先の読めない不安定な時代を生きていくためには、学び合ったり、助け合ったり、あるいは、ただお互いの話に耳を傾けたり。そんなコミュニティの存在が不可欠です。
“コミュニティ”という言葉がバズワードとしてではなく、一周回って当たり前になったいまだからこそ、コミュニティと日々向き合い、もはや自分の人生の一部となっている『コミュニティで生きる人』たちのために必要な場をつくりたい。
そんな思いで2022年5月から、「コミュニティの教室」が「コミュニティのカレッジ(コミュカレ)」として生まれ変わることになりました。ホストはコミュニティフリーランスの長田涼さん、そして(実は!)「コミュニティの教室」第1期の卒業生でもある黒田悠介さんです。
これまでの「コミュニティの教室」とどこが違うの? どうしてコミュニティに対話が必要なの? 今回はコミュニティのカレッジに込めた思いをたっぷり伺いました。聞き手は「グリーンズの学校」学長の兼松佳宏(YOSH)が務めます。
スポーツ大学を卒業後、ユニクロ→スポーツイベント会社→IT企業を経て、2018年にコミュニティフリーランスとして独立。現在コミュニティマネージャーとして関わっているのは、私たちの“はたらく“を問い続ける対話型コミュニティ「Wasei Salon」、トランジションコミュニティ「グリーンズジョブ」がある。また、コミュニティで生きる人の対話の場「コミュニティのカレッジ」のコーディネーター、複数社コミュニティアドバイザーも務める。
あたらしいキャリア論『ライフピボット』の著者。問いでつながるコミュニティ「議論メシ」を主宰。対話で課題を解決する「ディスカッションパートナー」としても活動。以前は経営者やキャリアコンサルタント、フリーランス研究家を経験。キャリア論を発信し続けている、メガネをかけたボウズ。
これまでの「コミュニティの教室」と何が違うの?
YOSH 「グリーンズの学校」には、全8回のような短期集中型の「◯◯の教室」(NVCの教室など)と、卒業のない探究型の「◯◯カレッジ」(サステナビリティカレッジなど)という2つの形式があります。
今回はもともとの「コミュニティの教室」から生まれ変わって、探究型の「コミュニティのカレッジ」へとアップデートすることになりました。まずはその背景を教えて下さい。
長田さん ありがとうございます。おかげさまでこれまでの「コミュニティの教室」の満足度は高く、また”3ヶ月”という終わりがあるからこそ学びにコミットできるよさもあったので、無理にやり方を変えなくてもいいのかなと最初は思っていました。
ただ「コミュニティの教室」は、「こうすればうまくいきます」みたいなわかりやすいメソッドだったり、ひとつの答えを提供する場ではないんですよね。
受講生のほとんどが実践者で、クラスの卒業後もそれぞれのコミュニティを運営しつづけるなかで、「忙しいコミュニティマネージャーにとって必要なのはどんな場なのだろう?」と考えてみたとき、シンプルに「コミュニティのことを考え続ける場をつくりたいな」と思うようになりました。
YOSH なるほど。
長田さん コミュニティマネージャーとして、ひとりでコミュニティと向き合い続けることって、正直しんどいんです。だから僕自身も仲間がほしいなと思っていたし、みなさんにとってもそんな場になったらいいなあと。
YOSH 実際のクラスはどんな流れで進んでいく予定ですか?
長田さん 基本的にはゲスト講義と対話会が中心になります。
ゲスト講義では、コミュニティの世界で実践されている方をお呼びして、どんなことを考えて運営しているのか、そもそもコミュニティをどう捉えているのかなどを伺いながら、受講生と一緒に考えていく時間です。
キックオフということで、僕が大きな影響を受けた『ゆっくり、いそげ』著者でクルミドコーヒーの影山知明さん、友人でもあり、応援するひとがたくさんいるITONAMIの山脇耀平さん、熱いメンバーが集まるオンラインコミュニティ前田デザイン室の前田高志さんという、僕にとって特別な3人のゲストのみなさんにお越しいただくことになりました。
YOSH 本当に豪華ですね! あと、もうひとつ、対話会についても教えて下さい。
長田さん 僕はコミュニティの鍵は対話だと考えているんです。「こっちが正解!」みたいな極論に走らずに、モヤモヤしていられる空間がコミュニティを育んでいく。
最近はコミュニティのつくり方や運営方法を体系的に学べるような場は増えてきた印象もありますが、そもそもコミュニティに正解なんてないし、すごく多面的なものですよね。だから、対話を重ねて、いろんな方向からコミュニティを捉えて、それぞれの答えを見つけていけるような場を「コミュニティのカレッジ」を通じてつくっていけたらと思っています。
誰でも、自分にフィットするコミュニティと出会えるように
YOSH そんな対話会を主催していただくのが、コミュニティファシリテーターの黒田さんということで。最初カレッジのお話を聞いたときはいかがでしたか?
