NPOグリーンズの合言葉でもある「いかしあうつながり」とは、関わっている存在すべてが幸せになり、幸せであり続ける関係性のこと。それをみんながデザインできるような考え方、やり方をつくり、実践し、広めるのが、NPOグリーンズの新しいミッションだ。
とはいえ、それってどんなこと? 発案者の鈴木菜央も「まだわからない(笑)」という。「わからないなら、聞きに行こう」というわけで、鈴木菜央が「いかしあうつながり」「関係性のデザイン」に近い分野で実践・研究しているさまざまな方々と対話する連載。第2回目はパーマカルチャーデザイナーでフォレストガーデンを実践する大村淳さんです。
フォレストガーデンの活動について伺った前編に続き、後編では淳さんが関わる、キャリア教育についてお話を伺っていきます。
ー 目次 ー
▼持続可能な社会の担い手をつくる、パーマカルチャー教育の実践
▼資源を見つけて活かし方を探る
▼今ここにある資源で豊かさをつくる パーマカルチャー的キャリア”郷”育とは
▼「まかれた種は隣の畑へ飛んでいく」
▼AI時代の教育 自分自身の気持ちを発掘するには
持続可能な社会の担い手をつくる、
パーマカルチャー教育の実践
鈴木菜央(以下、菜央)フォレストガーデンの活動をやっていきながら、今、公立の中学校でパーマカルチャーをベースにしたキャリア教育をやっているということなんだけど、そのことについて教えてもらってもいいですか。
大村淳(以下、淳) はじまりは2017年かな。浜松市の4つ隣の、菊川市の菊川西中学校の先生と知り合う機会があって。学校で持続可能性についての授業をやっていきたいんだってすごく熱意のある先生がいらっしゃったんです。
文部科学相から、ESD(Education for Sustainable Development)教育、つまり持続可能な開発ができる社会をつくる担い手を育てなさいというお達しが、学校に流れてきているけれど、学校サイドとして一体それをどうやって子どもたちに教育として伝えればいいか悩んでいる。先生たちも試行錯誤していろんなことをやっていたんですけど、持続可能性のアプローチってものすごくいろんな問題が複雑に絡み合ってる分、ひとまとまりのものとして説明する難しさがあった。あまりにも範囲も広いし、テーマも深かったりするので。
その時に僕がパーマカルチャ―のお話をする機会に恵まれて、そしたらその話を聞いた先生たちが、僕たちがやろうとしてたのはパーマカルチャ―だ、ってすごく腑に落ちたみたいなんです。
それで、学校で既に行われていた「キャリア教育」というカリキュラムの中に、パーマカルチャーを導入してみようという流れに決まって。僕たちはパーマカルチャ―デザインラボというチームの中で、菊川西中学校のESD教育に関わらせてもらうことになりました。
実験的に総合学習って、通常の教科とは別のところにある学習の時間を使わせてもらって、パーマカルチャ―の基本的な概念や、事例を生徒にシェアしたり、生徒自身が自分たちの学校をパーマカルチャ―のやり方や手法をもってデザインしてみたり。あとは地域社会に対してどういう風にアプローチしたら菊川市が持続可能性な発展ができるんだろうかって、地域をデザインすることもしています。年々新しいテーマで、先生たちもパーマカルチャ―を自分たちなりに噛み砕いて、カリキュラムを常にアップデートしながら授業をやっていくっていう試みが今も継続している感じですね。
菜央 この間僕も学校を見せてもらって、ほんとびっくりしたんだけど、なんか、モリモリしてるよね。
淳 そうですね(笑)
菜央 教室の前にいきなり畑があったり。あと面白かったのが、野球の練習してるバックネットにキュウリがなってたり、陸上部が走ってる横に野菜が植わってたりとか。
淳 そうそう、パーマカルチャ―に対して深く共感を示してくれる先生たちが、自主性をもって学校に手を入れ始めたり、生徒と関わりながらすぐできるパーマカルチャ―の実践を始めたりしていて。自主的に始めてもらえたっていうのがすごく面白い出来事だったんですよね。
未公認部活として、百笑クラブっていう部活が立ち上がって。要はパーマカルチャー部みたいな感じなんですけど。陸上部とかバレー部とか運動部の子たちの中で興味関心がある子は、部活のウォーミングアップがてら畑を耕したり、野菜を育てたり、みたいなことが生まれてますね。
菜央 ほお。両立してるの? その部活は、いわゆる平行してやるんじゃなくて、どっちも参加できるんだね。そこがまたパーマカルチャー的だね(笑)
淳 だから微笑ましかったですね。陸上部の部活始まる前のちょっとしたすきま時間を使って、大豆の種蒔いてる子どもたちがいるとか。上手につくるんですよ。
菜央 ああ! そうなんだ。
淳 ほんとに。つくり方教えてほしいくらい。
菜央 へえ。総合学習って週2時間かな? 全学年が参加してるの?
