これまでgreenz.jpでも度々紹介してきた「フューチャーセッションズ」。
「すべての人がセクターの壁を超えて、よりよい未来を創れるようにする。そのための革新的な方法論とサービスを生み出し続ける」ことをミッションに掲げている会社です。対話の手法「フューチャーセッション」を通して、企業、行政、NPOの領域を横断してステークホルダーを招き入れ、イノベーションを起こす取り組みをしています。
今日は、そんな「フューチャーセッションズ」の仲間の募集です。今回募集している「ソーシャルビジネスプロデューサー」は、単にファシリテーションを行うだけでなく、クライアントの課題を見つけ、フューチャーセッションという手法を通じてステークホルダーを招き入れながらその解決に伴走するのが役割。
そんな、いわば「未来づくりの専門家」である「フューチャーセッションズ」のソーシャルビジネスプロデューサーとは、一体どんな存在なのか。詳細を聞きに、オフィスを訪ねました。
フューチャーセッションを通じて、
新規事業の企画・実現をプロデュース
「フューチャーセッションズ」は、未来のために何か新しいことをしたいという企業や行政の方々に対して、フューチャーセッションを通じてその未来の実現に寄り添っています。
フューチャーセッションとは、対話を通して、ステークホルダー同士が未来に向けての「新たな関係性」と「新たなアイデア」をつくり出し、実現したい未来に向けて協力してアクションできる状況を生み出すことで、イノベーションを創出する場です。現状のステークホルダーに加えて“未来のステークホルダー”も招き入れることで、創造的な関係性を生み出す点に大きな特徴があります。これまでに、企業の課題解決やまちづくりの領域で広く実践されてきました。
「フューチャーセッションズ」はこの対話の手法を通じて、2012年6月の設立以来、企業や地域の課題解決を支援し続けています。
そんな「フューチャーセッションズ」のソーシャルビジネスプロデューサーとは、どのような仕事なのか、創設時からのメンバーである有福英幸さんに伺いました。
有福さん ソーシャルビジネスプロデューサーは、クライアントの新規事業を社会課題解決の視点で企画・実現をプロデュースする仕事です。ビジネスの知識も、ソーシャルの知識も必要な、難しくも、やりがいのある楽しい仕事だと思っています。
企業は自分たちの利益を追求しながら世の中にいいものを出していこうとしている。行政は地域をよくしていこうと活動している。NPOは社会にいいことをしようとしている。でも、それぞれがバラバラにやっていると部分最適にとどまってしまい、効率的に社会が改善されません。
現代は、一社とか一地域だけで何かを解決することは難しい世の中になっているので、セクターを横断させて全体最適の解決が求められます。そこで、フューチャーセッションを通じてセクターをまたいだ関係性をつくり、課題の解決につなげるのがソーシャルビジネスプロデューサーの役割です。
実際のプロジェクトに沿って、もう少し具体的にイメージしてみましょう。同社でマネージャーを務める筧 大日朗さんと最上元樹さんにもお話を伺いました。
筧さん たとえば「助け合いラボ」というプロジェクトでは、クライアントはある自動車メーカーさんでした。超高齢社会を迎え、自動車を手放す人が増える。行政の税収入も落ちていく。そうした中で市民同士の助け合いはますます必要になっていく。市民同士の助け合いを促進するためには何かしらの場が必要で、ということは何かしらの場への移動するための手段が必要になっていく。では助け合いを促進するようなモビリティー(移動手段)ってなんなんだろう?
これらのことを問いとして、調布市、高松市、鎌倉市と連携しながら、それぞれの地域のNPOの方々や行政の方など40~50人でセッションを重ね、新しいモビリティーを生み出すために大切にすべき原則や、どのような助け合いが必要なのかをイメージし、そのイメージを実現する企画を提案しました。
このプロジェクトに「フューチャーセッションズ」はどのように関わっていたのでしょうか?
