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「ただ一緒にいたい」と思える仲間と描く地域の未来。富士山の麓で“かえる場所”をつくり続ける——かえる舎という仕事 #求人

[sponsored by 特定非営利活動法人かえる舎]

特定非営利活動法人かえる舎の求人は、「働く」で社会を変える求人サイト「WORK for GOOD」に掲載されています。
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富士山の麓・山梨県富士吉田市で、10年間、子どもたちのそばに寄り添い続けてきた人たちがいます——特定非営利活動法人かえる舎です。

かえる舎 グリーンズ

富士吉田市には御師(おし)と呼ばれる方々が、富士山信仰の登山者を迎えてきた歴史があり、“おもてなし”の文化が、今もこの地に受け継がれている

代表の斎藤和真(さいとう・かずま)さん曰く、かえる舎は、「地域の未来に向かって、若い世代が『まちって楽しい!』と思える活動を全部やる」団体。主な役割は地域と学校の橋渡しをする授業のコーディネート業務と、高校生たちのまちの部活動「かえる組」や「超かえる組」のサポートです。

かえる舎のメンバーは、子どもたちと同じ目線で、一緒に考えたり笑ったりしながら、日常の中に小さな“かえる場所”をつくってきました。学校帰りにふらっと立ち寄る高校生も、卒業して県外に進学した大学生も、かえる舎のつながりが拠り所のよう。

「みんなにとっての安心できる居場所でありたい」と、和真さんは穏やかに話します。富士吉田では、子ども、親、先生、地域の人など、さまざまな関わりが少しずつ重なり、一つの循環が育ち始めています。このつながりを30年先も、60年先も続けていきたい。

「いつかこのまちのみんなが、地域を誇らしげに自慢する未来を見たいんです」

かえる舎は今、その未来をともにつくる仲間を探しています。

高校生と地域の関係性を育てる「かえる組」

高校生の地域への思いを、静かにゆっくりと、でも大きく変えていくチームが富士吉田にあります。それが、かえる舎が運営する地域の部活動「かえる組」。

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「自分をかえる、地域をかえる、未来をかえる」がモットーのかえる組のみなさん(写真提供:かえる舎)

高校生が自由に参加できて地域をフィールドに活動するコミュニティで、若者交流施設「センゲンボウ」を拠点に、現在、74人の高校生が集っています。まず出迎えてくれたのは、和真さんと、かえる組の小野田ゆず(おのだ・ゆず)さんと佐々木希愛(ささき・のぞみ/以下、のぞみ)さんです。

ゆずさん 最初は、富士吉田にいることに、そこまで魅力を感じてなかったんです。 生活の場所みたいな。 だけど、こうやってかえる組の活動をして、富士吉田の魅力をいっぱい知ることで、すごくいいまちだなって、素敵なまちに住んでるんだなって。

のぞみさん 地域への思い入れはそこまで強いわけではありませんでした。これからは進学で、一回東京の大学に出るけど、最終的にはこっちに帰ってきたいなあと思えるようになりました。

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小野田ゆずさん(写真左)、佐々木希愛さん(写真右)。それぞれかえる組の組長、副組長を務めている。

2人がかえる組に入った理由は、「暇だったから」。それでも、かえる組に取り組むうちに先輩たちの活動を間近で見る機会が増え、「先輩方がすごくて、憧れて、こうなりたい!」と、どんどんと活動にのめりこんでいくことになりました。

そこから「もっとまちを知りたい」「自分たちで何かしたい」と思うようになり、企業や市役所とプロジェクトを動かす少数精鋭チーム「超かえる組」に参加。超かえる組の過去の活動としては、外国人観光客の声から生まれた“吉田のおにぎり”の商品開発をはじめ、富士急行線車内に織物でできた中吊り広告を掲示した情報発信などがありました。

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観光客の急増を受け、かえる組の高校生たちは外国人観光客に聞き取り調査を実施。「滞在時間が短い」「昼食をとっていない」という声から、地元スーパーと連携して食べ歩き商品を企画。郷土食「吉田のうどん」味の「吉田のおにぎり」を開発した(写真提供:かえる舎)

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外国人観光客に富士山以外の魅力を届けるために地場産業の織物で中吊り広告を制作。織物の生地に地域情報サイトのQRコードを自分たちでプリント。観光客の目にとまる電車内の暖簾のような広告となった(写真提供:かえる舎)