淳 そうですね、そんなに頻度は高くないです。各学年で総合学習の時間でやることは違うんですけど、僕たちがフォローに入っていく授業も、全部がパーマカルチャ―の授業というわけではなくて、年間ある総合学習の時間の主要な核の部分とか、根っこになる部分に入って授業させてもらってる感じですね。
昨年までの流れだと、1年生にはパーマカルチャ―の概念を説明したり、パーマカルチャーの実践者がその人たちならではのパーマカルチャ―の実践を子どもたちに事例として紹介してくれたり、とか。
菜央 それが1年生。2年生はどんな?
淳 2年生は、テーマをもって、「学校をデザインしてみよう」っていう、要はデザインエクササイズみたいなことをやっていく感じですね。
菜央 ほうほう。どんなことなのかな? デザインエクササイズって。
淳 パーマカルチャーの専門的なものっていうよりは、「フォレストガーデンには7つのタイプの植物がいるから、7つの植物を組み合わせて、自分のガーデンをつくってみよう」みたいな感じに近いんですけど。
例えば、学校のエリアだったら、職員室まわりっていうテーマを決めて、そこでパーマカルチャーを生かしたデザインをしてみよう、とか。あとは、グラウンドの空いてる敷地を使ってどんなデザインができるかを考える、とか。生徒たちがグループをつくって、グループの中でテーマを決めて、デザインをしてみる。僕たちは、こんな風にやったらいいんじゃない? ってアドバイスに入る、みたいな感じ。
菜央 ふむふむ。職員室前ってどんな風に? それは実際やったの?
淳 職員室前に掲示板があるんですけど。それが、みんながアクセスしづらいところにあるんじゃないかって。もっと人が行き交いやすい所に移した方が、先生や生徒みんなの負担が減るんじゃないかみたいなことを提案した子がいましたね。
菜央 ほうほうほう。そうやって、練習をしていくわけだよね。その場所場所でね。
淳 そうです、そうです。
菜央 じゃあこの場所の資源って何? と見つけてったり、いかされてない資源あるね、と考えたり。そういう感じ?
淳 そうです、そうです。
資源を見つけて活かし方を探る
菜央 具体的にどんなふうに進んでいくのかな、この授業って。
淳 毎回同じっていうわけではないんですけど、主にプロセスとしては、まず学校の豊かさの種をみつけてみよう、みたいなテーマでどんな資源になるものが学校にあるか、観察してみようというワークをしていて。
例えば太陽だったら、太陽の光が一番当たるところとか、太陽の光が収穫できるところはどこだろうとか。あとは「日陰」や「水」みたいにテーマごとにグループを分けて、ここ結構湿ってるねとか、ここは土が肥えてそう、みたいに、資源を見つけるワークをして、見つけたことをシェアする、みたいなエクササイズをする。そうして場所場所にある資源が見えてきたら、その資源を元にいかにして豊かな場所をつくるか、というのをみんなに考えてもらうっていう感じですね。
菜央 もうちょっと具体的なイメージを湧かせたいんだけど、どんなことが起きたのかな。
淳 例えば、ドブのような、雨水が流れる側溝があるんですね。常にずっと水がジメジメジメジメしてるところで雨も勝手に流れ込んでくる。そこに水辺で育つ植物を植えて、水が好きな植物が育つ菜園をつくれるんじゃないかって提案をしてくれた子がいました。
菜央 へえ。実際それはやってるの?
