空き家の再生や地域資源の活用を軸に、不動産業の枠を越えたまちづくりを実践しているomusubi不動産。田んぼでのお米づくりや複合施設の運営など、人と土地の関係を耕しながら、地域に新たな余白とつながりを生み出しています。
グリーンズが運営する、パーパス(働く意義)で仕事と出会える求人サイト「WORK for GOOD」を通じて入社したのは、omusubi不動産が運営する「ナワシロスタンド」の利用者だった髙野あゆみ(たかの・あゆみ)さん。
一見すると偶然の出会いのようでいて、その背景には確かな「パーパスフィット」、つまり企業の「パーパス(存在意義)」と応募者の「パーパス(働く意義)」の一致がありました。
WORK for GOODの植原正太郎が、omusubi不動産代表の殿塚建吾(とのづか・けんご)さん、人事の吉原彩夏(よしはら・あやか)さん、そして髙野さんにお話を伺いました。
千葉・松戸と東京・下北沢を拠点に、「自給自足できるまちをつくろう。」をコンセプトに活動。空き家の再生、古民家の利活用、田んぼでのお米づくりなどを通じて、暮らしの足元からまちを耕すような不動産事業を展開している。
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空き家活用からはじまった、不動産業を越えたまちづくり
植原 このたびは、採用・入社おめでとうございます!
殿塚さん・吉原さん・髙野さん ありがとうございます!
植原 今日は、採用した企業側と入社された髙野さん側の両面から、いろいろとお話を伺いたいと思っています。
まずは、omusubi不動産のこれまでのあゆみについて、改めて教えていただけますか?
殿塚さん はい。omusubi不動産は、千葉県松戸市で生まれた不動産会社です。もともとは、松戸にある空き家を活用して、個人のお店を増やしていくような活動をしていました。
2020年からは、下北沢の「BONUS TRACK」に店舗を構えると同時に、施設全体の管理運営も任されるようになりました。この場所を通じて、omusubi不動産の存在を知ってくださる方が一気に増えましたね。
殿塚さん BONUS TRACKが始まって以降の5年間で、仕事の幅が大きく広がってきたと感じています。福島県南相馬市での空き家活用プロジェクトや、デベロッパーの開発案件に企画段階から関わることも増えてきました。
一方で、ここ1年ほどは、地元松戸でのまちづくり事業も広がってきています。たとえば、松戸での事業として、駅近くの川沿いの広場を整備し、地域の人たちが自由に使える場所にしました。そこでの出会いや挑戦が、新たなプレイヤーを生み、空き家の活用にもつながっていく。そんな循環を生み出せたらと思っています。
一度東京での経験を積んだからこそ、いま地元での取り組みに深みが出てきた感覚があって。都市で修行をして、また松戸に戻ってきた──そんなふうに感じています。
植原 「空き家をリノベーションして貸し出す」というところから、仕事の幅がどんどん広がっているんですね。
殿塚さん そうですね。それに伴って、社内にも部署が生まれてきました。
いまは、不動産の「売買」と「賃貸」でそれぞれ1チーム、コミュニティスペースの運営を担う「コミュニティマネジメント」チーム、地域に合わせた不動産開発を進める「エリアリノベーション」チーム。あわせて4つのチームがあります。
それに加えて、本社機能を担うコーポレートチームがあって。パートの方も含めると、社員数はだいたい30人くらいですね。
植原 そんなにいらっしゃるんですね!僕が殿塚さんに出会った頃は、たしか3~4人くらいでしたよね。
殿塚さん そうそう、それくらいでしたね。やっぱり、BONUS TRACKの運営に携わるようになってから一気に増えました。この5年で、社員数は5〜6倍になっていますね。
そうだ、田んぼやろう。
植原 ところで、omusubi不動産って「おこめをつくる不動産屋」なんですよね?
殿塚さん はい、そうなんです(笑)。たぶん初めて聞くと、「どういうこと?」ってなりますよね。
立ち上げ当初から、千葉の白井というところで田んぼを借りて、スタッフや地域の人たちと一緒にお米を育てていて。気づけばもう12年目になりました。
植原 どうして田んぼをやるようになったんですか?
