「理念に共感する人と、一緒に働きたい」——そんな思いを大切にしながら、採用に取り組んでいる株式会社HITOTOWA。
グリーンズが運営する、パーパス(働く意義)で仕事と出会える求人サイト「WORK for GOOD」を通じて出会ったのは、「庭を“使う”こと」に価値を見出し、地域に根ざした暮らしを育んできた石井隆真(いしい・たかまさ)さんでした。
一見すると異業種にも見えるキャリアですが、なぜ「パーパスフィット」、つまり企業の「パーパス(存在意義)」と応募者の「パーパス(働く意義)」の一致が生まれたのか。WORK for GOODの植原正太郎が、HITOTOWA代表の荒昌史(あら・まさふみ)さん、採用担当の田中宏明(たなか・ひろあき)さん、そして石井さんに話を伺いました。
都市と地域の社会課題に向き合う“まちづくりの伴走者”。「ともに助け合えるまちをつくる、人が幸せな会社」をビジョンに掲げ、「人と和」のためにさまざまなプロジェクトに取り組む。マンションコミュニティ支援をはじめ、防災・防犯をテーマにしたプロジェクト、空間活用、リノベーション、不動産仲介などを通じて、人と人とがつながる持続可能な地域づくりを実践している。
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庭師修行からはじまったキャリア
植原 このたびは採用・入社、本当におめでとうございます!
荒さん・田中さん・石井さん ありがとうございます。
植原 いやあ……ずっと応援しているHITOTOWAさんの採用に、こうしてお力になれたことが本当に嬉しくて。今日はみなさんにお話を聞けるのを楽しみにしてきました。
まずは石井さん、入社までのストーリーを辿る意味でも、これまでの経歴から伺ってもいいですか?
石井さん はい。父が造園業をしていることもあって、大学は東京農業大学の造園科学科に進みました。卒業後は、庭師としての腕を磨こうと、静岡県の一人親方のもとで修行をはじめたんです。
職人気質の親方で、本気で指導いただきました。最初は2年頑張ろうと思っていたのですが、自分の未熟さもあって、1年半で地元に戻ることにしました。
植原 そんな苦しい時期があったんですね。
石井さん はい。でもその頃から、「庭をどう使うか」ということへの興味が強くなっていったんです。親方のもとでは「つくっては次、つくっては次……」という流れが当たり前で、そこに少し違和感を覚えていました。
それで大学の仲間と「5%Garden (ファイブパーセントガーデン)」というユニットを立ち上げました。「暮らしの中の5%を変える」という思いを込めた名前です。
植原 素敵なコンセプトですね。どんな活動をされていたんですか?
石井さん 造園の過程で出る枝や、捨てられてしまう植物の端材を使って、ワークショップを開いたりしていました。あとは、私たちが手がけた植物のディスプレイを、有名なアウトドアブランドのカタログに使っていただいたこともあって。
植原 それはすごいですね!
石井さん ユニットの活動を1年半ほど続けた後、父の造園会社で「UCHISOTO CAFE」というプロジェクトを立ち上げました。「造園屋が営むコーヒーショップ」というコンセプトで、植物の相談を受けたり、地域の人とつながるワークショップを開いたり。いわゆる“カフェ”とは少し違う、コミュニティの拠点のような場所です。
その立ち上げと並行して、転職活動をしていました。
植原 転職を考えるようになったのは、どんなきっかけがあったんですか?
石井さん きっかけはいくつかありまして、まずはもっと社会に出て、いわゆるビジネスの現場で学びたいという気持ちがありました。
これまでは、親方のもとでマンツーマンで働いていて、その後も「5%Garden」での活動は、少人数で進めることが多かったんです。だからこそ、もっといろんな人と関わりながら、チームで動く仕事にも挑戦してみたいと思ったんです。
あとは、親方のもとで働いていたときに感じた「庭はつくるより、使うことにこそ意味があるんじゃないか」という気づきも大きくて。そういった経験から、ハードだけじゃなくてソフトにも取り組んでいるような、まちづくりの会社に惹かれるようになったんです。
そういう領域であれば、自分の関心とも合っているし、もっと挑戦していけるかもしれないと思って、まちづくり系の企業に絞って転職活動を始めました。
HITOTOWAとの偶然の出会い
植原 転職活動をする中で、HITOTOWAにはどうやって出会ったんですか?