筧さん 企業の中で何かしらのテーマがあります。そのテーマの粒度は企業やケースによって千差万別なんですが、この自動車メーカーさんの場合は「助け合い社会」というところまでは仮説として持っていて、じゃあ「助け合い社会」ってそもそもどういうものが理想で、どのようなモビリティーが求められるのかということを市民の人たちと探りたい、というご依頼でした。
そこで、どんな問いを立てて、どのような人たちとどのような対話の場を繰り返していくことで答えに近づくのかを企業と一緒に考え、実際のフューチャーセッションをくみたてて、行政とのコーディネート、参加してもらう人を招き入れるということを行いました。
具体的には各地域2回×3地域で、計6回。そのほかに各地域で地域の高齢者の方々へのヒアリングセッションなども行ったので、計15回くらいフューチャーセッションを行いました。それを踏まえて、企業の中で詰めていく場も3〜4回実施。社内の人たちの大勢での対話の場も、コアメンバーでの小人数対話も設定しました。これらの場でファシリテーションをし、出てきたアウトプットの中から、新しいコンセプトを生みだすことを支援しました。
これは比較的テーマがある程度見えているケースで、企業によっては漠然となにか新規事業を生み出したいという相談もあり、そういうケースではどういう領域で問いやテーマを設定するかというところから、支援することもあるそうです。
筧さん 僕らは、まず未来の予想図である「未来シナリオ」を描いて、起こりうる課題を発見・設定し、その課題に対してセッションを繰り返して、解決するためのアイデアを生み出すというプロジェクトが多いです。案件によっては商品やサービスの試作をつくる段階まで伴走することもあります。
「助け合いラボ」の場合は、コンセプトを生み出すところまででしたが、実際に商品やサービスを生み出すプロジェクトもあります。
例えばTポイント・ジャパンと「漁業をカッコよく」をコンセプトに集まった東北の若手漁師集団「フィッシャーマンジャパン」をつなげたフューチャーセッションでは、実際に新しい商品が開発されました。
富士通とのプロジェクトでは墨田区と協力して、スーパーコンピューターがどう未来に貢献できるのかを考えるために、墨田区を舞台にした「西暦2037.5年×まち」というテーマのSF小説を製作しました。
未来に都市の暮らしがどう変わるかという問いを立てて、社内はもちろん、地域の方も参加したフューチャーセッションを行って、この小説ができるまでを伴走。この小説は富士通の方がほかの企業の方と話をするときに読んでもらって、そこからまた新しい動きが生まれる、ということにもつながっているそうです。
向いているのは、新しいビジネスづくりの苦労に寄り添える人
前職ではもともとソフトウェアプログラマーをしていたという筧さん。その後、経営コンサルティングに携わり、そこで「フューチャーセッションズ」代表の野村恭彦さんと出会い、ともに会社を立ち上げたそう。
そんな筧さんに、ソーシャルビジネスプロデューサーにはどんな人が向いているのか伺いました。
筧さん 僕の経歴で役立っているのは、集合知を可視化する力ですかね。いろんな人たちの話から「要はこういうことだ」「こういうことがありえるのではなかろうか」というような仮説をつくる力や、構想をつくり出す力は必要だと思います。
同じくマネージャーの最上さんにも聞いてみましょう。最上さんは、メーカーで商品開発やマーケティングの仕事などを経験してきました。
最上さん 向いているのは、新しいビジネスをつくったことがある人ですかね。新しいビジネスをつくるという経験を繰り返していくと、「自分はもしかして価値のないサービスをつくっているんじゃないかな」っていう心理が必ず出てくるんです。ソーシャルビジネスプロデューサーは、そんな新しいビジネスをつくろうとする人たちを下支えする仕事なので、その苦労を知っている人と働きたいなという思いはあります。
さらに、「フューチャーセッションズ」での仕事を楽しめる人には、ふたつ特徴があると教えてくれました。
最上さん ひとつは相手が考えていることよりも面白いことを提案するということ。今まで考えたことのないような提案をして相手をわっと驚かせたり、新しい発見を促すことが好きな人にとっては楽しいと思う。
もうひとつは、人が変わっていく様子を見るのが楽しいこと。クライアントさんと数ヶ月はプロジェクトでご一緒するので、相手が変わっていく瞬間に立ち会えることが多々あります。
たとえば、ヒラエルキーが強い会社と仕事をしたことがあって、最初のセッションでは男性が20人くらい席に座って全員腕を組んで話を聞いているんです(笑) そこから、それぞれ自分の話や雑談をしてもらって、未来や新しいことを考えていくプロセスを経るうちに、最終的にみんなの腕組みが溶けていく。自分から立って「こういうことやろうぜ」って言って動き始めたり。
たった3ヶ月、3回のセッションの間にも変化が見える。そうして変わった人たちって、社内に戻ったらより多くの人たちを集めて、会社を変革させていこうと動いていたりします。別に僕らの影響だけでその人が変化したんじゃなくて、たまたまきっかけをつくっただけなんですけど、そういう変化を見て「楽しい」とか、「すごいなこの人!」って思える人は、やりがいを感じると思いますね。