殿塚さん 最初は、そんなに大きな理由があったわけじゃないんです。
「不動産屋」って基本的には仲介業なので、自分の手で何かを生み出している感覚がなくて。「そもそも、何のために働いてるんだっけ?」って考えたときに、出てきた答えが「食べるため」だったんですよね。
だったら、食べ物を自分でつくるのがいちばんシンプルなんじゃないか。そこから、「そうだ、田んぼやろう」って(笑)。
でも、一人ではできないから、ワークショップやイベントの形にして、参加者を募ったんです。そうすると、来てくれた人が「実は家を探していて……」と相談してくれたり、家を借りるかどうか迷っていた人が、田んぼで友だちができたことをきっかけに、松戸に引っ越してきたり。
なんだかよくわからないけど、田んぼに人が集まることで、自然とシナジーが生まれていく。それがすごくおもしろくて、ずっと続けています。
殿塚さん まちづくりって、ただ建物をつくればいいってものではないと思うんです。地域にもともとある団体や人の関係を、もう一度つなぎ直していくことも、私たちの大事な役割なんじゃないかなと。最近はそれを「コミュニティリノベーション」と呼んだりしています。
地域の人たちが健やかに過ごせるように環境を整えることって、稲が元気に育つように田んぼを整備することと、すごく似ているなと思っていて。それに、田んぼって共同体の原点のような場所だとも思うんです。
たとえば、自分の田んぼに水を引くためには、手前の田んぼにも、奥の田んぼにも水が流れていないといけない。つまり、自分のことだけじゃなくて、まわりの人にも意識を向けないと、うまくいかないんですよね。
「利己的利他」という言葉もありますが、まわりのためにやったことが、めぐりめぐって自分のためにもなっていく。田んぼには、そういう感覚が昔から自然と根付いている気がします。まちづくりにも通じる共同体の原点に触れられる場として、この活動はずっと大事にしていきたいと思っています。
ナワシロスタンドとの出会いが、まちづくりの入口に
植原 続いて、ご入社された髙野さんにお話を伺いたいと思います。まず、これまでのご経歴から教えてもらえますか?
髙野さん はい。新卒で広告代理店に入って、ビジネスプロデューサーとして2年半ほど働いていました。
髙野さん でも実は、もともと広告業界に強い思いがあったわけではなくて。大学ではまちづくりに関する研究をしていて、「いつかまちづくりに関わる仕事がしたい」という気持ちがずっとあったんです。
とはいえ、学生時代の自分にまちづくりの仕事に飛び込むだけのスキルや経験があるかというと、不安もあって。まずは大きな会社で、社会人としての経験や調整力を身につけようと考えて、広告代理店を選びました。
実際、ビジネスプロデューサーの仕事は、さまざまな関係者の間に立ってプロジェクトを進める役割。まちづくりの現場でも「調整がいちばん大事な仕事」とよく耳にしていたので、将来的にもいかせるスキルが身に付くと考えていました。
植原 omusubi不動産には、どういう経緯で転職されたんでしょう?
髙野さん とくに本格的な転職活動をしていたわけではなくて。「まちづくりに携われる会社があれば、転職しようかな」くらいの温度感だったんです。
そんなとき、友人と一緒に週末限定のカフェを企画していて、開催場所として見つけたのが、omusubi不動産が運営する「ナワシロスタンド」でした。実際に使わせてもらったら、「なんだこの建物、すごくいい……!」と衝撃を受けて。
髙野さん その流れで、「他の拠点も見学してみたいです」とお願いし、下北沢のBONUS TRACKも案内してもらったんです。レンタルスペースの話にとどまらず、会社のことや、地域で開催している芸術祭などの話も聞いて、「こんな会社が運営してたんだ」と、ぐっと惹きつけられました。
イベントを終えた3日後くらいに、なんとなくInstagramを見ていたら、ちょうど「コミュニティマネージャー募集」の投稿が目に入って。「これって、あのときの会社だよね? しかも、やりたいこととぴったりかも」と思い、すぐにWORK for GOODが開催していたオンライン説明会に申し込みました。
ナワシロスタンドを使ったときに、下北沢のコミュニティマネージャーの二人とすでに顔を合わせていたこともあり、「一度お話ししてみませんか?」と説明会後に連絡をもらって。そうして気づけば、自然な流れで今に至るという感じです。
あと……これは余談ですが、米どころの新潟県出身なので、「omusubi不動産」という名前にもすごく親しみを感じました(笑)。
植原 コミュニティマネージャーは、どういうお仕事なんですか?
髙野さん 私は主に、下北沢にあるレンタルスペースやコワーキングスペースの運営を担当しています。
たとえばレンタルスペースでは、イベントなどをやりたい方に向けて説明会を開いたり、利用に向けた調整をしたりしています。当日のサポートに入ることもありますね。
コワーキングスペースについても、営業や広報活動を通じて利用希望者の方と出会い、実際に一緒に場を使いながらコミュニケーションを重ねていくなかで、継続して利用してもらえるようにしたり、場の雰囲気をよりよくしていくことも意識しています。
植原 実際に働いてみて、どうですか?
髙野さん 率直に言って、「楽しい!」のひと言ですね。もともと「月に1回は、新しい人と出会う」というのを自分の目標にしていたんですけど、今はもう、毎日いろんな方と出会っていて(笑)。知的好奇心をくすぐられる毎日で、すごく充実しています。
植原 いいですね!今後チャレンジしてみたいことはありますか?
