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小さな「いいね」が積み重なり、まちの魅力に昇華する。市民PRチーム「いこまち宣伝部」が伝える、生駒に暮らす人たちのストーリー。

突然ですが、みなさんは自分が住むまちの魅力を語ることができますか?

自治体がまちをプロモーションする活動として、市民にまちの魅力をレポートしてもらう取り組みが広がっています。グリーンズでもまちの魅力を発信する市民記者のお手伝いをしたことがあります。

今回ご紹介するのは、奈良県生駒市の「グッドサイクルいこま」というFacebookページで記事を書いている市民PRチーム「いこまち宣伝部」です。

「グッドサイクルいこま」には5700人以上ものフォロワーがおり(2020年10月現在)、頻繁に発信されるまちの情報は住民同士のコミュニケーションのきっかけにもなっています。

「いこまち宣伝部」のメンバーは住民から公募で選ばれ、毎年10月から1年間の任期で活動。メンバーのほとんどが未経験者ですが、活動開始前にカメラや文章の講座を受け、市内で活動する人やお店などを取材し、市民目線でその魅力を伝える記事を作成し、発信しています。

いこまち宣伝部の記事が掲載される「グッドサイクルいこま」Facebookページ。

「いこまち宣伝部」5期生の今井杉子さん西山佳織さん、彼女たちとタッグを組み活動を支える生駒市職員の村田充弘さんに「いこまち宣伝部」の活動について伺いました。

西山佳織(にしやま・かおり<写真左>)
生駒市生まれ、生駒市育ち。普段は奈良市内に勤める会社員。
今井杉子(いまい・すぎこ<写真中央>)
生駒市で育ち、大学進学で生駒を離れ、フィリピンで仕事をしたのち、生駒市へUターン。現在はフリーの通訳者。
村田充弘(むらた・みつひろ<写真右>)
生駒市生まれ、生駒市育ち。生駒市広報広聴課プロモーション係長。「いこまち宣伝部」は立ち上げに関わり、2020年春から再度担当する。

さまざまなつながりを生む「いこまち宣伝部」の活動

西山さん 私はもともとFacebookページ『グッドサイクルいこま』の読者で、紹介されたお店やイベントを訪れるなど、すごく活用させてもらっていて。その情報に乗って伝わってくる雰囲気が楽しそうでおしゃれでキラキラして見えて。その仲間入りがしたいと思って参加しました。

一方、西山さんとは対照的な動機を持っていたのが今井さんです。

今井さん すでに「いこまち宣伝部」に参加していた友だちがSNSにやたら「生駒大好き!」みたいな投稿をしていて、すごく気持ち悪く感じていたんです(笑) 確かに緑豊かで大阪へもすぐ行けるけど、私はとにかくこのまちから出たくて出たくて出たくて…

西山さん・村田さん 3回も言いましたね(笑)

今井さん そう。私は嫌で一度出て行ったまちだから、「好き好き言うほどいい?」「いこまち宣伝部に入れば謎が解けるの?」と思って参加しました。ミラーレス一眼カメラを借りられるのも良かった。

取材活動が始まる前の講座は5回にわたり、初回は生駒のお気に入りスポットをプレゼン。2回目は文章講座、3回目、4回目は写真講座、5回目は原稿をつくってきて、みんなで感想を言い合う。その後、月に一度は記事を書くというのがルールなのだとか。

取材はひとりで行くときもあれば、何人かで連れ立って行くこともあるそうです。

西山さん いわゆる“ゆる募”です。宣伝部メンバーのLINEグループで「ここに取材に行くけど誰か一緒に行く?」とゆるく募集するんです。「何日やったら行けるよ」とか「車に乗り合わせて行こか」とかやりとりしています。

西山さんは「生駒市観光ボランティアガイドの会」を取材した日のことが強く印象に残っているそうです。

西山さんの書いた、「生駒市観光ボランティアガイドの会」の記事の一部

西山さん シニアのボランティアガイドさんたちが酒蔵巡りの案内をするツアーに同行取材させていただきました。案内中はお客様の相手をされているので取材用の質問ができず、写真だけ撮らせてもらって、終了後に「後日メールで質問させてください」とお伝えしたら、「メールなんて味気ない!今からお茶でも行って話を聞こう!」とおっしゃって。

