社会を変える求人サイト「WORK for GOOD」に掲載されています。
興味がある方はこちらをご覧ください。

朝の光に照らされるカーペットの上で、キャンプチェアを移動させ、数人ずつ輪になる人たち。一人が今日の自分の状態や最近の出来事を話し始めると、周りは耳を傾け、時折ふっと笑い声や相鎚、小さな拍手が湧き起こります。

しばらく経つと、点在していた輪は合流して、10人以上の大きな輪に。
始まるのは、ダイアログ(対話)です。普段着で輪を囲む人々は、20代もいれば、その親に当たる世代、それ以上まで幅広くいます。しかしそこに、上下の立場や、何かを提供する側・受け取る側を分ける境界線は見えません。

何を目的に、どんな人たちが集まる場所なのか。目に見える風景だけでは判断しにくいこの場所は、沖縄県浦添市にある「BowL(ボウル)」。一般社団法人BowLが運営するリワーク施設です。

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記事後半に登場するBowL代表・荷川取佳樹(にかどり・よしき)さんへの取材の様子。プライバシー保護のため実際のリワーク支援の様子は掲載できないが、少人数でのダイアログはまさに同じ場所で取材の様子に近い状態で行われていた

リワーク施設とは、うつ病などのメンタル不調で休職している人が、復職(離職の場合は再就職)に向けてトレーニングを受ける場所のこと。リワーク施設で提供される支援は「リワークプログラム」と呼ばれ、心身のケアから認知行動療法などを使った自己理解のトレーニング、生活リズムの回復やパソコンスキルの習得など就労のための具体的なリハビリ、復帰に向けて復職・再就職先と連携しながら取り組む計画や調整など、多岐にわたります。

安心して働ける健やかな心身を取り戻し、復帰後の職場で再発を防ぎながら自分らしく働ける状態を目指すリワークプログラムには、病院やクリニックなどの医療機関が提供するもの、厚生労働省の所管のもと公的機関として運営される「地域障害者センター」が行うものの他に、民間事業者が運営するものがあります。このうち民間事業者が運営するリワーク施設に当たるBowLには、常時約25〜30名の研修生*が通っています(2025年12月時点)。
*研修生:BowLでは独自に、リワークプログラムを受ける人を「研修生」、提供するスタッフを「リワークプランナー」と呼んでいる

そのBowLで今回募集するのは、リワーク支援の内容をチームのメンバーと意見を出し合いながら計画し、プログラムの実行まで行うリワークプランナー。BowLが目指すリワーク支援のあり方とは一体どういうものか、求める人物像や思い、組織風土なども含めて、BowLのみなさんにお話を聞きました。

リワークは、自分らしい生き方を見つけるプロセス

BowLを初めて見学した時の印象を「“福祉施設”らしくない雰囲気に驚いた」と振り返るのは、BowLの元研修生。たしかにBowLには、「うつ病」や「休職」という言葉からイメージする日陰の印象は感じられません。初めて訪れた私たちも、自然に迎え入れられているような、穏やかな空気に満ちていました。

BowLとは一体どんな場所なのか。最初にお話を伺うのは、リワークプランナーの大田真央香(おおた・しおか)さんと、荷川取愛佳(にかどり・あいか、以下愛佳さん)さん。研修生と直接関わり、リワーク支援に伴走しています。

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BowLでの勤務歴は、大田さん(写真左奥)が愛佳さん(写真右)の1年先輩。愛佳さんもリワークプランナーとして一人前になった今、二人は互いに支え合いながら刺激を受け合う“バディ”のような関係性になっている

大田さんは、沖縄県内の大学で心理学を学んでいた2013年に、BowLに出会いました。
同年に創業したばかりのBowLの求人情報を見つけ、アルバイトとして働き始めたのがきっかけです。当初は、スクールカウンセラーや児童相談所の相談員など、子どもの心理に関わる仕事に興味を持っていたという大田さんですが、大学卒業後、2016年に新卒でBowLに入社しました。

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大田さん BowLで人と関わることが楽しくて、「もっとやってみたい」という気持ちが自然に湧いてきたことが今につながっています。研修生との関わりにやりがいや楽しさを感じたことはもちろんですが、ここで働いている人たちが、すごくかっこよかったんです。学ぶことに対して強い探究心を持つ姿を身近で見て、「大人になってもこんなふうに成長を重ねていけるんだ」「自分もこんな大人になりたい」と憧れました。