髙野さん 将来的には、地域の開発に取り組む「エリアリノベーション」チームにも関わってみたいと思っているのですが、その前のステップとして、今はこの場での経験をしっかり積みたいなと思っています。
たとえば、BONUS TRACKのような場所では、飲食や物販、イベントなどさまざまな出店者の方がいて、日々のやりとりのなかで関係が深まっていくし、事業の運営方法についてもリアルな学びがあります。
そうやって、出会いや経験を重ねながら、自分なりの強みを育てていけたらと思っています。
パーパスが重なる人と、一緒にまちを耕したい
植原 続いて、人事の吉原さんに伺います。omusubi不動産の採用で大切にしていることって、どんなことですか?
吉原さん 社内にも、関わってくださる方にも、本当にいろんな人がいるんですよね。「みんな違う」って、ごく自然なことだと思っていて。そのうえで、違う人同士が、一つの目的に向かって一緒に動けるような関係を築けたらいいなと思っています。
コーポレートサイトにも「人の偏りを発揮できるチームへ。」という言葉があるんですが、その人の得意なことをいかしたり、思い切ってチャレンジしてもらったり。そういう環境をつくることは、日々すごく大切にしていることですね。
吉原さん 採用の場面でも、話しているなかで「もしかしたら、こっちのプロジェクトの方が合ってるかも」と思うことがあって。そんなときは、こちらから別の役割をご提案することもあるんです。
いちばん大事にしているのは、その人が「omusubi不動産でどんなことをやってみたいのか」。その気持ちと、私たちができることが、ちゃんと重なっているかどうか。そこを丁寧に見つめながら、ご一緒できたらうれしいなと思っています。
植原 選考はどんなステップで進めているんでしょう?
吉原さん 基本的には、まずは書類を提出いただいて、その後に面接という流れになります。
面接では、私が人事としてお話を伺うこともありますし、最近は現場のメンバーも交えた3対1くらいのかたちで行うことも多いですね。たとえば、人事・応募職種のチーム・別チームのメンバーというように、いろんな立場からその方のことを知る機会をつくるようにしています。
それから、omusubi不動産って、不動産だけでなくいろんな取り組みをしている会社なんですよね。パッと見だと、少しキラキラした部分が先に伝わることもあるかもしれないけれど、実際には地道な不動産の仕事もたくさんあります。だからこそ、そういう部分もきちんと知ってもらいたくて。
植原 知ってもらうために、何か取り組んでいることはありますか?
吉原さん 面接のタイミングに合わせて、私たちが運営している物件を見て回るツアーを行っています。もともとは、「入社後にギャップが生まれないように」と思って始めたのですが、最近は不動産業界の経験者からの応募も増えてきたこともあって、omusubi不動産ならではのスタイルを体感してもらう意味でも大切な機会になっています。
植原 素敵な取り組みですね!参加した方からはどんな反応があるんですか?
吉原さん 「面白い」という声をいただくことが多いですね。築年数の古い物件をいかしながら、ちょっと変わった使い方をしているので、驚かれる方も多いです。
そうやってリアルな現場を見ていただくことで、私たちとの相性や、働くイメージが自然とわいてくるといいなと思っています。
植原 なるほど。そうした選考フローを経て、最終的には殿塚さんが判断されるんですか?
殿塚さん そうですね。でも、他のメンバーにも最終面接に入ってもらったり、判断する前に相談したりすることが多いです。
植原 どういう基準で判断しているんでしょう?
殿塚さん やっぱり、会社のパーパスと本人の「やりたいこと」とのつながりがないと、続けるのがしんどくなってしまうと思うんですよね。
たとえば、不動産としての数字だけを追うなら、単純に売上で判断すればいい。でも実際には、「このエリアに来てくれたら面白いだろうな」と思えるお店が現れたときに、家賃を少し下げてでも入ってもらいたい、といった判断をすることもある。そんなふうに「関係性を優先する場面」が多いので、そこに面白みを感じられるかどうかは、ひとつの大事なポイントです。
だからこそ、将来的に「こんなまちづくりがしたい」「ゆくゆくは独立も考えている」といった思いがある人の方が、フィットしやすいかもしれません。
「いつか一緒に」──ゆるやかな関係性を育む
吉原さん 最近、omusubi不動産で働くことに興味を持ってくださっている方向けに、登録フォームをつくったんです。今すぐ選考や採用につながるわけではなくても、いつか一緒に働くかもしれない方々と、ご縁を育んでいけたらいいなと思っていて。
登録いただいた方には、イベントや見学会のお知らせを送ったりしています。田んぼに来てもらうのもいいし、会社の空気にふれてもらえる場をつくっていけたらなと。
まずは、ゆるやかにつながりながら、少しずつ関係を重ねていく。その中で、これからのまちづくりにつながる芽が育っていけば、とても嬉しいです。
植原 まさに、お米づくりみたいな採用ですね。焦らず、じっくり、時間をかけて育てていく。その姿勢が、omusubi不動産らしさなんだろうなと思います。
(撮影:廣川 慶明)
(編集:山中 散歩)
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