ファシリテーションだけでなく、アイデアの実装まで参加する
また、二人が口を揃えて強調するのは、ソーシャルビジネスプロデューサーは「ファシリテーション」だけではないということ。
筧さん ファシリテーターは1回1回の対話の場をファシリテーションしますが、ソーシャルビジネスプロデューサーの仕事は最初の問いを立てるところから、そこで生まれた集合知を使ってなにか新しいアクションを起こすところまでクライアントに伴走します。
もちろん対話をファシリテーションする場面はたくさんあるから、ファシリテーションが好きであることは大切です。ただ「ファシリテーションして、いろんな気づきを得られて楽しかった」で終わらせるのではなく、その先も見据えて行動につなげられる人を求めています。
その対話からどんなコンセプトが生まれているのかを整理して、分析して、構想を練る。そういう意味では、いわゆるコンサルティング能力みたいなものが重要視されるところはあると思います。
例えばグリーンズがどういう風に新規事業をつくったらいいかということについて、対話をもとに提案ができるかどうか。それは通常ファシリテーターがやる仕事ではないですが、ソーシャルビジネスプロデューサーはそこまでやるイメージだとのこと。
筧さん 対話のファシリテーターは対話を促す黒子役に徹することもありますが、ソーシャルビジネスプロデューサーは、もう少し働きかけるイメージです。もちろんみんなの意見もすごく大事にするけれども、我々の意見も入れます。押し付けるということはないけど、「こっちもこういう社会をつくりたいんだ!」という思いを自分でも持っていて、「そこで出てきたアイデアは俺もやるよ!」と参加することすら厭わないのがソーシャルビジネスプロデューサーです。
さらには、実際にこういう方向でアクションしていけばいいという方向性が見えたときに、そのアクションが具現化されてきちんと社会に実装されるまでをやりきれることが求められるそう。
例えばコンセプトに基づいてプロトタイプをつくろうというときに、お客さんの社内のリソースだけで実現できない場合は、外部リソースを引っ張ってくるようなプロデュースも必要です。場合によっては事業計画をつくり、さらにそれが商品化、生産ラインにのるところまでを見届ける。そういう意味では、ビジネスを一通り回せる人を必要としているそうです。
創業以来、一人も辞めていない理由とは?
ここからは若手代表の上井雄太さんにも参加してもらいましょう。若手といっても、上井さんが参画したのは5年前。なんと「フューチャーセッションズ」では、創業から7年間で辞めた人がひとりもいないのです。その理由は何でしょう?
上井さん 個人的には、好きなことをやらせてもらっている感じはありますね。僕はそもそもスポーツが好きで、スポーツをテーマにしたプロジェクトに携わっています。
最初はスポーツ業界の人たちとのセッションをお金をもらわずに開いていたら、「ボランティアもいいけど、それで会社に貢献しているの?」と社内で言われてしまいました。でも、今はそれを会社のプロジェクトにできて、スポーツを介して僕らの会社のミッションでもあるセクター横断、ソーシャルとビジネスをつなげるところまで踏み込んでできていますね。
あのとき「お前だめだろ!」って言われてたら凹んでやめるか、他のところで個人的にやっていただろうなと。 フューチャーセッションズ には、自ら関心のあるテーマでお客さんを見つけてビジネスにしていくのを応援してくれる雰囲気はあるんじゃないかと思います。
有福さん 個人がやりたい「マイプロジェクト」には、個人的な応援はあるかもしれないけれど、会社として予算をつけるという感じではないかもね。やりたいのであれば、自分でお客さんを見つける必要がある。
筧さん マイプロ的なものを阻害することはないよね。上井のスポーツなんてのは、もともとマイプロに近かったのが、今は会社として、お客さんがついているプロジェクトになっていて、よりやりやすくなっている。
上井さん お客さんがつくまではしんどかったけどね。マイプロをやりたいと言うだけじゃなくて、ちゃんと収益をあげて仕事にするところまで求められています。逆に言えば、お客さんがついてプロジェクト化できれば、なんでもできる環境です。
フューチャーセッションって、場をつくっている自分が一番恩恵を受けているかなと思うことがあります。「僕はこういう未来をつくりたい」と言うと、共感してくれる人の知見やネットワークが集まるので、自分を中心にいろんな掛け算ができていくんです。勝手に自分が高まっていくんですよ、自分以上の力で。そうすると新しいステージとか景色が見える。逆に何も意思がなく、みんながやりたいことを後ろから支えますよ、っていうだけだとちょっと働きにくくなっちゃうかもしれないな。
セルフマネジメントに任せた働き方
ここまで読んだ方はお気づきかもしれませんが、「フューチャーセッションズ」はメンバーそれぞれがかなり自立してプロジェクトを回しています。自立しているのは、働き方も同じなよう。「ずばり、働きやすいですか?」と尋ねると、次のような答えが返ってきました。