のぞみさんは、活動するなかで先輩からもらった忘れられない言葉があるそう。

のぞみさん ​​超かえる組の卒業生の先輩が、 「あなたたちまだ高校生なんだから、もっと頼ってくれていいんだよ。卒業生たちも、地域の大人もみんな、応援してるし、サポートするから」と言われた時は、 「かっこいい!」って思いました。

そんな2人が中心となって今年11月に開催したのが、「ふじさんおしごとパーク」。

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高校生が企画・運営した「ふじさんおしごとパーク」。運営はかえる組の高校生や卒業生も加わって、20人ほどのチームで行った。会場には、小さな緊張と大きなワクワクが広がった(写真提供:かえる舎)

のぞみさん これまでは、インバウンドの観光客とか、外から来る人に向けたプロジェクトが多かったんです。でも、“今ここに暮らす子どもたちに何かできないかな”って思って。富士吉田には織物とか料理とか手仕事がすごくたくさんあるし、じゃあ “お仕事体験” ができるんじゃないかなって考えたんです。

企画は自分たちでゼロから立ち上げ。集客に関しては地元企業に自分たちで声をかけたり、チラシをつくったり。市の広報にも載せてもらった結果、当日は、計36組の親子が参加するに至りました。大きなプロジェクトを成し遂げた後の感想について、尋ねました。

ゆずさん めっちゃ楽しかったです。もしかしたら、自分たちが一番楽しんでたかもしれない。一番心に残ったのは、参加してくれた小学生が「高校生になったら、かえる組に入りたい」ってアンケートに書いてくれたこと。もう、その言葉を聞けただけでも、やってよかったなって。

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他にも、言語や文化が異なる外国人観光客の対応に困ってる商店街の方のために、高校生がガイドマップ集を作成。「すごいたくさんの人に喜んでもらえるのがすごい嬉しいです」とゆずさん(写真提供:かえる舎)

高校生の2人が大切に話すかえる組。毎日の何気ない日常の積み重ねが、仲間との絆をつくっていきます。また、その景色はかえる舎の和真さんたちも含めて形づくっているものともいえます。

のぞみさん 誰からもアイデアが出ずに、なかなか企画が進まない日は、カードゲームをずっとやってました(笑)

ゆずさん 一生大富豪してる時とかもあったけど、みんなとも仲良くなれて、今思えば大事な時間だった。

和真さん 「なんも出ねぇ」って言いながら(笑)。でも、そういう“なんでもない時間”もぜんぶ含めて仲間になっていくことにつながるんですよね。毎日が積み上がって、全部がつながって、今がある。ほんと、お互いに、「ただ一緒にいたい」と思える仲間になるまでにはすごい時間がかかる。大変だと思うことが生まれた時にも、「大変だ」よりも「一緒にいたい」が勝つ瞬間がみんなの中に出てきたら、最高かなと思います。

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バラバラの学校の生徒が一緒に活動している富士吉田での日常(写真提供:かえる舎)

地域をフィールドにたくさんの活動をしながらも、かえる組の活動の出発点は、地域に関わることの楽しさです。

和真さん かえる組のいいところは、「楽しい」が一番にくるからみんなで取り組めるという部分。地域のために何をやるかも大事ですが、誰とやってるかが、重要だと思うんです。「みんなが好きだな」と思う関係性があるからこそ、大変なことも乗り越えられるんじゃないかな。郷土愛は仲間に紐づいたりする気がします。

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「和真さんはどんな存在か」を尋ねると、それぞれ「頼りになる人」や「否定しないから何かしら相談しても、全部ポジティブに返してくれる人」と回答。かえる組メンバーとかえる舎の間で強い絆が育まれていることがわかる

和真さんのような大人がいてくれるかえる組は、高校生たちにとっての第2の家のような場所。「疲れているからかえる組にいこう!」と、立ち寄るホームのような存在となっています。そうして輩出されていった卒業生たちが、今では高校生の伴走を行なうサイクルも生まれているとか。

ゆずさん 卒業してもかえる組にはいたいな。

のぞみさん 今の大学生のメンバーみたいに活動の度に戻ってきて、サポートできる側にいれたらいいなって。

かえる舎スタートのきっかけとなった最初の高校

かえる組をやるかえる舎はそもそもどうやって始まっていったのか。今のかえる組の原型となる活動の発端となった高校と、その一歩を支えてきた人がいると聞いて向かったのは、山梨県立富士北稜高校でした。