黒田さん まさに「コミュニティに正解はない」と思っていたし、コミュニティの本質を探究していく場がほしいと思っていたので、とても嬉しかったですね。豪華なゲストの話を聞く場と、じっくり対話をする場と両方を体験できる場は稀有だと思っていて、そこが「コミュニティのカレッジ」のユニークなところだと思っています。
YOSH 黒田さんは“コミュニティ”という言葉にどんな可能性を感じていますか?
黒田さん 僕の願いは、コミュニティのバリエーションが増えていくことなんです。あんなのもあるのか、こんなのもあるのか、と増えていくと、誰でも、少なくともひとつは、自分にフィットするコミュニティを見つけられるようになる。
それは孤独化する社会に対する対策になるかもしれないし、社会のなかで挑戦する人を増やす土台になるかもしれない。
長田さん その話、とても共感します。僕自身の経験としても、コミュニティによって救われた経験が大きくて、コミュニティは人生のトランジションにつながるんですよね。
黒田さん コミュニティというと、インフルエンサーのオンラインサロンのような、お祭り的なハレの場をイメージする人が多いかもしれませんが、トランジションを支えてくれたり、世の中の基底をなしているのは、もっと日常に近いケのコミュニティなんですよね。
ハレのコミュニティは、エンタメ化するとかわかりやすい方法論がありそうだけれど、ケのコミュニティは多様すぎて、それこそひとつの答えなんてない。だからこそ、各々のなかで、自分なりの答えを見出していくしかないし、その答えのようなものを実践してみると、また壁にぶつかって新たな問いが生まれてくる。
YOSH 問いの無限ループですね。
黒田さん その状態は、熱量が循環しているともいえます。議論メシでそのあたりのノウハウを培ってきたので、コミュニティのカレッジでもどんどん取り入れていきたいと思っています。いい味噌ができたから、お味噌汁をおすそ分けする、みたいな感覚(笑)
YOSH ありがとうございます、すでにいい味噌をいただいている感じがしています(笑)ぜひ「グリーンズの学校」全体の文化にしてゆけたらと思いました。
ちなみに、おふたりはもともとお知り合いだったんですか?
黒田さん ”コミュニティフリーランス”を名乗っていて注目はしていたし、「発信内容に一貫性があって素敵だなあ」と思っていました。それで、ちょっとあることで悩んだときに、「このことを僕と同じような感覚で相談できる人は長田さんしかいない」って思い浮かんで連絡を取らせていただいて。そこで初めてガッツリお話しましたね。
長田さん そのときの話も共感することだらけで。僕も議論メシのことはよく知っていたし「いつか一緒に何かできたら!」と心のなかでずっと思っていて。今度は僕からの相談ということで、こうして黒田さんとご一緒できたことが、カレッジ化していちばんうれしいことのひとつかもしれないです(笑)
コミュニティと対話は相似形
YOSH もう少し対話会の流れについて聞いてみてもいいですか? 例えば、対話のための問いがあらかじめ用意されているのでしょうか。
黒田さん 事前に問いやテーマを用意して、それについて集まるのもありなんですが、とにかくただ集まって、そのとき話したい問いを出していく“クエスチョンストーミング”の方が面白いのかなと思っています。
いろいろと問いが出たなかで、話したい問いを投票で決める、みたいな流れですね。来てくれた人のニーズを満たしつつ、その場の空気感を採用していきたいなあと。
YOSH クエスチョンストーミング、いいですね。
黒田さん 自ら問いを立てる経験、さらに自ら立てた問いに人が集まる経験がとても大切なんですよね。みんなが問いのオーナーになる、というか。
カレッジのなかで一ヶ月に一度、自由に問いを出せる場があるので、講義がない時間に本を読んだり、いろいろ考えたりしながら、ゴチャゴチャしているものを問いとして持ってきてもらう。そうすると、わからないことを言語化することができるんです。
YOSH ふとした疑問なんですけど、対話と会話の違いって何だと思いますか?