石井さん 当時、UCHISOTO CAFEのInstagramを必死に運用していたんです。どうすればリールを見てもらえるかとか、日々試行錯誤していて。
同時に転職情報もよく見ていたので、Instagramで転職関連の広告がどんどん出てくるようになったんですよね。そんな中で目に入ってきたのが、WORK for GOODの広告でした。
植原 なるほど。どんな広告だったか覚えてますか?
石井さん HITOTOWAも参加していたオンライン合同説明会の告知でした。正直なところ、そのときは別の会社に興味があって。「名前もロゴもかわいいな」って惹かれて、気軽な気持ちで参加したんです。
前半で興味がある会社の話を聞き終わったとき、「ここで抜けてもいいかな」とも思ったのですが、「せっかくだし、後半も聞いていくか……」と。あのとき残っていなかったら、今ここにはいないです(笑)。
植原 ほんと、残ってくれてよかった……!
石井さん 後半にHITOTOWAの話を聞いて、「あれ、自分がやりたいと思っていたのって、まさにこういうことだったのかも」と、ふっと腑に落ちた感覚があって。でも、その時点ではまだ応募せず、別の会社の最終選考を待っていたんです。その合間にふと思い出して、「やっぱり気になるな」と思って応募しました。
採用基準は「理念とのフィット」
植原 ここからは、採用側の目線でお話を伺っていきたいと思います。少し大きな問いになりますが、近くに暮らす人たちの関係性を育むことでまちの課題を解決してきたHITOTOWAが、組織づくりや採用で大切にしていることって、どんなことですか?
荒さん やっぱり、何よりも「理念」ですね。HITOTOWAが掲げている価値観や考え方に、どれだけ共感していただけるか。もっと言うと、その方が入ってくださることが理念を実現する後押しになる予感がする。そんな方を採用したいなと思っています。
植原 その理念とは、具体的にどんな内容でしょう?
荒さん 「新基準の創造」「本質の追究」「共助の推進」「自律と学習」「笑顔で健やかに」の5つです。いわゆる「クレド」と呼ばれるものに近いかもしれません。
今回の採用では田中くんがカジュアル面談を担当してくれて、理念との一致・不一致を見てくれていました。
田中さん そうですね。WORK for GOODを通じてカジュアル面談に来てくださった方は、石井くん以外の方も最初からすごく関心が高かった印象があります。理念や事業内容についてある程度理解した状態で来てくださったので、こちらもお話ししやすかったですね。
面談では、その方のやりたいことが、HITOTOWAの目指す方向と重なっているかどうかを中心に見ていました。
植原 なるほど。では、実際に応募があった後は、どんなフローで選考を進めていたんでしょう?
荒さん 今回の採用活動では一次面接が私、二次面接がマネージャーという流れが多かったです。なるべく早めに見極めをしたかったので、最初は代表である私が担当していましたね。
植原 その一次面接では、どんな観点で見ているんですか?
荒さん まずはシンプルに、HITOTOWAの経営理念とフィットしているかどうか。
あとは、「自分にとっての部下」という目線を一旦脇に置いて、「もし自分がクライアントだったら」「同じチームのメンバーだったら」と想像してみるようにしています。HITOTOWAではプロジェクトごとにチームを組んで動くことが多いので、多様な関係性の中でその方がどのように力を発揮できそうかを、なるべくフラットに見ている感じですね。
植原 なるほど。さまざまなステークホルダーの視点でフラットに見つつ、理念とのフィットを見ていく。
荒さん はい、そうです。
植原 WORK for GOODでも「パーパスフィット」を大切にしていますが、まさに「HITOTOWAの理念」と「応募者の方の思い」が重なるかどうかを、最初の段階でしっかり見極めていらっしゃるんですね。
荒さん そうですね。HITOTOWAは以前から、理念を採用の中心に据えてきました。WORK for GOODから応募してくださる方とは、目線が合っていると感じることが多かったですね。
植原 面接のときに必ず聞く質問ってあるんですか?