愛佳さんも、大田さんと同じく大学で心理学を学んでいますが、BowLへの入社にはより個人的な背景があります。実は愛佳さんの父親は、BowL代表の荷川取佳樹(にかどり・よしき)さん。荷川取さんから「BowLで働いてみないか?」ときっかけを与えられたのは、愛佳さん自身がメンタル不調に悩んでいた時期でした。

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愛佳さんは、2017年にBowLに入社。当時、人間関係の悩みからメンタル不調に苦しみながらも「この経験は必ず今後の自分に活かされる」と考え、毎日欠かさず日記をつけていたそう

愛佳さん 心理学を学んでいるのに自分自身がメンタル不調になっている状況を受け入れられず、苦しんでいた時に、父親から「BowLで研修生と一緒に学びながら働いてみないか」と提案されたんです。

うつやメンタル不調は、良い状態と悪い状態を波のように繰り返します。そんな自分自身との向き合い方を知りたかったし、学んできた心理学をさらに深めることもできると思いBowLで働き始めました。

これまで、多くの研修生のリワーク支援を経験してきた大田さんは、最近、“リワーク”(=Return to Work)という言葉がフィットしないようにも感じているといいます。

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大田さん うつ病やメンタル不調になる人の多くは、何かしら無茶をして、自分の心や体のサインを無視してしまっています。そのことを受け入れて、「どうしたら自分らしくいられるか」「自分らしく生きるとは何だろう」ということを改めて見つめ直したり、見つけたりする作業がリワーク。でもそれって、病気という診断の有無や、仕事への復帰を目標とするかどうかに関係なく、誰しもに重ねられることだと思うんです。

研修生に限らず、誰にでも当てはめられるというBowLのリワークプログラムは、一見、“当たり前”なことから始まります。まずは心と身体の健康を取り戻すことから。睡眠・運動など生活のリズムを見直し、ヨガなどの運動プログラムを取り入れながら、軽やかで柔軟な動きやすい心身に整えます。

愛佳さん BowLに通い始める研修生のほとんどが、最初は「いつまでに復職しなければ」と焦り、「将来どうしていいかわからない」と未来への不安に駆られています。でも、まずは元気にならなければ、いい未来は描けませんよね。

さらに、仕事への復帰を目指すのであれば、自分の思考の癖を知ってアプローチを変え、自分らしい働き方を見つけることも必要です。そのために、認知行動療法*などを取り入れた自己理解のプログラムも進めていきます。

*認知行動療法:ものごとの捉え方(認知)と行動に注目し、気分やストレスを軽くしていく心理療法。出来事そのものではなく、「どう考えたか」がつらさに影響することを理解し、考え方のクセを整理する。あわせて、無理のない行動を少しずつ増やし、気分が回復する好循環をつくる

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取材を行った相談室前の廊下には、研修生のコメントを添えて、おすすめの本が置かれていた。BowLを卒業した元研修生は、リワークプログラムを通して自分の思考の癖を分析できたことで「安心感が持てるようになり、ゆっくり少しずつ”悩み込まない自分”になっていった」と振り返る

BowLという小さな社会で学び、育ち合う

一般的な心理的支援が1対1のカウンセリングを主として行われるのに対し、BowLのリワークプログラムは集団でのダイアログ(対話)がベースです。
1対1の場では、話し手(=研修生)は聞き手(=カウンセリングを行う臨床心理士など)からしか気づきを得ることができません。しかし、集団で行われるダイアログでは、話し手と聞き手が複数の参加者の中であらゆる方向に入れ替わりながら、対話が重ねられていきます。本人にとっての気づきを、参加者同士が関わる中で、様々な方向から互いに見つけ合えるのが特徴です。

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大田さん BowLは、小さな社会です。
研修生には、プログラム以外も含めて、ここで起きることは「すべてがリハビリだよ」と伝えています。

愛佳さん 例えば、研修生から「〇〇さん(リワークプランナー)と話したいのに、忙しそうで声がかけられない」と不満が出ることがあります。でも、上司や同僚に話しかけにくいという状況は働くなかでもよくあることですよね。それをプランナー側で対処するのではなく、話しかけるために自分の思考をどう変えるべきか、相手にどうアプローチするとよいか、研修生自身が考えられるように問いかけてみる。それもトレーニングの一つです。

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集団である組織や社会がそうであるように、BowLでも日々、ぶつかりやすれ違いが起こります。様々なケースを経験しながら学ぶのは、研修生もスタッフも同じ。大田さんと愛佳さんは、研修生とスタッフの関係性を「支援する・される関係ではなく、お互いに学び合い育て合う仲間のような存在」と教えてくれました。

