日本の皆さん、はじめまして。
2021年10月も終わりにさしかかった頃、渋谷の広告スペースに届いた1通の手紙。読み進めると、差出人に驚かされます!
南米出身のヒアリと申します。
普段は公園や芝生で、人やペットのことを毒針で刺したりして過ごしています。人がピクニックや BBQしてるところも 大好きです。
コンテナに乗ってはるばるやってきたのですが、この国はとても過ごしやすそうで、これからここで根を張っていこうと思っています。
それもこれも、皆さまのおかげです。ありがとうございます。これからも環境に配慮せずに、僕らが住みやすい環境を守っていってください。
ヒアリ!?
私たちのことを毒針で刺す虫が住みやすい日本って?
困惑しきっているかもしれないみなさんに種明かしをしましょう。
実はこれ、国際環境NGO団体グリーンピースが展開した「危険生物から感謝の手紙」というキャンペーン。
気候変動や海水面の上昇により、すみかを失う生き物がいる一方で、本来日本ではあまり確認されていなかった危険生物にとっては快適な環境になっている。そんな皮肉な状況をユーモアで表現し、地球環境の危機が身近に迫っていることを伝えているのです。
(左)渋谷に掲げられたのは、南米出身のヒアリの母国語=スペイン語のポスターでした。(右)日本語版は添えられたQRコードによりアクセスできたもの。他にも、さまざまな危険生物からの手紙がウェブサイトに公開されています。(画像クリックで拡大できます)
外来の危険生物が住みやすい日本を変えるには
危険生物についてさまざまな研究を続けてきた国立環境研究所の五箇公一先生は、危険生物が日本で多く目撃されるようになった一番の要因は、グローバル経済の発展にあるといいます。
五箇先生 ヒトやモノが大量に高速移動することで、大量のエネルギーが消費されてしまいます。その過程で温暖化が起こり気温や海水温の上昇が起き、結果的に危険なタコやクラゲが日本近海にも近づくようになったり、流通に紛れてヒアリなどの危険生物が日本へやってきたりする。また経済を支えるための都市化・土地開発によって外来の危険生物が住みやすい環境も広がっています。
五箇先生 それぞれの国や地域が、自立的な循環型の社会を作っていくことが非常に重要だと考えています。その中でも私たちができることは、地産地消のスタイルをとることです。「地産地消」というと地元の野菜を地元で食べるといったイメージしかないかもしれませんが、地域にある資源やエネルギーを地域レベルで、生産・消費・循環させていくことが重要です。
グローバル経済が世界で標準化している今、なかなか自立的な循環型の社会に舵を切るのは簡単ではないかもしれません。
一方で、地域内で資源やお金が循環する社会を考えるフォーラム「ローカリゼーションデイ日本」が開催されたり、地産率を上げるための取り組みや地域通貨が日本各地で広がるなど、経済の再定義を目指す動きはたしかに芽生え始めています。
危険生物からの手紙へ返信を書いてみた
社会を変えよう。
危機を伝えよう。
そういったキャンペーンはこれまでにも数多く世界で展開され、グリーンズでもさまざまな事例を紹介し、どのようにメッセージを発信しているのか掘り下げてきました。
「危険生物から感謝の手紙」を私たちはどう受け取ればいいだろう。
greenz.jp第2編集部「greenz challengers community」のメンバーで議論した末、危険生物宛に人間からの感謝の手紙を書いて、この記事を終えることに決めました。
(執筆・編集・校正: greenz challengers community、スズキコウタ)
(企画: 丸原孝紀)