荒さん うーん、どうだろう。たぶんオーソドックスな質問ばかりだと思うけど……
石井さん そうですね。正直、何社か受けた中で、荒さんの面接が一番手ごたえがなかったです(笑)。
荒さん ははは(笑)。私自身、あまり突っ込んだ質問はしないんですよ。こちらから深掘りしすぎずに、相手が何を話してくれるかを待って、その様子を見ながら考えるタイプかもしれません。
ポートフォリオで伝わる「石井さんのパーパス」
植原 石井さんが採用に至るまでは、どんな流れだったんですか?
石井さん カジュアル面談なしで応募したので、最初の面接が荒さんでした。本当は、キャリアのほとんどを庭づくりの“現場”──それこそ木の上で過ごしてきた人間なので(笑)、絶対に対面でお話したかったんです。
でも、当日がものすごい大雨で……やむなくオンラインに切り替えたんですよね。それで、終わったあとに「盛り上がらなかったな」と。家族にも「ダメだった気がする」と話していました。
植原 そんなふうに感じていたんですね。
石井さん 二次面接では、荒さんとマネージャーの方のお二人と、今度は対面でお話しできました。このときに、自分の価値観など内面を掘り下げてもらった感覚がありました。
植原 選考が進むにつれて、だんだん深く価値観を掘り下げられていったんですね。
そういえば、今はネイバーフッドデザインの知見をいかした不動産事業である「ひととわ不動産事業」を担当されていると伺っていますが、最初は「ネイバーフッドデザイン事業」の担当者募集への応募だったんですよね?
田中さん そうなんです。でもちょうどその頃、ひととわ不動産事業のほうで「即戦力じゃなくても、経験を積んでいつか事業に関わってもらう前提で採用するのもありだよね」という話をしていたタイミングだったんです。
そんなときに石井くんが応募してくれて、ポートフォリオを見せてもらったら、もう素晴らしくて。
田中さん ネイバーフッドデザインの感性もあるし、不動産事業でスキルをいかしながらオーナーさんと丁寧に関わっていく姿勢も想像できる。「両方できるかも」という話をさせてもらったのを覚えています。
植原 このレベルのポートフォリオを出せる方って、なかなかいないですよね。
田中さん いやあ、本当にすごかったです。単純にデザインが上手とか、センスがあるというだけじゃなくて、その中に見えてくる精神性というか……マインドの部分がすごくいいなと感じましたね。
植原 わかります。転職活動って、自分のことをどれだけ言語化できているかが大事ですよね。採用する側としても、その人が何を大事にしているのかがわからないと判断が難しい。
石井さんの場合、「庭を造るよりも“使う”方に関心がある」「地域や社会に関わりたい」というご自身のパーパスが明確になっていたからこそ、HITOTOWAにめぐり合えたんだろうなって。
田中さん そうですね。完全には言語化しきれていなくても、「問いを持って動いている人」って、自然とストーリーがにじみ出るんですよね。そういう方とは、話しているうちに「この人と働きたい」という気持ちになります。

入社後のギャップ
植原 石井さん、10月1日の入社からもう7ヶ月が経ったんですね。
石井さん はい、あっという間でした。
植原 実際に入ってみて、何かギャップはありましたか?
石井さん ギャップは……まったくないですね。むしろすごくしっくりきている感覚があって。
面白かったのが、HITOTOWAのみなさんが持っているネイバーフッドデザインの精神が、私がこれまでイメージしていた「醤油を借りるコミュニティ」とすごく重なっていたことなんです。
植原 醬油を借りるコミュニティ?