ファーストフード店で、私の父親と同じかもっと年上の男性5人に囲まれてお話したんです。「お客様にご不便をかけないためにはどうすれば…」とか、「お客様を無事に送り届けて満足するんじゃなくて、もっともっと良くしたい」とか、生駒のことを知ってもらいながらお客様により良いおもてなしをするために、熱く議論する眼差しがとてもかっこよくて。その日は心が震えたまま家に帰りました。

「いこまち宣伝部」を通して、さまざまなつながりが生まれたことをふたりは楽しそうに語ります。

何か思い出すたびに笑い合うふたり

西山さん これまで生駒市でIKOMA SUN FESTAのようなイベントがあっても特に誰とも会話せず、「知っている人に会いませんように…」という感じでこっそり参加していたんですが、「いこまち宣伝部」に参加してからは、取材先やイベントで出会った人に積極的に声をかけています。

生駒が好きで、生駒のために何かしたくて、オープンマインドな人が多いので、スッと仲間に入れちゃうんです。

今井さん 私も「いこまち宣伝部」に参加してすぐに「生駒大好き!」の謎が解けましたね。

市役所とのフラットな関係性が、コロナ禍をも乗り越えた

2020年3月ごろから新型コロナウイルスが流行し、生駒でも対応に追われている市役所職員の姿が手に取るように伝わってきたと今井さんはいいます。

今井さん 逆に私たちでできることはないかと宣伝部の同期で話し合って、「グッドサイクルいこま」で市内飲食店のテイクアウトメニューを紹介しようと考えたんです。コロナ禍だからこそ、地域の魅力発信を止めてはいけないと思っていました。

また、先払いで生駒の飲食店などを応援できるウェブサイト「生駒市×さきめし」を市が立ち上げたものの、メニューや店頭の写真を掲載していない店舗が多いことに気づき、今井さんは「いこまち宣伝部」による写真撮影を発案したそうです。

生駒市が立ち上げた「生駒市×さきめし」のサイト

未曾有の事態であっても、「いこまち宣伝部」として市民にとって有益な情報を積極的に発信することができた背景には、「いこまち宣伝部」メンバーと村田さんをはじめとする市の担当者との間のフラットな関係性があるようです。

今井さん 村田さんのことは、みんな「村田パイセン」って呼んでいます(笑) 市役所の方たちは身近ですね。ちょっとした問い合わせにもすぐに対応してくれて、申し訳ないなと思っています。

村田さん 感覚的には仕事としてではなく、一緒に生駒の魅力を探し、発信する仲間として接しています。普通にFacebookで友だちとしてつながっているから、お互いの日々の投稿も見ているし、記事の確認も友人から連絡が来る感覚で、ストレスなく楽しんでやっていますよ。

生駒で暮らす人のストーリーを伝えたい

ふたりは、取材すればするほど生駒のまちの見方が変わっていくと感じているそうです。

西山さん 初めて取材に行ったカフェのオーナーは、ご自身の病気をきっかけにこれからの人生を考えなおして働き方を変えたという話をされていました。

じっくりとお話を伺うと、みんな少なからず自分と向き合う経験やそれぞれのストーリーがあって、そこにとても心が惹かれて。私が直接聞けたのはごく限られた方々のお話なんですけれど、生駒で暮らす人たちに対して愛をもって見られるようになりました。

「いこまち宣伝部」の取材の様子。「カフェ遊」にて。

今井さんは以前、映画撮影に伴う通訳の仕事で北九州市を訪れ、現地のフィルムコミッション(映像製作の関係者に地域の紹介や撮影支援を行う団体)の人に地元を丁寧に案内してもらったことが印象に残っているといいます。

例えば「午前中しか開いていないこのパン屋さんは自分が子どもの頃からあって、カレーパンがおいしい」という話を聞いて食べたパンは、彼のストーリーを含んでとても印象に残っているそうです。