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大田さん リワークプランナーに必要な素質として、「人に興味があること」は大前提だと思います。現場では、一歩踏み込んだコミュニケーションが必要な場面も多くあります。例えば、研修生の振る舞いから何か問題が発生した時に「あなたの振る舞いは、周りによくない影響を与えているかもしれないから、一緒に考えてみよう」と切り込んだり、調子が悪そうな人に対して「何かあった?」と声をかけなければいけないことも。

そういう時に、相手を「できる人/できない人」などと評価せずに、その人自身に興味を持つこと。そして関わることを怖がらず、諦めずに向き合うためには、そもそも「人に興味がある」というベースが必須です。

現在、BowLに携わるスタッフは、社外パートナーとして関わるメンバーも含めて15名(2026年1月現在)。
リワークプランナーのうち、大田さんや愛佳さんのように大学で心理学系を学び新卒で入社したメンバーはふたりを含めて4名、民間企業やフリーランスからの転職組が5名です。担当する仕事や日によってスケジュールは異なりますが、参考に大田さんのとある月曜日のスケジュールをお伺いしました。

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BowLのリワーク施設では、複数のプログラムが同時並行で行われている。さらに、リワークプランナーは「さんぽ事業(産業保健事業)」のクライアント先に出向いたり、オンラインなどでも支援を行うため、9時から17時までの勤務時間の予定は、お昼の休憩時間以外みっちり詰まっている

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忙しいスケジュールの中の取材でも、笑いの絶えないお二人。「息抜きは?」と聞くと、大田さんは休日に“推し”のライブや旅行に行くなど、ON/OFFをしっかり切り替える派。子育て中の愛佳さんは、休日は子どもと公園で遊んだり、隙間時間を見つけてパソコンを開いたりと、「仕事とプライベートにグラデーションをつけることで程よく力を抜けるようになった」そう。それぞれに自分らしい働き方を見つけている

臨床心理学や精神保健分野を未経験の人でもリワークプランナーになることはできますが、リワーク支援を行うにあたっては、ベースとして、公認心理士・臨床心理士・精神保健福祉士などの資格取得に向けて学ぶ専門知識が必要になります。資格を持たずに入社する場合は、働きながら資格取得を目指して勉強に取り組みます。

またBowLには、個人が学びを深めるために参加する勉強会や研修などの参加費や、資格取得のための受験料などの経費をBowLが負担したり、BowLから無利子で借りられる制度もあり、現在も、制度を活用して精神保健福祉士の取得を目指して学んでいる社員がいます。個人の学びをプログラムの内容にも取り入れるなど、リワークプランナーの学びの豊かさはBowLの支援内容に反映されています。

他者の支援の起点には、“自分自身”がどうあるか

次にお話を伺ったのは、2013年の創業時からのメンバーである徳里政亮(とくざと・まさあき)さん。前職で航空会社に勤めていた徳里さんは、業務外の個人的な活動として開催した講演会で、参加者として講演を聞きに来ていた荷川取さんに出会いました。当時の荷川取さんは、22年間勤めた生命保険会社のマネジメント職を45歳で退職した直後。社会のために何ができるかを模索するなかで、起業のきっかけになったのはうつ病を患い休職していた友人の存在でした。その友人のようにうつやメンタル不調を経験する人たちが、自分らしく社会復帰できる仕組みをつくるために新たな挑戦に踏み出すと決めた荷川取さんに突き動かされ、徳里さんもまた、勤めていた会社を退職してBowLの創業に参画しました。

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創業のきっかけとなった荷川取さんの友人は、BowLの立ち上げ期をともにした。BowLは「Bridge Okinawa With Life 」の頭文字。「沖縄から、人生を一緒に生きる架け橋になったらいいよね。受け皿の意味もある」という荷川取さん提案に「いいね」とともに喜んだ彼は今、また別の道を選んで自分の人生を生きている

BowLの中で唯一の創業時からのメンバーである徳里さんの名刺には「理事」と肩書きがありますが、徳里さん自身は「BowLに“役職”は無い」と言います。

徳里さん BowLには管理職はいませんし、僕も“理事”だからといって特別な権限を持っているわけではありません。BowLにあるのは、役職ではなく“役割”です。

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徳里さんは琉球大学工学部を卒業後、2009年に航空会社に入社し客室乗務員の乗務スケジュールマネジメントや財務担当を経験。心理学や精神保健分野は未経験ながら勉強し、BowL創業期は様々な役割を掛け持ちしながら、自らもリワークプランナーとしてリワーク支援に携わった