空き教室をお借りして、まずはかえる舎が始まった経緯から伺いました。

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和真さんは栃木県鹿沼市出身。慶應大学大学院を修了後、2014年に山梨県富士吉田市の地域おこし協力隊に就任し、任期中の2016年に同じく協力隊だった赤松さんと共にNPO法人「かえる舎」を設立した

和真さん 僕も副代表の赤松もあまり社会人経験がないなかで協力隊になったこともあって、富士吉田には「拾ってもらった」と思っていて。ゼロから全部教えてもらって、育ててもらって。 そのうち、富士吉田でお世話になった人の顔がたくさん浮かぶようになって。 この人たちに恩を返していきたいっていう思いが強くなって。

まちの人に「富士吉田がめっちゃ好きになりました」と伝えると、本気で喜んでくれる。僕らよりも下の世代が同じように言ってくれたら、きっとみんなもっと嬉しいんだろうなって。だから、「かえる舎やろう」って思いました。

そんなことを考えていた頃、和真さんは高校の先生から「地域ともっと関わりたいけれど、どう進めたらいいかわからない」という声を聞きました。自分の思いと学校現場の悩みが、たまたま同じタイミングで重なった瞬間でした。

当時のかえる舎の様子をよく知っているのが、山梨県立富士北稜高校で総合学科主任を務める柏木菜月(かしわぎ・なつき)先生。富士北稜高校では探究学習を担当し、かえる舎の立ち上げ当初からこれまで9年間にわたり、学校と地域をつなぐ探究をかえる舎と共に推進してきたキーパーソンです。

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「高校って、人生の大きな分岐点を迎える場所。そのときに頼れる存在でありたいと思ったことが、教師を目指した理由です」と語る柏木先生は教員生活20年。総合学科の入口づくりを担い、生徒が興味や進路に合わせて学びを選べるよう支えてきた

今や必修科目とされている「探究の授業」も、富士北稜高校とかえる舎の連携が始まった2016年は、まだあまり知られていなかった頃でした。

柏木先生 まさに、かえる舎のプログラムの特徴の「地域を意識させること」が、富士北稜高校の生徒像にとてもマッチしたんです。富士北稜高校は卒業後の地元就職率が高いです。大人になり富士吉田を支える存在となる生徒たちにとって、高校時代に地域とつながり、未来の土壌をつくることは大きな意味があります。

今でこそ、探究の授業などを外部パートナーと連携しながら進めるのも一般化しつつありますが、その当時は「探究」という言葉も今ほど浸透しておらず、外部人材が授業づくりに入ることへの抵抗も大きかった時期。先生たちのなかでも最初は理解を得るのに苦労したといいます。

和真さん 先生たちからご理解いただくことが、最初の一番大事なポイントでした。ただでさえ忙しい先生たちに向けて、いかに負担をかけずに丁寧に必要なことをやっていくか。その積み重ねが信頼につながると思っていました。

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取り組みが2年目に入った頃、育休から復帰し、和真さんと出会ったという柏木先生。「和真さんの最初の印象は、不思議でつかめない人(笑)。でも今は何でも相談できる頼りになる存在です」と話す

また、かえる舎にとっても、富士北稜高校は学校と本格的に取り組みを始めた最初の現場。実際に取り組みを進めると、地域の探究に踏み出したばかりの学校現場には「安全性」「学びの保証」「リスク管理」など、多くの不安があることが見えてきました。そこで和真さんは、ベンチマークや評価指標を細かく設計し、先生たちが見通せるようロードマップを示そうとしました。

和真さん でも、それ通りに全然いかなくて。良い意味で。むしろ生徒たちはめっちゃ上回ってくるし、どんなプログラムでもすごく助けてもらいました。それに、学校ごとに生徒も先生も状況もまったく違うので、全員に同じものを当てはめるのはめっちゃ難しくて。そこに気づいてからは、丁寧に先生たちと話しながら、共同作業で授業をつくっています。

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かえる組の発端は、富士北稜高校の総合の授業で有志の生徒を商店街に引き連れ、取材をして、ポスターをつくったこと。以来、かえる舎は探究の授業以外にも課外活動などをかえる組と名付け、多くの生徒と地域での実践的な活動を行なってきた(写真提供:かえる舎)

市内1つの高校から始まったかえる舎の取り組みは、次第に市内4つの全ての高校、さらには中学校、今年度からはついに小学校でもプログラムが実現。柏木先生も、現場で生徒と触れ合うなかで、徐々にその影響を感じるようになったといいます。