長田さん そうですね、僕は問いがあるかないかだと思っています。雑談していて、「これってどういうことなんだっけ?」という問いが生まれたときに、対話がはじまる。あとは、誰もマウンティングしたり、頭ごなしに否定しないような状態も大切ですね。
黒田さん 僕は対話の前提には、お互いが変わっていくことがあるのかなって思っています。対話が終わった後のビフォーアフターでお互いに別人になっている。世界観や考え方が変わっている。
YOSH 変わっていくというのは、アンラーン(学びほぐし)といえるかもしれませんね。
黒田さん そうかもしれません。だからこそ「変わる気はありません」という人が来ても対話にはならないですよね。むしろ説教になっていたりとか。変わる気がある人が集まって、初めて対話が生まれるんです。
今ふと思ったのですが、誰かの発言を受け取って、また誰かが反応して変わっていくのが対話だとすれば、それをもう少し人数が多めで、もっと長いスパンで進めていくのがコミュニティなのかもしれませんね。バトンを渡して、受け取って、という意味では、コミュニティと対話って相似の関係にある。
YOSH 確かに! だからこそ、コミュニティの鍵は対話にあるんですね。
コミュニティは“関係性の集合体”
長田さん 問いのオーナーになる、とことにもつながりますが、よくいわれる“コミュニティの自走化”を目指すのであれば、運営する側が「提供しなきゃ」とがんばるのではなく、メンバーひとりひとりの声を引き出すことが肝だと思っています。
メンバーがそれぞれに持っている好奇心をいかに形にしてあげるか、抱いている問いについてみんなで考えられる場をいかにつくるか。
黒田さん まさに。一気に火をつけたとしても長続きしないので、自立分散的に熱量が循環していくことが大切ですよね。運営側もとにかくがんばりすぎない。そういう意味で、メンバー主催の場がどれくらい開かれているかはひとつのKPIになると思います。
公式な場が盛り上がるのは当たり前なので、非公式な場がどれくらい生まれて、勝手に盛り上がっているか。それってプラットフォームに近いイメージなんですよね。ただ読むだけではなく、投稿もする。そういう仕組みを整えて行ければ、運営する側はより重要な部分に時間を使えるようになります。
YOSH プラットフォームとして捉えるのはいいですね。
長田さん コミュニティは“関係性の集合体”だと思っているので、運営側と参加者だけでなく、ひとりひとりが関係性の一部であることが重要だと思うんです。あるいは、そのことをそれぞれが自覚するというか。
ちょっと話が大きくなってしまいますが、この地球でいかし、いかされているとすれば、地球もひとつのコミュニティと言えなくもない。そもそも僕らはすでにコミュニティで生きていることを自覚することが、自分の人生を考え直すきっかけになるのかもしれません。
YOSH 興味深い視点だと思いました。仏教では”縁起”とか、inter-being(相互共存)とかいいますが、私たちがこれまでずっと大切にしてきたことをいまの文脈に合わせてみたとき、それを”コミュニティ”とただ呼んでいるだけなのかもしれない。
長田さん まさにそうですね。そのことに気づくことができたら、ぜひコミュニティ運営に関わる経験をもってほしいと願っています。そうすることで、私たちの世界をつくっているさまざまな関係性のつくりかたについて向き合えるようになるし、その結果、きっと社会はよくなっていくはず。
そんな一歩を踏み出してみたいなと思った方は、ぜひコミュニティのカレッジにきてください。僕たちが温かく迎え入れたいと思っています。
「コミュニティのバリエーションが増えることで、ひとりひとりにフィットするコミュニティとであるようにしたい」という黒田さん。「すでにコミュニティで生きていることを自覚することが、人生を考え直すきっかけになる」という長田さん。こうした運営メンバーの願いやあり方こそ、何よりコミュニティのカレッジの魅力なのかもしれません。
「コミュニティのカレッジ」は現在、第1期メンバー募集中! 第一次締切は4月27日(水)です。
「そろそろ、コミュニティのなかで生きていきたい」と思った方は、「コミュニティのカレッジ」からはじめてみませんか?
– INFORMATION –
「コミュニティのカレッジ」は、コミュニティを問い続ける場であり、コミュニティで生きる人たちがつながるラーニングコミュニティとして育んでいきたいと思っています。コミュニティ運営においては、ノウハウを手に入れることよりも、対話し続ける姿勢やそれが実現できる空間とつながりこそが、本当に必要なものなのではないでしょうか。「対話」「学び」「つながり」が有機的に循環し、ここでの学びや気付きがそれぞれの現場で生きていく。そんなラーニングコミュニティを目指していきます。