淳 それはね、まだやってはないです。実際に動いてるところとしては、やっぱり菜園が一番手掛けやすいかな。「この辺りが日あたりがいい」って資源が見つかったところを、ちょっと開拓して畑をつくったりしました。それこそ、野球部のネットじゃないですけど。ネットっていう資源を、きゅうりが這うためのネットとしても使っちゃう、みたいなのも、発想として面白いなーとか。
菜央 なんか、もさもさ増えたら涼しそうだよね。その周りとか。
淳 ねえ、そうですね。
菜央 熱中症にも良かったりするのかな、とか。
淳 そうそう。パーマカルチャーのいろんなデザインの手法があるんですけど、あんまり複雑にすることもできないし、パーマカルチャーを伝えられる時間の限界もあるので、3つの原理、「アースケア、ピープルケア、フェアシェア」っていうところを押さえたデザインをやってみよう、って伝えているんです。
気候変動を迎える中、なんの日陰もないグラウンドで部活をやり続けるって言うのは、ピープルケアじゃない。ベンチの木陰に果樹を植えたら、木陰になるし、食べ物も手に入る。アースケアだし、ピープルケアだし、フェアシェアなんじゃないか、みたいなことを考える生徒がいました。
菜央 アースケアは日陰が増えて地球温暖化防止になる、ピープルケアは日陰が増えて人にやさしい。
淳 フェアシェアは食べ物をみんなで分かち合える。
菜央 なるほど! そういうことね。
淳 生徒たちの発想は面白いですね。
今ここにある資源で豊かさをつくる
パーマカルチャー的キャリア”郷”育とは
菜央 今3年経ったぐらいのところだよね。元々キャリア教育で始まったって言ってたんだけど、なんでキャリア教育がこれになるの? っていうことを、ちょっと説明してほしいな。
淳 そうですね。キャリア教育の教育の「きょう」っていう字が、普通は教え育てるの「教育」なんですけど、菊川市は郷土の「郷」で「郷育」なんですよね。
地方都市の特徴と言えるかもしれないけど、みんなが学校を卒業した後は大都市へ出てしまう。でも、しっかり戻って来られるような、菊川市や郷土を大切にできるような人材を育てて行きたいっていうことが、市の中で力を入れている部分で。パーマカルチャーの考え方である「今ここにある豊かさをどう最大化していけるか」とか、「今ここにある資源をどうやっていかしながら持続的に豊かさを成熟させていくか」みたいな考え方と、地域の持続可能性がつながっていったという感じですね。
菜央 あぁ。じゃあ、いわゆる、面接練習して、テストガリガリ頑張って、いい大学とりあえず入って、いい就職先に入りましょうみたいな教育じゃなくて、もうちょっと、生き方ととして地域で生きるとか、地域に愛着持てる子に育ってほしいみたいな、そういうキャリアなんだね。
淳 そうそうそう。そういう感じですね。
それはパーマカルチャーをESD教育に接続してくれた先生が願っていたことでもあったんです。キャリア教育で、先生や生徒たちに教えてくれる人っていうのは、地域でいろいろと面白いことやってる人たちなんですよね。農家さんもいれば、地元の古民家を再生するプロジェクトをやっている人もいて。地域に密着してビジネスをしている人たちを招いて授業をしているっていうのも、特徴として面白いですね。
菜央 へえ。さっき、「今ここにある資源で豊かさをつくる」って言ってたけど、東京から誰かすごい人を呼んでくるじゃなくて、まさに今ここにある人という資源で豊かな授業をつくるっていう。
淳 そうなんですよね。
菜央 「いい大学目指して、いい会社目指す」みたいなキャリア教育じゃない本当のキャリア教育を目指す「キャリア郷育」という土台があって、どうしたらいいか考えたらパーマカルチャーというものがあった、みたいなことなのかな。
淳 うんうん。パーマカルチャーっていう、多様なものを統合して、一つのものとして考えていくっていうアプローチにキャリア郷育がマッチしたんだと思うんですよね。さらに、キャリア郷育と同時にESD教育というテーマもあるので、それも併せて考えることができるんだ、みたいな。
菜央 ESD敎育は知らない人は全然知らないと思うんだけど、持続可能な開発のための教育という意味だよね。全国でESDを推進する学校があるけど、その中の一つだったっていうことなのかな?
