「今日は大漁だ〜! プラスチックごみが…」なんてセリフが、現実のものになる日が来るかもしれません。
というのも、世界経済フォーラムのレポートによると、このままでは2050年までに世界の海では魚よりプラスチックの方が多くなるという予測がされているのです。
海洋プラスチックごみは生態系に与えるダメージが懸念されていますが、漁業にも悪影響をもたらします。水産物にごみが混入してしまうと商品価値が下がるため、劣化により細かくなったプラスチックごみを取り除く必要があります。また、漁船のスクリューにプラスチックごみが絡まることで航行の妨げになることも。
どんどん深刻になりつつある海洋プラスチックごみの問題に取り組み続けているのが、メキシコのビール会社であるコロナ。ビーチで楽しむ定番としておなじみのビール、コロナ・エキストラを届けるビール会社として、海を汚すプラスチックごみは放っておけない問題なのです。
コロナが海洋プラスチックごみ問題を解決するパートナーとして着目したのが、海洋プラスチックごみの増加に悩む漁師たち。
「釣りのプロたちに、海洋プラスチックごみを釣りまくってもらおう」。
そんな発想で、「Plastic Fishing Tournament」と題した海洋プラスチックごみの釣り大会を開いたのです。
大会は、ブラジル、メキシコ、中国、イスラエル、コロンビア、南アメリカの5カ国における7つのビーチで、漁師たちを対象に開催されました。
そのうちの一つ、メキシコのマサトランにあるビーチで2021年7月8日に開かれた大会では、30隻のボートで80人の漁師たちが参加。4時間半かけて参加者全員で約2.9トンの海洋プラスチックごみを回収することができました。約319キロのごみを回収した優勝チームは、750USドルの賞金を獲得。
この大会を開催することで、メキシコ全体では約8.6トン、ブラジルでは約2.9トン、中国では約3.0トン、イスラエルでは約2.1トン、そして南アフリカでは約4.3トン、トータルで約21トンもの海洋プラスチックごみを回収することに成功しました。
大会に参加した漁師たちはこう言います。
汚染がなくなれば魚が戻ってきて、私たちも助かる。
生活に打撃を与えていた海洋プラスチックごみが、収入源になるなんて。
私の夢は、きれいな海を守り、次世代も魚を獲れるようにすることだ。
大会で集められた海洋プラスチックごみは資源としてリサイクルされたり、地元コミュニティのためのオブジェや輸送用パレット、ビーチウェアなどに転用されたりするとのこと。コロナはこの取り組みにより、海の環境を改善するとともに、リサイクルを通して漁師の新たな収入源につなげることをめざしています。
広い広い海に漂う膨大な海洋プラスチックごみを想像すると気が遠くなります。でも、こんな大会があちこちで開かれるようになったら、海はどんどんきれいになっていくかもしれません。きれいになった海を眺めながら、コロナのビールで乾杯したいものですね。もちろん、ポイ捨ては厳禁ですよ。
(編集: スズキコウタ、片岡麻衣子)