BowLにおける徳里さんの“役割”は、大きく2つ。
1つは、代表の荷川取さんとともにBowLの組織づくりを行うこと。BowLのパーパス「こころが豊かであり続ける社会」を実現するために、BowLらしい働き方や組織のあり方への思考を深め、それをスタッフと共有していくための仕組みづくりにも取り組んでいます。
もう1つは、外に向かってアンテナを張り、BowLが大切にしていることと共鳴する人や組織とBowLを繋げること。一般的な会社で言うPR(=パブリック・リレーションズ)に近い役割です。“BowLの哲学”を整理・開発し、組織の内外に伝えていく役割を担う徳里さんですが、自身のことは意外にも「軸が無い」と表現します。

徳里さん BowLに参画する前の自分は、前職で仕事に情熱を注ぎきれず、自分に自信もなく、鬱々としていました。変化のきっかけは、荷川取に出会い「この人の挑戦に自分も飛び込んでみよう」と、思い切って前職の退社とBowLへの参画を決めたことです。
「自分を変えたい」「社会のために何かしたい」と思っていても、決められた組織の枠組みの中から抜け出すことって難しいじゃないですか。自分もそうだったからこそ伝えたいんですが、自分に軸が無いと思っている人こそ思い切って、BowLのような影響力の強い場所に飛び込んでみてほしいと思います。

そういう場所に身を置くと、「軸が無い」という性質は、むしろ強みになります。
軸が無いからこそ、周りから影響を受けて、自分を変えることができる。そこから、自分らしさを表現できるようになりますよ。

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徳里さんは、「自分の人生を自分で切り開いた先に、周りから影響を受けて自分が変わることは、周りに合わせることや、誰かのコピーになることではない」と話す。草木が、周りから栄養や水分を受けて自分の花を咲かせるように、「自分自身の花が咲く」と例える

BowLの事業全体に目を配る徳里さんは、メンバー自身が健康に自分らしく生きられていることや、メンバーの関係性の質が良い状態であることがとても重要だと考えています。他者の支援の起点にあるのは、支援をするその人自身やチームの存在です。

価値観の一致と共鳴が、その場の文化を醸成する

「人が、生きている時間の多くを使う“仕事”は、人生を豊かにするためにあるはず」という徳里さんの言葉は、希望を込めて信じたいと思います。しかし実際には、仕事や職場の悩みから心を病む人は多く、復職・再就職に対して不安を抱えながらBowLに来る人が、沖縄県内だけでも後を経たないのが現実(※)です。

※厚生労働省の「労働安全衛生調査(令和5年調査=令和4年11月〜令和5年10月)」によると、令和4年11月1日から令和5年10月31日までの期間に、メンタルヘルス不調により連続1ヶ月以上休業した労働者又は退職した労働者がいた事業所の割合は13.5%。

BowLでは、うつ病やメンタル不調で仕事を休職している人のための「リワーク支援事業」、職場から心を病む人が出ないような組織をつくること(=予防)を目指して企業や官公庁をサポートする「さんぽ事業(産業保健事業)」を行ってきました。

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目の前の一人から、組織、そして社会へ。
一貫してBowLが目指すのは、「こころが豊かであり続ける社会」です。

徳里さん 何を“豊かさ”とするかは一人ひとり違いますが、BowLのリワーク施設を訪れる人は、スタッフや研修生の表情や雰囲気から感覚的に、豊かな場であると感じるはずです。「豊かさとは何か」を言葉で定義することは難しくても、BowLでは対話を重ねる中で、BowLらしい思考の軸にある“価値観”を非言語で共有できています。

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取材中、言葉で伝えきれないイメージを図に描いて伝えようと試みる徳里さん。こちらが投げかけた質問に対して、時に「言葉で表現するって難しい」と頭を抱えながらも、コミュニケーションを諦めない姿が印象的だった

徳里さんは、BowLで働く人について「その人らしさには多様性があった方がいいけれど、BowLとして何を大事にしたいかという価値観は一致していないといけない」と言い切ります。場の目的を理解し共鳴できる人たちが集まることで、価値観がさらに耕され、そのコミュニティの文化が醸成されていくと考えています。

そのように文化が醸成されてきたBowLでは、「BowLはみんなのものであると同時に、一人ひとりのものでもある」という感覚が生まれています。

徳里さん 僕自身にとっても「BowLは自分のもの」という感覚がありますし、僕を通してBowLに出会う人には、僕がBowLの顔として見えているはずです。それは例えば、別の人が大田真央香を通してBowLに出会えば、その人にとっては大田真央香がBowLの顔になる。

