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たったひとつで樹木275本分の効果! ロンドンのグラスハウス通りに突然現れたベンチ型の空気清浄機「CityTree」

タピオカドリンクをテイクアウトし、それを飲みながらショッピングモールを散策。ちょっと歩き疲れて、ベンチでひと休み。そんな時間を過ごしたことはありませんか。

一般的なベンチでも休めればOKですが、今回ご紹介するのは私たちのちょっとした疲れを癒やしてくれると同時に、周囲の環境浄化にも役立つというものなんです!

2018年3月、ロンドンのPiccadilly Circus Station(ピカデリー・サーカス駅)から歩いて2分、Glasshouse Street(グラスハウス・ストリート)に背の高いベンチが設置されました。

高い背は自然の力を利用した空気清浄機。有害な粒子状物質と二酸化窒素を空気から取り除いてくれます。その能力は、1台で樹木275本分。繁華街である、ピカデリーサーカスに275本も木を植えるスペースを考えると、場所を選ばない優れものです。

ロンドンに設置されたこのベンチは、ドイツの企業「Green City Solutions(グリーン・シティ・ソリューションズ)」によって開発された「CityTree」という製品。2017年12月の時点で10都市以上に30台以上設置しており、成功を収めています。

「CityTree」は高さ4メートル、幅3メートル、奥行き2メートル。街中のオブジェクトとしては大きいかもしれませんが、街の風景にマッチしており、違和感は覚えません。

ベンチの背に当たる高い壁の内側にはコケが培養されており、コケは微粒子や二酸化窒素などの大気汚染物質をろ過して吸収してくれます。

しかし、大気汚染が最大の課題である都市部では、都合よく雨が降るとは限らないし、適度な日陰があるわけでもないので、コケはほとんど生き残れません。その点、壁の表面には適度に光を遮るよう様々な種類の植物が張り巡らされています。しかも、「CityTree」はインターネットにつながっており、コケの状態は自動で管理されています。

では、水はどうしているのでしょうか。水は雨水を貯める仕組みになっていて、内蔵された灌漑システムにより自動的に給水されています。動力はソーラーパネルにより発電されており、人の手はほとんどかかりません。

「CityTree」の役割は空気清浄機だけではありません。壁の表面に取り付けられた植物の葉から水分が出るために周囲の温度が少し下がります。水分(液体)が気体に変わる際に周囲から熱を奪うからです。その上、水を蒸発させる時に、植物は二酸化炭素を吸収します。つまり、都市部にたまりがちな熱を下げる効果もあるし、温暖化の原因になっている二酸化炭素も減らす効果もあるのです。

ロンドンに「CityTree」を設置した「The Crown Estate」の責任者であるJames Cooksey(ジェームズ・クックシー、以下、ジェームズさん)

ロンドンの中心部に土地を所有するひとりとして、ロンドンに関わる全ての人にとって素晴らしい場所であるよう空気の質を改善する役目を果たしたいのです。簡単な解決策はありません。だから、建物から出される二酸化炭素を減らしたり、車の数を減したりするのと同時に、「CityTree」という新しい技術を試し、そこから学びたいと思っています。

と話します。

ロンドンに突如現れた大きなベンチ。それは最新技術を使って、毎日使う身近なものに環境問題を改善する役割を持たせた作品でした。ジェームズさんが言うように、いろいろな角度からアプローチしたい環境問題。この最先端の空気清浄ベンチ、みなさんならどこに設置してみますか?

[via Yup That Exists, The Crown Estate, Green City Solutions, CNN, 林野庁, ianVisits, dezeen]

(Text: 阿部哲也)