みんなは、お金好き?
「世の中、お金だけじゃない」って言うけど、だいたいの人は「とはいえ……」ってなるよね(笑)
現代人の僕らは、お金中心の世界観を子どもの頃から教え込まれてきたからしょうがないのかも。でも、実はほかにもすごく重要な“資本”があるんじゃないかな? 今日はそんな話を紹介するね。
これは“8つの形の資本”という捉え方で、「金融パーマカルチャー」という分野のワークショップをやりながら、「グローバル金融システム(※)をパーマカルチャーの原則でデザインし直したらどうなるか」を追求している、イーサン・ローランド(Ethan Roland)とグレゴリー・ランヅア(Gregory Landua)のふたりが考えたもの。
「このフレームワークを使って、現実を捉えなおしてみよう! 」というわけ。簡単に説明すると、こんな感じ。
彼らは「この捉え方はすべてを網羅しているわけではない」って言ってて、だから僕は9つ目に“余裕資本”というのも付け加えてみた。
これは例えば、「時間がある」とか「心の余裕がある」とか。資本主義のスピードに追われて恐れや不安を抱えていたら、自分を見つめることも人を助けることもできなくなる。
だけど、余裕資本があるだけでいろいろなことが可能になるし、余裕があるとほかの資源も活かせるよね。それに、ほかの資源は“あるもの”だけど、実は“ないもの”もすごく資源なんじゃないかな。例えば、何も予定がない自由な日とか。
イーサンによると、ビジネス界にもパーマカルチャーの世界観を広げるために”資本”という表現を使っているそうなんだけど、気をつけたいのは、“資本”なら何でも商品=お金に換えられると思いがちなんだけど、そういうわけではないこと。
そもそも“資本”って、「お金や、そのほかの価値のある資源」という意味なんだって。みんなにとって、「そのほかの価値のある資源」って、どんなものがある?
資本主義(特に新自由主義系)ではいろいろな根本的な課題(気候変動、格差、忙しさなど)が解決できないのは明確だけど、僕たちの意識のなかではまだまだお金の比重が大きくて、どうやってトランジションしたらいいかわからない人がほとんどなんじゃないかな? でもこう捉えてみると、お金は唯一流通している資本ではないことがわかるよね。
このマッピングを使えば、どんなにお金がない人でも「実はいろいろな資源がある」って視野を広げることができるんじゃないかな。「足りない」資本に意識を向けるよりは、身の回りにあるものに意識を向けたほうが可能性は広がってくる。
あと、例えば「果樹を買ったり、知り合いからヒヨコをいただいたりして生命資本を増やす」みたいに、それぞれの資本は別の資本に換えられるんだけど、自分が持っている大事な資本を、金融資本に安売りしていることって結構あるんじゃないかな?
例えば、自分の時間とか、心身の健康とか、次世代の未来とか。みんなと考えたいのは「いまの時代はどの資本を増やすのが一番必要か」とか、「自分はこれらの資本をどのくらいうまく使えているか」とか、「金融資本をどの資本に投資したら平和な社会になるか」ということ。
僕の例でいうと、日本に帰ってきた初めの頃は、東京で生活するために「とにかくお金を何とかしないと」っていうマインドになって、これまで学んできたパーマカルチャーの知的資本と経験資本を金融資本に換えることをずっと考えていた(しかも瞑想合宿中に! )。
でもそれだと本当に目指している世界へのシフトにならないと思って、実験的にドネーション(寄付)制にしたんだよね。そうしたら、社会資本や精神的資本がどんどん集まってきたんだ。
東京で会場をタダで貸してもらえたり、マネージャーがふたりも現れたり、さまざまなプロジェクトや生活を支えてくれる人と出会ったり。お金で手に入れることが当たり前なものが、ほかの「通貨」で循環し始めたんだ。
いま僕が専念している「パーマカルチャーと平和道場」も、築約150年の古民家という物理資本や、誰かが何年も前に植えていたミカンの木という生命資本がすでにあって、それらが何人もの暮らしを養っている。道場ではいま、生命資本(ガーデン、果樹、動植物の居場所)をどんどん増やしながら、学びの場にして人を集めて、社会資本や知的資本、経験資本に全力で「投資」している。
結局、資本主義のシステムって、生態系という生命資本システムが安定していないと成り立たないんだよね。いくらお金を持っていても、食べものがなくなったら、意味ないじゃん。お金は食べられない!(笑)
それにいまの資本主義って、バブル崩壊とかリーマンショックとか震災とかコロナ禍とか、そんな大きな衝撃に弱いんだ。「これはヤバイ」って気づく人が増えても、システムの変化への抵抗力が強すぎて、いまだ誰にも止められない。「崩れるまで進むしかない」みたいな状況に僕たちはいる。
安心して次の世界のシステムがつくれるのは、金融資本システムがつぶれてもちゃんと食料を得られる、生命資本へのアクセスがある人だと僕は思う。
新型コロナウイルスも大変だけど、これからはもっとハイインパクトな自然災害と大不況が起こる予感がする。そう考えたとき、“9つの資本”のマッピングは、僕らがこれからどういう未来を創造していけばいいかを考えるための、効果的なツールになると思うんだ。
もう一度言うけど、世の中は、お金だけじゃない。みんなも自分の資本の配分を見直して、自分の“豊かな経済”のストーリーを編集しよう!
(編集: 岡澤浩太郎/イラスト: Elie Tanabe)
(編集協力: スズキコウタ)
– INFORMATION –
いかしあうデザインカレッジは、この連載でフィーチャーしているソーヤー海さんとgreenz.jp編集長鈴木菜央が2021年3月にはじめた「”関係性”を通じた地球一個分の暮らしと社会のつくりかた」を学ぶオンラインコミュニティ/学びの場です。不明確さと迷いに満ちた時代で、新しい時代の生き方を模索したい人、自分も家族も地域も地球も豊かになれる暮らし方、仕事の仕方、社会のつくり方を学びたい人はぜひご参加ください!!
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