上井さん 柔軟な働き方をさせてもらえるので働きやすいです。オフィスに絶対に行かなきゃいけないことはない。いま1歳半の子どもがいるんですけど、やっぱり体調くずしたりしてよく保育園を休むんですよ。そういうときは家で抱っこしながらスカイプでミーティングしています。社内もですけど、お客さんともオンラインでそういう時がありますね。
有福さん ライフステージに合わせた柔軟な働き方ができていますね。それに、お客さんの理解もあるかもしれないな。
上井さん お客さんに怒られたことあります。子どもが生まれたときに、お客さんに「育休取ったの?」って聞かれて、「取ってません」って言ったら「なんで? ちゃんと取らないのおかしいでしょ!」って。そういう風に言われるんだって驚きました。お客さんが同じ方向を向いているというのは、とても幸せなこと。ありがたいです。
筧さん お客さんも未来思考だからね。未来に向けてどうしようかなって、お互いを尊重して、ワクワクした空気の中で仕事ができるのはいいよね。
筧さん 働く時間も、一応コアタイム(10時~15時)はあるけど、僕は明け方から仕事をスタートして午後3時には終えて映画を観に行く時もありました。
上井さん あった、あった。夜中に資料送っておけば、筧さんが早朝に見てコメント返してくれていて、まるで時差のある海外の人と仕事としているような感覚でした(笑)
夜遅くまでオフィスにいるってことがあまりなくて、打ち合わせにでたらそのまま帰って、夜ご飯食べてまた少し家で働くこともあります。ただ、仕事の終わりがいつなのかがはっきりしないところはありますね。
筧さん 僕は基本セルフマネジメントに任せておけばいいと思っているんですけど、真面目な人が多いので、時間的に働きすぎちゃってないかな、と心配にはなります。リモートでもできちゃう仕事だから。だから僕は率先して労働時間を短くしようとしていますね。
有福さん 確かに、自由度が高い分、セルフマネジメント能力も求められますね。
フューチャーセッションズの課題とは?
さて、これまでポジティブな側面をお伝えしてきましたが、「フューチャーセッションズ」にも課題はあるよう。この課題がまさに、いま新しいメンバーが求められている理由でもあります。
有福さん 今のメンバーは30代~50代で、みんな大企業出身。女性もひとりしかいないので、多様性がいまひとつです。化粧品のプロジェクトや暮らしのプロジェクトもあるのに、思考が男性的に偏ってしまうのも少し気になっています。「未来」って言いながら、いつまでもおじさんたちばかりで未来の話をしていたくないなと(笑)
それから、会社の仕組みもですし、フューチャーセッションという手法も次の時代にちゃんとあったものにしたい。明らかに若い下の世代のコミュニケーションスタイルが違ってきているなかで、リアルに集まって対話することももちろん大事なのだけど、そうじゃないやり方もあると思うんですよね。
筧さん 個人的には、新しいアイデアが生まれる驚きが減ってきているなと。いい意味では知見が溜まったとも言えるけど、「あの案件はあのやり方ね。その案件はそっちのやり方ね」と、過去に自分で蓄積したノウハウや手法で動けちゃう。そこでどう新しい方法を生み出すかは会社にとっても大きな課題なんじゃないかな。だからいままでのやりかたの延長じゃないことにも挑戦できる人と働きたいですね。
上井さん 「フューチャーセッションズ」は、今はひとりのメインファシリテーターと数人のテーブルファシリテーターが場をつくる形で進めることが多いですけど、今後はひとりのファシリテーターがいて、全国に人工知能が搭載されたAIスピーカーを置いて、遠隔でセッションを進めることもできるんじゃないかなと考えています。
こんな風に、常識にとらわれない発想ができて、実現まで持っていける人がいまの会社の状況としては必要だそう。ソーシャルビジネスプロデューサーも、大きいビジョンを持っていたり、先の時代を先取りして実現したい人であれば、やりがいを持って働けるはずです。
ほしい未来を実現できる、ソーシャルビジネスプロデューサーという仕事
社内には、過去のフューチャーセッションの時に使われた付箋があちこちに貼られており、そこにはセッションに参加した人たちの未来のイメージや、湧き上がるような思いが、短い言葉で書かれていました。その様子からも、「フューチャーセッションズ」への信頼をうかがい知ることができます。
「フューチャーセッションズ」は、ほしい未来をつくるためのアイデアの実現へ向かって進む少数精鋭のチーム。単にコンサルタントとして提案をするだけではなく、ファシリテーターとして場を仕切るだけでもなく、利益追求だけが目的の商品を開発するだけでもない。自分も未来をつくる一員であるという揺るぎない自覚を持ち、つくりたい未来のために強い想いを持って行動している人たちの集団だと、取材を通して思いました。
ビジネスをつくる力やファシリテーション力、セルフマネジメント力そして未来をつくることへの情熱など、たくさんのものを求められるポジションですが、やればやるだけ世界が広がり、ほしい未来を実現できる仕事です。我こそは、という方ぜひ!
(Photo by Photo Office Wacca: Kouki Otsuka)