レジ袋が有料になってからマイバッグを使う人が増えたような気がしますが、プラスチックごみが減った実感はありますか?
レジ袋が少なくなったとはいえ、スーパーやコンビニで売られている商品の多くはプラスチックで包装されていますし、コロナ禍でお世話になっているテイクアウトの容器もほとんどがプラスチック製。
そこでレジ袋の有料化に続いて、2022年4月1日からは新しい法律として通称「プラ新法」(プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)が施行されます。
この法律により、事業者にはよりプラスチック削減のための取り組みが求められるように。これまでプラスチックだったものが紙や木に替わったり、無料で配られていたプラスチックのスプーンなどが有料になったりします。また、包装容器に加え、さまざまなプラスチックごみの分別収集もはじまります。
海を汚したり、燃やすことで温室効果ガスを増やすことにつながるプラスチックごみが、これでようやく大幅に減る! となればよいのですが、どうなのでしょうか…。
ごみという概念そのものがない、循環型の経済システムとして注目を集めているのが「サーキュラー・エコノミー」。おお、これだ! とは思うのですが、いつまでに、どんな行動が求められるのかが明確でないと、絵に描いた餅にもなりかねません。
そんなプラごみをめぐるモヤモヤ状況を打開すべくはじまったのが、WWFジャパンの「プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025」。これは、2025年をマイルストーンに、コミットメント(社会への公約)を表明した企業とともに持続可能なサーキュラー・エコノミーを進めるプラットフォームです。
2月に行われたこのプラットフォームの発表会の模様と、グリーンズ編集部によるプラスチック包装容器をめぐるぶっちゃけトークをお届けします。
リサイクルだけでは、海洋に流出するごみの量は減らせない!
プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025は、これまでの取り組みとはどう違うのか、どのような変化をもたらすのか。まずは2月22日に行われた発足発表会の模様をレポートします。
まずは、WWFジャパン事務局長の東梅貞義さんから、主催者としての挨拶。
東梅さん いま、世界の環境サステナビリティはふたつの危機を迎えています。
ひとつ目は地球温暖化による危機。
そしてふたつ目は生物多様性の危機です。
こうした危機に関わっているのが、プラスチックの製造、利用、そして廃棄なのです。問題を解決するには、国際協定の締結と、企業による先進的で広範囲にわたるサステナビリティの取り組みが必要です。今回発表する取り組みは、そのための大きな一歩を踏み出す機会となります。
続いて、WWFジャパン プラスチック政策マネージャーの三沢行弘さんから、プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025の意義の説明が。
三沢さん プラスチックをめぐる問題の解決のために優先すべきは、包装容器のプラスチックを減らすことです。と言うのも、プラスチックごみの半分が包装容器だからです。繰り返し製造されては捨てられるまで、サイクルも短いのでごみの量が非常に多くなるんですね。ここをまず、抜本的に変えていないといけない。
いま必要なのは「システム転換」です。いまごみ問題の解決に向けてリサイクルが推進されていますが、リサイクルではある程度は抑えられるものの、海洋に流出するごみの量を減らすまでには至らないと予測されています。
まずはリデュース(減らすこと)を徹底する、その上でリユースとリサイクルをする。設計段階でごみを出さない、使い捨てしないようデザインすることで、大量生産・大量消費・大量廃棄から脱却することが求められます。
三沢さん そして、大事なのはマイルストーンとなる時期を明確にすること。SDGsの達成期限は2030年ですが、SDGsのゴール14「海の豊かさを守ろう」の中のターゲットには「2025年までに、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に減少させる」と書かれています。2025年を無視して問題解決は図れない、と指摘させていただきます。
プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025は、サーキュラー・エコノミー実践のための5つの取り組みへのコミットメントを企業が表明するという、これまで日本にはなかった意欲的なプラットフォームです。スタート時に10社からコミットメントを表明していただきましたが、生活者といっしょにその動きを推進し、業界全体に、そして国としてのアクションプランに広げるようリーダーシップを発揮していただきたいと思っています。
期限があるコミットメントで、企業の「本気」をカタチにする
続いて、コミットメント企業からのコメント。サントリーホールディングス株式会社 執行役員の藤原正明さん、日本航空株式会社 常務執行役員の植田英嗣さん、そしてユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社 ジェネラルカウンセルの北島敬之さんがそれぞれ、自社のプラスチック削減についての取り組みを説明。
WWFの三沢さんと企業の方を交えたパネルディスカッションでは、それぞれの立場からプラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025の意義が語られました。
藤原さん お客さまへの訴えかけという意味で、何年にどうするのかを明確にする、そして2025年というリアリティのあるマイルストーンを設定し、そこに向けて行動することは重要だと考えています。
北島さん たくさんの企業が集まって一つの目標に向かって進んでいくことで、一社単独で取り組むよりも大きなインパクトが得られることになると思います。ともに乗り越えていくためにも、業界横断型のプラットフォームには期待しています。
上田さん お客さまの声がサービスをサステナブルに改善させていくアイデアの元になります。生活者のみなさまとの共創を進めるためにも、自分たちが何をめざしてどのような取り組みを行っているのかを伝えていくことが大事だと考えています。
企業のコミットメントを生活者が評価し、仕組みを変えていく動きを
発表会のあと、WWFジャパン プラスチック政策マネージャーの三沢行弘さんにお時間をいただき、気になるところをインタビューしました。
— 今回、企業をターゲットとされたのはどうしてですか?
三沢さん サーキュラー・エコノミーを推進していくための両輪は、政策と企業の取り組みだと思っています。その両輪を生活者を巻き込むことでうまく回していく。そのためにプラットフォームを立ち上げました。社会を大きく変えていくのは政策ですが、その政策をより実効性のあるものにしていくために、企業と共同提言ができるようになるといいですね。
— 地球環境についてよく「一人ひとりにできることを」なんて言われたりしますが、企業の役割も大きいんですね?