今井さん 「北九州市は大好きって言えるけれど、地元の生駒市のことは言えるかな?」という気持ちが芽生えて。「いこまち宣伝部」で活動しながら、私はそのストーリーを伝えればいいんだと思って。

例えばここ、「カフェ遊(あそび)」は地元のお母さんたちがつくった500円のおいしいランチが食べられるし、お隣は木工職人の宮本さんのアトリエで、「作業場の引き出しを開けたら、安全のためにすべての工具が大きさ順にきっちりと並んでいてすごいねんっ!」って話を聞いた人は、絶対引き出しを開けに行きたくなると思うんですよ(笑)

そういうストーリーを、これからも伝えていけたらと考えています。

「カフェ遊」の500円ランチ

宮本さんのアトリエにて

ふたりの任期は今年の9月で終わりましたが、今後もOGとして「いこまち宣伝部」ファミリーとなり関わっていきたいと話してくれました。

10月からスタートした「いこまち宣伝部」6期生の募集には定員の倍以上の応募があり、以前に比べ男性の応募者が増えたそう。これまでに約80人の市民が「いこまち宣伝部」に関わり、卒業してから「イコマカメラ部」などの活動を立ち上げた人や、宣伝部の同期が立ち上げたコミュニティカフェで働き始めた人もいます。今後、自発的にまちを盛り上げる人たちがますます増えていきそうな予感がします。

小さな「いいね」が積み重なり、生駒愛が広がる

「いこまち宣伝部」は自治体のプロモーション関係者の間でも認知され、全国の自治体から視察があるといいます。また、この夏には奈良県からプロモーションの協力依頼があり、地元雑誌の特集で西山さんが取材を担当したそうです。

「そもそも『グッドサイクルいこま』のFacebookページだけでなく、メンバーがそれぞれ自身のSNSでも生駒のことを自然に発信している」と今井さんが言うように、「いこまち宣伝部」は当初の想定を超える役割も担っているようです。

村田さん もともとは、広報紙の読者アンケートで「もっと地域のお店や教室の情報が知りたい」という声があがって「いこまち宣伝部」を立ち上げました。でも、活動を続けていくうちに宣伝部の方は情報を発信するだけじゃなく、役所っぽく言いますと、“推奨者”としていろんな角度から『生駒いいね』と勧めてくださるんです。

行政がまちをPRするよりも、実際に生駒で暮らす方々の実感がこもった口コミにはすごい力があります。一人ひとりの『いいね』が積み重なると、まちの魅力として共有されるし、地域の良さを自発的に発信する人も徐々に増えていくように思います。実際に「いこまち宣伝部」を立ち上げてから去年までの間に、市民の「まちの推奨意欲」は約10%あがっているんですよ。

生駒市役所では、市の職員が地域の中に積極的に入っていこうという動きがあり、西山さんと今井さんもそれを実感しているそう。市役所で働く職員と住民が近しい距離でうまくタッグを組みながら、まちの人々に「生駒愛」を広げ、ひいては市外の人にも魅力が伝わっているのがわかりました。

実は私は、2020年8月に著書『まちのファンをつくる 自治体ウェブ発信テキスト』(学芸出版社)を出版し、その中でも「いこまち宣伝部」を取り上げています。本を書くために日本の約1740の自治体を調べましたが、このような市民PRチームを続けているまちは全国でも数えるほどしかありません。

その中でも生駒市のように職員とメンバーが一丸となって運営しているまちは珍しく、持続可能な運営体制を築けぬまま終わってしまう例をいくつも見てきました。「いこまち宣伝部」が、生駒市職員と市民が信頼関係を築いてきた積み重ねの上で長く続いている事業であることを最後にお伝えしておきたいです。

この10月から始まった6期生のメンバーには、「いこまち宣伝部」への関心が一つのきっかけとなって隣の市から生駒市に移住してきた人がいるそうですが、「グッドサイクルいこま」を読んでいればその気持ちがわかります。引越しの予定がなくてもぜひ「いこまち宣伝部」が発信する「グッドサイクルいこま」を読み、みなさんの生駒愛を感じながら生駒のまちに触れてみてください。

(撮影:都甲ユウタ)

[sponsored by 生駒市]