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大手スーパーの一角にできた「闇市」で狼煙を上げた「規格外農家」たちの反乱!「Black Supermarket」

スーパーマーケットを訪れてまず目に入るのは、色とりどりの野菜や果物。新型コロナウイルスによるさまざまな懸念がある中で物を運んでくれる人たちやお店に立ってくれる人たちには本当に頭が下がります。

「さて、どれを買おうかな」

目の前に並ぶ野菜や果物を見比べてみると、どの作物もそれぞれ、大きさや色、形に大きな差はありません。それは、流通する農作物に「規格」があるからです。規格から外れてしまった農作物たちは、出荷を待たずに廃棄されることも…。

農作物の規格によるフードロス問題になっているのは日本だけではありません。ヨーロッパにはGAP(Good Agriculture Practice)という厳しい規格があり、小売業協会に加盟している小売店ではこの規格に合った農作物を店頭に並べる決まりになっています。

GAPの規格に合うのは、カタログに記載された特定の品種で、適正な化学肥料と化学農薬を使用した慣行農業による農作物。その結果、ヨーロッパではなんと97%もの農作物が「違法」扱いになっていたのです。

さまざまな地域で昔から育てられ、農家の手で守られてきた種の多様性を損なっていいのだろうか。農業の未来を限られた巨大バイオ企業に委ねてしまっていいのだろうか…。

画一的な農作物の流通に一石を投じるべく、フランスのスーパーマーケットチェーン「カルフール(Carrefour)」が、ちょっとドキッとするアクションを決行しました。それは、「闇市」。

白を基調としたいつもの明るいスーパーの店頭。その一角が、ある日突然、異様な暗さに包まれることに。

黒い陳列棚に並ぶのは、それぞれユニークな形をした野菜や果物、そしてシリアルたち。そして、まるで標本のようにクールにディスプレイされているのは、農家が自ら採取した伝統的な品種の種。そして、アンチヒーローのように不敵な笑みを浮かべる農家の人たちのポスター。

「闇市」の店員は、スーパーを訪れるお客さんに「違法」な野菜や果物、シリアルの味見を促しながら、そのおいしさと伝統的な農業を守る意義を伝えました。そして、規格を変える署名の呼びかけも。

この取り組みは多くの主要なテレビニュースやラジオショー、新聞で取り上げられ、著名なシェフやジャーナリスト、そして農業組合の人びとが規格の改訂を主張するムーブメントに。あっという間に83,000を超える署名が集まりました。その勢いはついにEU政府を動かし、在来種の流通が解禁されることに。

粘り強く伝統的な農法と種を守り続けてきた農家と、食文化を守っていきたいと願うスーパー、そして農作物の多様性に価値を見出した消費者がつながり、つくり出したうねりが山を動かしたのです。

「ただ買う」から敏感になっていく

人類はこれまで、地球上の資源を元手に文明を発展させ続けてきました。しかし、今私たちを悩ませている新型コロナウイルスをめぐる問題は、自然の摂理は未だ人類の理解が及ばないものであることを突き付けているように思います。

今回ご紹介したカルフールの事例からは、流通の都合で画一的に決められた企画を、流通の主要なプレイヤーである大手スーパーがひっくり返そうとしたという気概を感じ、勇気づけられました。

しかし考えてみると、そもそもスーパーも自然の恵みを資本として利益を上げています。農業の担い手である農家を支え、作物の多様性と持続可能性を守ることは、長期的にみて合理的なことなのかもしれません。

日本では昨年、民間企業の種子生産を促すために「種子法」が廃止されました。また、今国会では見送られたものの、植物の新品種を育成する権利の占有を定める「種苗法改正」が進められています。食の安全のために、消費者もただ買うだけでなく、こうした動きに敏感になっていく必要があるのではないでしょうか。

人間と自然が、もっと幸せな「いかしあうつながり」を築くには…。この事例、そして新型コロナウイルスからは、そんな問いを投げかけられているように思いました。

(編集: スズキコウタ)

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