「自分のもの」という所有の概念ではなくて、自分の居場所であり自分そのもの、自分を体現する場所としての組織でありBowLである、という感覚です。

チームシップを発揮する“細胞型組織”

BowLが実践する、役職や上下がなく誰もが組織の顔になれる水平的(※)な関係性や、一人ひとりの“自分らしさ”を起点とする組織のあり方は、理想的に思える一方で、組織としてどのように機能しているのか、想像しにくい部分も多いにあります。

代表の荷川取さんが描いているのは、リーダーシップによって管理されるトップダウン型の組織ではなく、メンバー一人ひとりによる“チームシップ”で成り立つ自律分散型の組織です。

※水平的な関係性:BowLでは、役職や上下関係がない組織のあり方を、“水平的”と表現している。一般的には「フラット」や「平等」という言葉が使われるが、あえて「水平的」という言葉を使う理由については、Podcast番組「BowLのチームシップ経営」の「#2 垂直性と水平性の話」でふれている

一般社団法人BowL グリーンズ

一般社団法人BowL代表・荷川取佳樹(にかどり・よしき)さん

荷川取さん リーダーシップによるヒエラルキーで管理される組織は、リーダーが外れると一気に崩壊してしまいます。BowLが実践しているのは、個々のメンバーが自立しながらBowLという全体をつくる“細胞型組織”です。

まず、BowL全体は、いくつもの小さなロールによって構成されています。
ロールとは、役割。一般的な会社では“◯◯部”などの部署でポジションが分けられますが、BowLではリワークロール、バックオフィスロールなど、役割が細かく分かれています。BowL全体には「こころが豊かであり続ける社会を」というパーパスがありますが、ロール一つひとつにもそれぞれ、ロールのメンバーが決めたパーパスがあり、物事を判断する指針になっています。

一般社団法人BowL代表 グリーンズ

先に話を聞いた徳里さんは、BowLの組織のあり方を「フラクタル構造」に例えていた。フラクタル構造とは、“全体”と“部分”が同じような形を繰り返す性質を持つ幾何学的な構造のこと。BowLの建物の向かい側、幹線道路沿いの小さな畑には、バナナなどの南国・沖縄らしい植物に混ざって、フラクタル構造を持つロマネスコが育っていた

荷川取さんが率いるのではなく、“自立した細胞”であるメンバーやロールの意思決定によって、BowL全体が動いていく。その仕組みは、新たなメンバーを迎える採用のプロセスでも実装されています。

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BowLへの入社を希望する応募者は、まず、徳里さんや大田さんなど、採用ロールのメンバーと面談を行った上で、インターンとして実際にリワーク支援の現場を経験。インターン中は毎日レポートを書き、考えたことや感じたことをアウトプットする。レポートを通じて、BowLのメンバーも、応募者がどんな考えを持つ人なのか、理解を深められる採用プロセス

荷川取さん どんな人をBowLに迎えるかを、実際に一緒に働くメンバーが決める仕組みです。
インターン終了後は、応募者とBowLのメンバー全員が集まって、1時間ほどダイアログを行います。ここで初めて私も参加して、応募者と対話します。その後、採用ロールのメンバーが最終決定を行います。

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採用に至らなかった場合、最終通知の後に荷川取さんの役割がある。一つは、他のメンバーが見つけられなかったその人の“可能性”がないか確認すること。もう一つは、今のタイミングではBowLではなかったけれど、その人が自分らしさを発揮できる場所が必ずあることを伝えること。「誰と働くかを決めるのはメンバー、代表者である私の役割は最後の“可能性とケア”」と話す

荷川取さんが考える“チームシップ”は、「セルフリーダーシップ(self-leadership)」と「リレーションシップ(relationship=関係性)」を前提に成り立ちます。セルフリーダーシップとは、自分の中の“リーダーシップ”。ヒエラルキーの下で人が人を管理するのではなく、誰もが自分の行動を自分で選択できる状態のこと。そして、リレーションシップは、セルフリーダーシップを持った個人が集まり、チームとして目標を共有し、質のいい関係性を築くこと。

荷川取さん 組織であることの意味は、チームで事を成せるということです。
一人でやるなら、自分が得意なことだけを尖らせればいい。その代わり、できることの範囲は限られます。それに対して、一人ひとりの得意を活かし、不得意を他の“得意な人”が補い合って、スケールを広げていけるのがチーム。