淳 そうです。
菜央 なるほどね。
淳 キャリア郷育やESD教育って、いろいろテーマがあるんだけど、それぞれのテーマはバラバラのものではなくて、実は一つのものとして考えることもできるということを、先生たちが腑に落ちてくれたんです。キャリア郷育のローカルさと、ESD教育のグローバルさ、その両方に引き裂かれているような感じだったものを、グローバルで起こっていることも意識しながら、ローカルにやっていこうって一個につないでいく考え方になっていたのかなって。
菜央 なるほどね。そこをつなぐ考え方としてパーマカルチャーは使えるね、みたいな。
淳 うんうん。
「まかれた種は隣の畑へ飛んでいく」
菜央 何か一つのゴールを達成したいとして、そこに最短距離で無駄なく全力疾走するのが、これまでの社会のベースの考え方なんだよね。それに基づいてあらゆるものが組み立てられてて、経済とかお金っていうシステムもその最たるものだと思うんだけど。
そこから、経済的なリターンは短期的には減るけど、豊かで長期的な関係性に投資していくことで、多様なリターンが僕らにも返ってくるし、僕らがリターンを得るのと同じくらい、周りの虫や鳥や木にもリターンがいく。それでそのリターンが、最終的には僕らにも返ってくる、みたいな。瞬間的な効率じゃなくて、多様な価値をつなげていくことで、じわーっと全体の幸福をつくっていく。フォレストガーデンの話を聞いたときに、まさにそうだなと思ったんだけど。さっき「全ての生き物のニーズが満たされる森」って言ってたよね。
淳 うんうん。
菜央 資源やゴミの観点から見ても、自然との関係の観点から見ても、持続可能な社会ではなくなっているっていうのはもう明白で。そんな中で、人間の存在があまりにも大きくなって、新型コロナという問題にもぶち当たってる気がするのね。
全ての生き物のニーズが満たされるデザインっていうところに、社会全体が向かって行かざるを得ないような気がしていて。医学でも研究が進めば進むほど、人間の心と体の悪いところを切ったり殺したりしていくのではなくて、つながりの中での幸せを求めていったほうがいいっていう、ある意味「そんなの当たり前じゃん」みたいなことを再発見しつつある。環境問題を研究してる人も、気象問題研究してる人も、いろんな分野で同時多発的に、全部を分けて一つだけゴールを取り出してそこに走っていくみたいな社会じゃなくて、あらゆる問題がつながってるっていうことを観察して感じながら、その中でどうやってハッピーなデザインをしていくか、みたいなところに向かっている感覚があるのね。
淳 うんうんうんうん。
菜央 「パーマカルチャー」はそういう現代社会の問題に対する一つの解決策を導き出せる考え方、アプローチの一つだと思ってるけど、「パーマカルチャー」じゃない領域でも多様なすごい発見というかそういう変化がめちゃくちゃ起きてると思うの。そんなことから考えると、市立の学校がこれを始めているっていうのは、でっかい希望だなって思ったりして。それって、一つの学校にとどまらなくて。一番変わりにくい、産業社会の駒を育てるっていう明治以降から続いてる教育のあり方の変化が、公立の学校に始まってるってのは、本当に希望だなって思うんですよ。嬉しい、だから(笑)
淳 僕も嬉しいです(笑) 公立は、どうしても国の政策、方針みたいなところで動かざるをえないっていう限界を受け入れつつも、その中でできる事っていうのがある気がしていて。毎年毎年ドキドキするんですよね。今回は新型コロナの影響で今までのケースが一回ちょっと途切れるような感じになるかなっていうのもあるんですけど、毎回状況が変わりつつも、でもやっぱり種をまくことも大事だなと思ってて。
毎年パーマカルチャーを学んで、一緒に走ってきてくれた先生たちが異動していていくんですよね。嬉しかったのが、この3年間一緒にやってきてくれた若い先生が異動することになって挨拶に行ったら、別れ際に「次行く学校で畑になりそうな場所があったんで、畑やってみます」って言ってくれて。
菜央 いやー素晴らしい。
淳 種は飛んでいくんだなみたいな。そこに希望を感じさせてもらって。嬉しい、やって良かったなって本当に思いましたね。
菜央 フォレストガーデンは、初期は大変だけど、徐々に自分で広がっていくって話と重なるね。
淳 そうそうそうそう。
菜央 最初はちょっとずつ種まいて、種まいて、種まいて、みたいな感じだけど、だんだん種が隣の畑に飛んでいく(笑)
淳 ほんとそんな感じなんですよね。希望を感じます。その枠の中だけでもいろんな変化は起こっているかもしれないですけど、ふと隣見てみると、あ、案外ここで起こってたことが向こうにも響いてるんじゃない? みたいに感じて。そういう視野の広さというか、自分の領域だけじゃなくて、外でどうそれが影響し合ってるか、みたいな視点ってこれからすごく大事なんじゃないかなって思いますね。
菜央 生徒たちはどんな感じなのかな。
淳 生徒たちも、パーマカルチャーの授業は、通常の学校のルールにしばられてない感じだからいいみたい。僕たちも寝ながら聞いてもいいよ、みたいな感じだし。
菜央 はははは。
淳 すごく楽しんでくれてる感じは伝わってきて。これも感動したんですけど、授業を楽しんでくれてた女の子が、「先生になって、パーマカルチャー教育もっと広めたいです」って言ってくれたんです。
菜央 おお(笑) すごいね。