三沢さん ここは難しいところなんですけど、いくら生活者の意識が高くても、選択肢がないと行動が限られてくるんですよね。
特にプラスチック容器包装においては過剰包装のものが提供されがちなので。そこがボトルネックになっているので、企業には選択肢を広げていただきたいです。企業としては包装容器を減らすことでお客さんが離れることを心配しているところがあると思うので、生活者からの声を採り入れながら企業が変わっていける方向に持って行きたいですね。
— では、企業が変わるために生活者には何ができるのでしょうか?
三沢さん 良い取り組みを行っている企業の商品を買っていただくことも大事ですが、より期待したいのは、企業のコミットメント(社会との約束)を評価することです。プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025では、各企業に2025年という期限がついたコミットメントを表明してもらっていますが、そうした姿勢を評価することで企業の取り組みを加速するような動きをつくっていきたいです。
— コミットメントを表明した企業についてどう思いますか?
三沢さん 正直こんなにたくさんの企業が参画してくれるとは思っていなかったので驚いています。気候変動においてはSBTi(※)などがあり、企業によるコミットメントが経営陣にも浸透し始めていますが、そうしたことも影響しているのかもしれません。
プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025のウェブサイトでは参画企業から取り組み事例を紹介してもらっていますが、こうした取り組みがゴールだとは思っていません。コミットメントを表明し、高い目標を掲げ、それを実現するために今以上に何ができるのかを考え、行動していただくことを期待しています。
(※)Science Based Targets initiativeの略(SBTイニシアティブ)。企業に対し「科学的根拠」に基づく「 二酸化炭素 排出量削減目標」を立てることを求める共同イニシアチブ。
— 今後、どのような業種の企業に参画してもらいたいですか?
三沢さん 流通企業ですね。消費財のメーカーさんも流通を通して商品を提供することが多いので、流通企業が参画することで、全体の取り組みを高い次元に持っていくことができるのではないかと考えています。
グリーンズ編集部メンバーからも、企業にあれこれリクエスト!
プラスチック包装容器、ここが悩ましい!
みんなにお菓子を配ったりするときなんかは、衛生的にやっぱり個包装はありがたい。プラスチック以外の方法で、衛生面もケアできる方法があるといいな。
脱プラのためにお弁当をつくって職場に持って行ったりしてるんだけど、料理のために買う野菜とかの食材もプラスチック包装されているので結局プラごみが出るのがストレス。
忙しいから手軽に買えるプラスチック包装の食品を買ってしまうところがある。忙しすぎる毎日を過ごさないと暮らしていけないという社会構造的な問題もあるよね。いまのままじゃ、脱プラができるのは余裕がある人、という感じになってしまう。
プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025
参画企業の取り組みに、一言。
プラスチック・サーキュラー・エコノミーに参画しているのはメーカーが多いけど、スーパーやコンビニが入っててくれたらなあ。メーカーと小売りが協力すれば、もっと包装はシンプルにできるんじゃないかなあ。
いろんな企業が包装容器を減らすためにがんばるのはいいこと。でも、生活者のことは知ったこっちゃないみたいな取り組みだともったいない。企業の努力に生活者が貢献できることが実感できる仕組みなら、共創関係がつくっていけるんじゃないか。
参画企業の取り組みを見ていると、それぞれの会社が競い合うようにいろんな取り組みをしているように感じる。それぞれがバラバラにやるんじゃなくて、共同で、つくるだけではなくて、廃棄の流れもつくるようになればいいのに。
企業のこんな取り組み、大歓迎!
キムチとかコーラとか、自分でつくっちゃうとかなりゴミが減るんですよ。包装容器に入った商品ばかりじゃなくて、自分たちで手軽につくれる材料を提供するビジネスはあるんじゃないかなあ。
牛乳とか調味料のびんを回収して洗ってリユースしてくれる生協で食品を買っているけど、すごくスッキリする。生活者にできることは限られているから、流通のしくみとか、個人じゃなくてみんなで取り組んでいける方法がもっとあるといい。
最近は炭酸飲料を持ち歩けるマイボトルも出てきている。使い捨て容器じゃなくて、マイボトルに飲料を入れてくれる自販機とかあるといいな。
日本環境設計のリサイクルアパレルブランド「BRING」では、服を通販で買うと封筒が入っていてその封筒にいらなくなった服を入れて送るとリサイクルしてくれるんです。切手代はかかるんですけど、売りっぱなしにしないというブランドの姿勢はカッコいいと思いますね。
ごみが出ないことって、単純に気持ちいい。捨てないでいい気持ちよさを価値として打ち出すブランドが出てきてもいいんじゃないかな。
ニュースなどでプラスチックごみによる環境汚染が取り上げられることが増えてきて、身の回りのプラスチックごみにストレスを感じる、でも、どうしても必要なプラスチック包装容器はあるよね、といった本音。そして、こんな商品やサービスがあったらいいな、というアイデアも。暮らしに身近なテーマだけにトークは大盛り上がりになりました。
みなさんも、プラスチック・サーキュラー・チャレンジ2025のウェブサイトを見ながら、プラスチックごみのモヤモヤを語ってみてはいかがでしょうか。そして、ぜひ「リクエスト」のフォームから声を届けてみてください。コツコツとした努力だけではない、ガマンばかりじゃないプラスチックごみ削減の仕組みが、ここから生まれるかもしれません。
(編集・校正: やなぎさわまどか)
(校正・マネジメント: スズキコウタ、廣畑七絵)