セルフリーダーシップを持った一人ひとりが質のいい関係性を築くことで発揮されるのが、チームが持つ本来の力である“チームシップ”です。

自分の中に“既にある”に気づく力を、社会に受粉させていく

リワークプランナーの大田さんは、BowLは小さな社会だと教えてくれましたが、荷川取さんは、BowL自体がこれからの社会に向けた実験の場であるといいます。

荷川取さん 今の社会に必要だと思うことを、まずはBowLとして、リワーク支援や組織づくりというアプローチで始めました。BowLでは日々、様々な実験と試行を重ねていますが、ここでの気づきを社会にも広げていくことを考えています。
BowLの研修生が、復職・再就職した先で、今度はBowLでの学びを伝えられる人になることもその一つです。

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荷川取さんは、BowLを卒業していく研修生たちに「次はあなたが、ここで学んだことを、社会の中で実践するんだよ。周りの人のバディになるんだよ」と伝えている

支援の先に目指す、BowLらしい社会への広がり方は、リワークプランナーの愛佳さんからも語られました。

愛佳さん 研修生は、自分が職場に戻ることで「周りに迷惑をかけるのではないか」と考えがちですが、「うつを経験したあなたが社会に戻ることは、社会貢献だよ」と伝えています。

BowLを卒業した研修生が社会に戻って、自分らしく働けるようになれば、その人の周りで働く人も良い影響を受けられるはずです。職場にうつを経験した人がいることで、そもそもうつにならない組織づくりが進められますし、もしメンタル不調になる人がいれば、経験者であるその人が力になれるかもしれません。

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BowLの取り組みが少しずつ社会に広がっていく様子を、荷川取さんは、「ポリネーション(pollination、=受粉)していく」と表現します。巣を出たミツバチが、花と花の間を飛び回りながら受粉を起こしていくように、“拡大”とも“発展”とも違う、自然な広がりを想像できます。

さらに2020年からは、新たに「一般社団法人ポリネ」を立ち上げ、BowLの取り組みから得た学びや実践してきた組織運営を軸に、健全な組織づくりをサポートし社会に広げていくための事業にも取り組んでいます。

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徳里さんと荷川取さんが共同で創設した一般社団法人ポリネのパーパスには、まさにBowLが実践してきた組織のあり方が示されている

実際にリワークプランナーとして働く大田さん・愛佳さんのお話から出発し、組織としてのBowL、そして視野をBowLを起点とした社会にまで広げられたところで、改めて問いかけてみたくなりました。

ーーー荷川取さん、リワークとは何ですか?

荷川取さん 自分の中にあるものに気づき、再構築することです。
人は、「足りない」からスタートすることが多いですよね。BowLに来る研修生も、最初はほとんどの人が、自分には「自分らしさがない」「スキルがない」「〇〇がない」、だから苦しいんだと思い込んでいて、自分の外からインプットを得ようとします。

でも、自分らしさって、あなたの中にあるんですよ。
あなたの中にあるんだけれど、自分だけでは見つけられないから、人の力を借りたり本を読んだりして、いろんなことを学ぶんです。必要なのは、自分の中に“ある”ものに気づくためのインプット。自分の中に無いものを補おうとするのではなく、自分の中にある力に気づいて、それを発揮できるように自分自身を再構築するのが、リワークプログラムです。

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どの職業が自分に向いているか。どんな会社で働きたいか。キャリアプランをどう描くか。
なぜ、今の職場で上手くいかないのか。どうすれば、自分らしく働けるのか。
一度休んでも、また働き始めることは、できるだろうか。

経営者でも会社員でも自営業でも、職種や立場に関係なく、「働くこと」への悩みや葛藤は尽きません。裏返せば、誰もが「よく、自分らしく、豊かに働きたい」という希望の火種を持って、社会に飛び込んでいるのだとも言えます。その灯火は様々な理由で、時に強い風を受け、冷たい水を浴びて、勢いを弱めてしまうこともあります。弱火になったその状態が、うつやメンタル不調による休職期間だとすれば、リワークプランナーは、その弱火の時期をともに過ごす心強いバディです。

どんな仕事にも、どんな組織にも、起点には“人”がいます。
だからこそ悩み、だからこそ諦められなくて、だからこそ面白い。だからこそきっと、働くことにも、組織にも、希望がある。BowLのリワークプランナーという仕事は、そこにある希望を、目の前の一人とともに確かめていく仕事です。

(編集:岩井美咲)
(撮影:平良卓己)

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