柏木先生 今の生徒たちは、小学校や中学校の頃からかえる舎さんと関わってきた世代なので、地域の人と話すことにも、発表や資料づくりもあまり抵抗がありません。だからこそ、年々できることが増えているんです。

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探究の授業を通して地元を知った卒業生から「やっぱり地元って大事だ」とか「吉田のことを知っててよかった」という声を聞くと、「やってよかったと思う」と柏木先生は嬉しそうに話す

柏木先生 今の一番の目標は私がやっていることを、次の先生たちにつないでいくことです。万一、自分がいつか異動になったとしてもこの活動は続けていってほしい。それをやり終えて新しい学校にいったときには、私はきっと「かえる舎がいないなか、どうやってやればいいのかな」って、悩むんだと思います(笑)。

広がり続ける地域探究の現場を伴走者として支える

学校と連携しながら学校と地域の間に立って、地域探究の授業づくりを現場で支えてきたのが、かえる舎スタッフの渡辺紀子(わたなべ・のりこ)さんです。

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紀子さんは富士吉田市の隣・忍野村(おしのむら)の出身。高校では建築デザインを学び、女子サッカー部に所属していました。家族や地元の仲間と過ごす時間が好きで、最近は「祖母のように梅仕事をしてみたい」という、暮らしへの興味も広がっています

県外の大学を経て富士吉田市の協力隊として地元に戻ってきた紀子さん。以来9年間、主に小・中・高など学校での授業づくりや関係者との調整業務、放課後のかえる組の運営まで、地域での探究学習の最前線で活動してきました。

紀子さん 実は私も富士北稜高校の出身で、当時、かえる舎はまだなかったですが、授業に赤松智志(あかまつ・さとし)さん(かえる舎の副代表)が来てくださったことが、のちにかえる舎をつくるお二人との最初の出会いです。赤松さんや和真さんのような「まちで活動する面白い大人」に憧れ、大学ではまちづくりを専攻しました。その後、富士吉田に通うなかで、和真さんに声をかけていただき、かえる舎に入ることになりました。

和真さん 紀子は、今思えば高校生の頃から印象に残る存在でした。僕と赤松が法人設立当初に思い描いていた“かえる舎を通じて地域に帰ってきてほしい人材”としてはロールモデルそのもの。だから今こうして一緒に働けているのが本当に嬉しいんです。

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紀子さんが大学の卒業研究でポスター制作をした際にとった写真。左から和真さん、紀子さん、赤松さん。大学の卒業研究では、高校卒業後の地域との関わりを模索した内容を探究した紀子さん。「この当時から、どんな時も楽しむ姿勢を教わった気がします」と振り返る(写真提供:紀子さん)

現在、小・中・高の探究やキャリア学習において、授業の設計や地域事業者との調整、現場での運営を横断的に担当している紀子さんは、いわば、学年ごとの学びを地域につなげるコーディネーターです。

小学校では、3年生の総合学習で織物産業をテーマに、訪問授業・工場見学・図工制作がひとつにつながるプログラムを設計。中学校では、キャリア学習に地域の大人や事業者を招き、生徒の興味に沿うフィールドワークや対話の場をつくっています。高校では、探究のテーマ設定やプロジェクトづくりをサポートし、企業や市役所との協働が生まれるよう伴走しています。

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中学生が職場体験で制作した地域の魅力マップ。「猫がたくさんいる場所など、中学生ならではの視点がかわいいんです」と紀子さん。印刷は市内のファブカフェにあるリソグラフプリンターで行ない、制作から印刷までをを体験する

紀子さん 子どもたちが地域をもっと好きになる姿を見られるのは本当に感動しますし、授業に関わった地域の事業者さんが「いい授業だった」と言ってくださる瞬間も大きな喜びです。その一方で、学校の要望と地域の事情がぶつからないよう、負担がどこかに偏らない形を丁寧に調整することも大切。そのため、“お互いに無理のない形を最後まで考え抜くこと”をいつも意識しています。小学生から大学生、先生、地域事業者など幅広く関わる仕事なので、多様な人との出会いを楽しめる人が向いていると感じます。

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富士吉田は観光地でもあり、町中華からおしゃれなカフェまでお店が多いそう。先生、市役所職員、かえる舎のスタッフ同士でも、ランチに誘い合い、悩みごとは相談し合うのが日常