淳 生徒たちも多様性があるから一概には言えないけど、でも反応してくれる子どもたちもいてくれるっていうのはやっぱり嬉しいなって思う。今は反応がなかったとしても、昔まかれてた種が、ふとした時に芽生えてくるっていうのはあると思うから。何かしらの時にポジティブな方向に影響するような種を、パーマカルチャーから受け取ってもらえたら嬉しいなと思いますね。
AI時代の教育
自分自身の気持ちを発掘するには
菜央 最近、ユヴァル・ノア・ハラリのYouTube見まくってるんだけど。
淳 ああ。『サピエンス全史』の。
菜央 AIがね、どんどん加速度的に成長していくし、そういう中でアルゴリズムに支配される世界が、もう始まってると。どんな本を買うべきかはAmazonが教えてくれるし、どこに行くべきかはGoogleマップが教えてくれるし、何が真実かはGoogle検索が教えてくれる。心拍数とか何歩歩いたとか、どこにいたとか。そういう自分のことを、自分よりもアルゴリズムの方がよく知っている、そういう世界が始まっていて。
僕にとってはすごくディストピアな未来なんだけど、ハラリは「大切なのは、自分で自分を知るっていうことだと思う」って言ってて。自分の中にある可能性とか、自分の中にある本当にやりたいこととか、自分という宇宙とつながって、アルゴリズムの先を行きなさい、と言っていて。本当にそうだなぁと。
だから、僕は必然的に、関係性をつくる、いかしあうつながりをつくる人になるっていうのが、一番の幸せだと思う。幸せって関係性の中にあるからさ。だから学校の生徒たちも、今はまだ3年間の中で、ものすごい変化があるということではないかもしれないけど、でも僕はこういう教育を子どもに受けてほしいって思うし、自分がその頃の生徒だったら、こういう教育受けたいなと思う。だからもっと、周りからこの活動を、いいねって言うことも重要だよね。ものすごく意味がある活動だなって聞いてて思った。
淳 先生たちも今、子どもたちに教え伝えてることが、本当にこの子どもたちが社会に出た時に意味をなすのかみたいな不安と常に向き合いつつも、今自分たちができることをやっているというのもある気がしていて。その中でパーマカルチャーに触れて、こういうやり方もありなんだっていう風に刺激を受けるのが、生徒たちだけじゃなくて、先生側にも大きくあるというところがまず、本当に種まきだなって。地道な種まきなんですけど。
空気感や文化、パーマカルチャーの「カルチャー」が、培われて、養われて、広がってく感じを、一人ひとりがつくっていけたら面白いのかな。カルチャーは一人ではつくれるものではないし。関係性の中で生まれて浮かび上がってくるものだと思うから。
菜央 さっき「寝ながら授業受けてもいいよ」って言ってたけど、本当に自分の中に湧き上がる、何これ、みたいな興味とか、やりたいって気持ちから出発するっていうところが大きいよね。うちの子を見てても、学校ってこれをやりなさい、あれをやりなさい、時間になったらここに現れなさい、遅刻はしちゃいけない、授業中は座ってなくちゃいけない、で、宿題をこなさなくちゃいけない、みたいな。それのずーっと連続で。だから、あなたは自分自身を知りなさいっていうメッセージは皆無なんだよね。
淳 そうなんだよね。
菜央 あなたの存在意義はあるんだよ、存在してるだけで意味があるし、あなたが本当にやりたいことは何? って、あなたの幸せって何? みたいな問いかけも少しはあるんだろうけど、学校全体を引いてみた時にはやっぱりないんだよね。
やらされる、自分がなくても生きていける、自分のことを知らなくても、とりあえず上手にこなせる人が点取れて上に行けるみたいな意識がある。でも学校って本当は、勉強するって一つの定規じゃなくて、アイデアを出すとか、いろんな貢献の仕方がきっとあるんだよね。みんながいかされるというか。そういうの大事だよね。
淳 学校は家よりもいる時間が長いから、次から次へと答えで塗り固められていくような感じだって。そもそも自分がどうしたいんだっけとか、こういうことに自分は感動したり、心動くみたいなものも、表現しにくい感じ、答えが先にあるから。
そこを問う姿勢というか、一枚一枚被ってきたものをはいで、自分自身の気持ちを発掘していくことが必要かもね。そこはアルゴリズムに代替できない感じもするし。だってそもそもの始まりは自分自身の気持ちの方にあると思うから。答えがない問いに、いかに心を向け続けてくかっていうのがますます大事になっていくのかな。それは行動してみることで返ってくる手応えのような感じもするから、子どもたちも自分の内側に入ってみたり出てみたりの往復で、次の世界がつくられていくといいなあって思うね。
(編集: 福井尚子)
– INFORMATION –
大村淳さんの活動についてもっと詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
・Permaculture Design Lab. (パーマカルチャーデザインラボ)
WEB https://www.permaculturedesignlab.com/
FB https://www.facebook.com/pctdesignlab
・The Art Of ForestGarden (フォレストガーデン・プロジェクト)
https://www.theartofforestgarden.com/