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ヴィンテージのガソリン車をEVに改造する設計図、無料で公開しちゃいます!フォルクスワーゲンがオープンソースで進める電気自動車への転換プロジェクト「the Greenprint」

あなたは車を選ぶときに、何を基準にしますか?

燃費?
デザイン?
ハイブリッドや電気自動車など、サステナブルであるかどうか?
きっとそれぞれ、さまざまなポイントが挙げられるのではないでしょうか。

今回ご紹介するのは、フォルクスワーゲンタイプ2、日本では「ワーゲンバス」という愛称で親しまれているヴィンテージカーです。

手頃に買えるワーゲンバスは、1960年代後半にアメリカでヒッピームーブメントが起こると、自由にペイントしたりカスタムしたりして使う人びとが続出。この車が、愛と平和の世界の象徴になったこともありました。さらに最近では、その可愛い見た目やアンティーク感が人気となり、移動式カフェなどに利用されることもあります。

今もワーゲンバスに乗り続けている人びとは少なくないのですが、難点もあります。それは、古いエンジンで稼働するガソリン車であること。燃費の改善が進み、エネルギー源が変わりつつある中で、不満を感じるワーゲンバスオーナーも少なくありません。そこで、ワーゲンバスを電気自動車(EV)に変身させる画期的な取り組みがニュージーランドのフォルクスワーゲンで始まりました。

Greenprint」と名付けられたこのプロジェクトでは、誰でも自分のワーゲンバスをEVに変換できるオープンソースの設計図を提供しています。つまり、工場に改造を依頼するのではなく、それぞれのオーナーたち自身によるDIYでガソリン車をEV車に改造できるのです。

プロジェクトに興味を持った人びとは、ウェブサイトから手描きのアナログなポスターのようなデザインのデータをダウンロードし、オンライン上でオープンソースの設計図を見ることができるようになっています。設計図では20のステップが紹介されている他、オールインワンキットの購入や、承認された部品のリストを参照し、自分で部品を調達することも可能。

ステップのひとつ「ボルトを抜く」。難しい英単語は少なく、「いいお知らせだ、この車は8本のボルトを抜くだけでいいのさ」といったフランクな説明が並んでいます。

改造するために必要な部品のリスト

そして各ステップの詳細な説明だけでなく、音声ガイド機能や、ユーザーが投稿した動画も用意されていて、よくある質問も掲載されています。

この取り組みの背景には、ワーゲンバスを愛する人びと特有の文化があります。50年以上前の車を所有し、世代を超えて受け継いでいくオーナーたちには、自分の車を自分でメンテナンスすることを厭わない人々が多いのだとか。

だからこそ、メーカーとしても、ワーゲンバスオーナーのカルチャーに敬意を評する形で、改造を引き受けるのでなくオープンソースのガイドを配布することにしたんですね。「ずっと乗り続けてきたヴィンテージカーを、時代最先端のEV車に、しかも簡単に改造できるなんて!」と、自分自身でカスタムしてきたオーナーたちのワクワクする姿が目に浮かぶようです。

「Greenprint」プロジェクトがスタートしてから、ニュージーランド国内ではワーゲンバスの総数が約1,000台しかないにもかかわらず、設計図はすでに2,000回以上もダウンロードされています。実際に国内外でワーゲンバスを所有している人びとだけでなく、「20工程でヴィンテージカーのEV化ができるって本当?」と驚くDIY好きからの支持も集めている様子。

そして、各車両の変換で年間平均1.7トンの炭素排出量削減が見込まれ、新車の製造に伴う平均6トンのCO2の節約にもつながるそうです。

フォルクスワーゲンは2050年までにCO2排出量をゼロにすることを目指しており、その過程を「Way to Zero」と呼ばれるロードマップにしています。そして2030年までに、ヨーロッパでの販売台数の少なくとも70%をEVにするという野心的な目標を掲げているのです。

昨今、製品を販売した先の未来をデザインし、長期的な視点での顧客満足を重視し、サーキュラー・エコノミーを志向したマーケティング手法を考える動きが出てきています。フォルクスワーゲンによる「Greenprint」もまさにその一例で、ただ新車を売るという消費行動を促すだけでなく、すでに販売済みの車を改造するための情報を企業が公開することにより、オーナーとの絆を強くして、ファンとして長いつお付き合いをしてもらうことをめざしているのでしょう。

古い物を大切に使い続けながら、自分なりにアップデートすることが、地球環境を改善することにつながるって、うれしいですね。あなたには何かずっと使い続けたい、愛着ある物はありますか? この機会にメーカーに「自分でこういうリメイクやリペアしてみたいのだけど」と伝えてみてもいいかもしれませんよ。

(編集: 丸原孝紀、greenz challengers community)