がむしゃらに過ごしてきて、あっという間に10年が経っていたという紀子さん。

紀子さん 10年目を迎えて、やっとかえる舎がまちに浸透してきたと感じています。そして、次の10年をどう続けていくかが大事だと思っています。

かえる舎の活動は若い世代の「地域郷土愛の醸成」につながる

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富士吉田市制70周年を記念し、2020年に市役所庁舎の壁画がリニューアル。有名テキスタイルデザイナー・鈴木マサルさんが手がけたデザインがまちを彩る

「富士吉田市役所は、富士吉田の宝なんです……!」

そう言い切る和真さんに導かれ、途中、ふるさと納税事業を担う株式会社ふじよしだまちづくり公社や、富士山と観光を一体で担う富士山課にも道草をしつつ、次に向かったのはポップな壁画が目印の富士吉田市役所でした。

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公社を立ち上げ、ふるさと納税の支援などまちづくりを引っ張る水越欣一(みずこし・きんいち)さん(写真左)と渡辺一史(わたなべ・かずふみ)さん(写真右)。水越さんは和真さんの協力隊時代の担当課長で、「和真くんは、子どもたちの富士吉田に対する認識を変えてくれた革命児」と語る

市役所の会議室で待っていてくださったのは、富士吉田市役所ふるさと魅力推進課の秋山眞一郎(あきやま・しんいちろう)さん。

秋山さんと和真さんが出会ったのは約12年前のこと。当時は広報担当で、広報誌の人物紹介の取材で当時協力隊だった和真さんを取り上げたのが最初でした。

秋山さん 当時はまだ今ほど活動が形になっていなかったけど、生徒のことをすごく一生懸命に話していたのを覚えています。10年経って、市にとって本当に欠かせない存在になったなと。

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かえる舎と共に地域の学びを支えるほか、移住定住施策や協力隊、空き家バンクなど幅広い業務を担う秋山さん。秋山さん自身、教師を志していたこともあったそう

秋山さんが管轄するふるさと魅力推進課では、主に移住定住の促進、関係人口づくり、協力隊の受け入れ、空き家バンクの運営、地域プロジェクトの支援などを担っています。

秋山さん 富士吉田市はこの10年で人口が約5万人から4万6千人へ減少していて、とくに若者流出が課題です。出ていくこと自体は悪いことじゃないのですが、大切なのは、ここにいる間に、どれだけ地元への感情が育つか。

進学や就職で市外へ出ても、富士吉田を好きでいてくれること。折にふれて戻ってきたり、関わり続けたりできること。そのつながりを育てることが、市にとって大きな意味を持つと考えています。

こうした背景から、市は若い世代の「地域郷土愛醸成」を重要な政策として掲げ、その中心的な役割を担う存在として、かえる舎に大きな期待を寄せています。

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市役所とかえる舎が協働で構築してきた「郷土愛醸成事業」。小・中・高・大学まで一貫して、若者が「地元を好きになる経験」を積み重ねることで、地域への誇りや愛着を育てることを目的とした、市と民間、かえる舎が一緒に進める教育事業だ(画像提供:かえる舎)

市役所内にもかえる舎の活動を応援する職員が増え、今では、休日に手伝いに来る若手職員もいるほどです。

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かえる舎と市の協働の背景には、秋山さんと和真さんの密な連絡と信頼関係がある。「連絡がない日のほうが珍しい」「どうしてるかな、とつい気になる」と互いに笑い合うほど、日々の相談と共有を重ねてきた

秋山さんは、かえる舎の活動が高校から始まり、今はそれが小学校や中学校、大学へと広がっていることを「本当にありがたい」と話します。なかでも「もっと地元を知りたい」という生徒たちの受け皿となっているかえる組は、市としても大切に応援したい存在。

秋山さん 学校の授業だけでは届かない部分を、かえる舎がちゃんと拾ってくれている。そういう場があるのは大きいんですよね。

2025年度からは、市が主導となって成人式でのアンケート調査も始まりました。初めてのアンケートに「地元が好き」と答えた若者は約9割。「将来は戻ってきてもいい」という人も多く、秋山さん自身もその結果に大変驚いたといいます。

秋山さん 僕らの世代では、地元を知る授業なんてほとんどなかったので。かえる舎が学校に入ってくれていることで、子どもたちの意識は、本当に変わってきているなと感じますね。和真さんは、穏やかなんですけど、生徒のことを一番に考えてくれる人。先生とも親とも違う距離感で、安心できる場所をつくっているなって思います。