石井さん 昔は、家の醤油が切れたらお隣さんに借りるのが普通だったじゃないですか。そういう、ちょっとした助け合いが暮らしの中に自然とあるような関係性を、自分はずっと理想として持っていて。
HITOTOWAに入ってみたら、「ネイバーフッドデザインってそういうことだよね」っていう会話が、当たり前のように交わされていて。事前にすり合わせたわけでもないのに、ちゃんと通じ合っている感じがして、不思議だし、うれしい発見でした。
植原 それこそ、根っこに「パーパスフィット」があったからこその感覚かもしれませんね。
石井さん そうかもしれないですね。でも一方で、入ってから新しく気づいたこともありました。私はこれまで、「与えるまちづくり」をしていたなと思うんです。自分たちが考えたまちの姿を提案して、提示していくようなやり方です。
でも、HITOTOWAが「大規模マンションの自治会を3年間かけて立ち上げていく」という事例を聞いたときに、これは「待つまちづくり」だな、と。
住民の声に耳を傾けながら、焦らず時間をかけて育てていく。その姿勢にすごく学びがあるし、自分もそういう関わり方を身につけていきたいなと思っています。
田中さん 働き方のギャップはどうでしたか?
石井さん それは……ありました(笑)。以前は朝6時50分に集合して、7時半には軽トラで現場に向かうような生活だったので。
入社してからは、一日誰とも会わずにパソコン作業をしている日もあって。頭は疲れているのに体は疲れていなくて眠れなかったり……最初の3ヶ月くらいはなかなか慣れなかったですね。
田中さん わかります。パソコンに向かう時間が長すぎるというのは、会社全体の課題でもありますね。人と会う時間を意識的につくったり、散歩に出たりすることも大事にしよう、って話しています。
HITOTOWAの社員を支える仕組み
植原 ほかにも、入社して感じたことはありますか?
石井さん HITOTOWAには「バディ・トレーナー制度」があって、これはすごく素敵な仕組みだなと思っています。相談相手としてのバディと、アドバイス役のトレーナーが一人ずつついてくれて。定期的に一緒にランチしたり、悩み相談に乗ってもらったり、とても心強い存在でした。
二人ともすごく丁寧に見てくださって、特に入社後1~2ヶ月はたくさん頼らせてもらいましたね。
植原 「この人を頼っていいよ」と明確に決まっていると、不安が軽くなりますよね。その制度は、入社者向けの仕組みなんでしょうか?
田中さん いえ、全社員にバディとトレーナーがついています。同じチーム同士の組み合わせのときもあれば、あえて接点の少ない人をアサインすることもあります。
もちろん使い方は人それぞれですが、特に石井くんのように入社間もないメンバーにとっては、支えになっているかなと思いますね。
石井さん そういえば、入社してからHITOTOWAのみなさんが「UCHISOTO CAFE」に来てくれたんですよ。
田中さん 年に1~2回しかない全社研修を、今年はそこでやらせてもらったんですよね。結構シビアな来期方針の話とかをしていたんですけど、遠くで石井くんのお母さんも聞いてる、みたいな(笑)。
植原 それはすごいな(笑)。全社研修を新入社員の実家でやっちゃうとは。
石井さん この後ろに写っている木を植えたのも、ウッドデッキをデザインしたのも私です。
田中さん 手触り感のある、とても素敵なところでした。石井くんとご両親が手をかけて育ててきたその場所に、全社員が集まって。HITOTOWAらしい研修だったと思います。
“学び舎”のような組織を目指して
植原 最後に、これからのHITOTOWAが目指す組織像について教えていただけますか?
田中さん 代表の荒さんがいつも言っているのが、「HITOTOWAを“学び舎”のような組織にしたい」ということなんです。これまで試行錯誤を重ねながら理念をアップデートしてきましたが、「自律と学習」というキーワードは初期から残り続けていて。
私たちは、地域で共助を育てていく「まちのプロデューサー集団」を目指しています。それぞれの地域やプロジェクトで前提条件が違う中でも、「ネイバーフッドデザインの観点で大切なこと」を少しずつ言語化して、社内で共有知にしていく。
そうやって、自律した働き方と、学び合う組織文化を両立させていくことを、大事にしていきたいです。
「人と和」のために実践を重ねてきたHITOTOWAと、自ら問いを立てながらキャリアを歩んできた石井さん。その両者を結びつけたのは、「パーパス」という共通の軸でした。
理念に共鳴する仲間と、学び合いながらともに進んでいく。新たな出会いを経て、HITOTOWAの挑戦はこれからも広がっていきます。
(撮影:廣川 慶明)
(編集:山中 散歩)
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