生理で下着や服を汚してしまったこと、それを見られてしまったこと、あるいは見てしまったことってありませんか?
誰にでもありそうな経験なのに、ちょっとした出来事として気軽に話すことって、ほとんどないのではないでしょうか。
「今日生理なんだ」と言うことは少しずつできるようになってきているのに、それにまつわるちょっとした失敗は口にすることができないなんて、よく考えたらちょっと不思議です。
今回ご紹介するのは、本来恥と思う必要がないはずの生理中のアクシデントへの意識を変え、議会を動かすきっかけになったストーリーです。
鮮やかな色彩と存在感たっぷりのシルエットに、手描きの経血が大胆にあしらわれたドレス。この特別なファッションアイテムをつくったのは、ケニアの小さなファッションブランド「Zeva」。
生理は恥ずかしいものじゃない。目を逸らさずに、見つめ直してみて!
そう語りかけてくるような自信に満ちた美しいドレスは、経血のシミを恥とする法律を変えるキャンペーンのためにデザインされました。
きっかけは、2023年2月14日にケニアのナイロビの議会で起きた事件。女性上院議員のGloria Orwoba(グロリア・オルウォバ)が、ズボンに経血のシミがついていたことが「服装規定違反」だとして議会への出席を拒否されたのです。
経済的な理由で生理用品を買うことができない家庭もあるケニア。2019年には、生理の経血が制服ににじんでいることを教師から叱責された生徒が自殺するという事件が起きており、グロリア議員は女子学生に生理用ナプキンを無償で提供する法案を提案していました。
経血を理由として議会への出席を拒否したこの事件は賛否両論を巻き起こしましたが、ケニアのファッションブランド「zava」はこれを受けて経血のシミをデザインしたドレスを構想。事件後わずか3週間後の3月8日の国際女性デーに合わせて、驚くべきデザインのコレクションを発表しました。
女性だけでなく、男性も含めたケニアのインフルエンサーたちが、経血をモチーフとした模様をあしらったドレスを身に纏う姿は、#StainNotShame(シミは恥じゃない!)というハッシュタグとともに大きな話題に。この広がりを受けて、キャンペーン開始から1ヶ月後、ケニア政府は生理中の人を辱める行為を罰する法律をつくると発表しました。
ファッションブランドならではのあざやかなPR展開は世論を動かし、議会をも動かすことに。生理を恥ずかしいものではなく、自然な身体の営みとして受け入れる社会への第一歩となったのです。
ファッションには、自己表現のひとつでありながら、身に纏って人に見せるという社会的なアートとしての側面もあるのではないでしょうか。美しいイメージを堂々とした表情のモデルたちが表現するというカラフルな問題提起が、タブーをポジティブに壊すインパクトをもたらしました。
(編集: 丸原孝紀、スズキコウタ、greenz challengers community)
(Text: 高橋友佳子、丸原孝紀)
[via YouTube, buzzfeed, wpp, bbc, Top Photo: via YouTube © SHOP ZEVA]