ずっとずっと続けたい。かえる舎のこれまでの10年とこれから

かえる舎の活動が広がる背景には、和真さんたちかえる舎メンバーが、10年かけて続けてきた丁寧な実践と、それを支える仲間の存在がありました。そして今、和真さん自身はこの状況をどう受け止め、どんな未来を見ているのか。最後に、あらためてその思いを聞きました。

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紀子さんが「かえる舎の軸」と語る和真さん(特質型)と赤松さん(バランサー型)。かえる舎チームのつながりは強く、紀子さんの結婚式では、和真さんの祝辞に2人で号泣し、家族に「友人の手紙より泣くってどんな関係?」と驚かれたほど(写真提供:かえる舎)

和真さん 僕も赤松も、親が教員なんですよ。ずっと先生の姿を見て育ってきたんです。だから自然と、教育の可能性は信じていて。リスペクトもめちゃくちゃあるんですよね。その分、「教育をやってます」って簡単には言えなくて。最初の6〜7年くらいは、言えなくて。「地域の探究学習を支援してます」という言い方をしていて。
          
でも、学校の先生たちとずっと一緒にやっていくなかで、教育って言葉から逃げてるような気がしてきて。自分たちも一緒にやってる仲間として力になりたいから、教育の中にちゃんと入って、同じ土俵で声を届けて、同じ景色を一緒につくっていきたいと思って。僕らにもできることがあるなって。それで今は、「教育NPOです!」ってちゃんと言うようになりました。

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和真さんには、昔から「誰かのためなら頑張れるけれど、自分のためだとできない」という感覚があるという。「みんなが困ってるから、『じゃあこうしよう』は、めっちゃ出てくるんですよ。今は、まち自体が大事な人みたいな気持ちです」

かえる舎は、その活動を通して少しずつまちに浸透してきました。最近ではかえる組の高校生の取り組みが地域の共通話題となり、「新聞見たよ」と声をかけられたり、生徒の活動記事を切り抜いて持ってきてくれる人が現れたり。高校生の挑戦が、まちの明るいニュースとして語られるようになってきました。

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新聞広告に掲載されたかえる組の写真(写真提供:かえる舎)

けれど和真さんは、「まだまだ全然足りていない、もっと届けなきゃ」と語ります。

和真さん 僕はかえる組の活動を「60年続けよう」と言っているんです。60年続ければ、3世代全員がかえる組を知ってる地域になると思って。おじいちゃんもやってたんだよ、おかあさんもやってたんだよ、今孫がやってる、みたいな。 その時がきたら、みんなが当事者で、きっと地域はもっと面白くなる。時間はかかるけど、そんな未来を夢見てます。

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こうして挑戦が広がるいま、かえる舎には新しい仲間が必要です。

かえる舎の仕事は高校生の成長に寄り添いながら、地域の変化や人とのつながりが生まれていく過程を、喜び合い、一つひとつ経験を積み重ねていくもの。

和真さん 学校と地域をつないだ授業づくりを担当してもらうことを想定していますが、加わってすぐは、まずはかえる舎のチームと一緒に動きながら高校生たちの探究活動など、かえる舎が運営するいろいろなプロジェクトを一緒に見てもらいたいです。先生や市役所の人たち、地域の方々の声を聞き、少しずつ関係性を築いていくなかで、「自分は何に心が動かされるのか」を、知っていってもらえたらと思います。

少人数のチームで多くのプロジェクトを走らせているかえる舎では、一人のスタッフが複数の事業を動かすことも。そのため、仕事や業務に対しても柔軟な姿勢が求められます。

和真さん かえる舎には「親切・丁寧・上機嫌」って社訓があって。舎訓ですね。親切に人を思いやれて、真面目に丁寧に取り組めて、で、大変なことや失敗があっても、上機嫌で前に進める人。これがめっちゃ難しいんですけどね。

地域探究の現場では、関係する人が多いからこそ、時には悩むこともあるかもしれません。それでも、地域でできた大好きな仲間たちと一緒に、時には寄り道をしながら、その途中で生まれる偶然の出会いや気づきを楽しんで進んでいく。そんな、かえる舎らしさを、「いいな」と思ってくれる人を待っています。

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– INFORMATION –

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(撮影:小林直博)
(編集:岩井美咲)