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生産地と消費者の距離を極限まで短く。カリフォルニア発、コンテナの利活用で生まれたハイテク農場「TerraFarms」

毎日食べている野菜や果物。
食卓をふと見渡すと、海外から輸入されたり、国内の遠方から運ばれてきた食材ばかりがたくさん並んでいるかもしれません。

できることならば、地元で獲れた新鮮な野菜や果物を毎日食べたい。そんな方に興味を持ってもらえそうなグッドアイデアをカリフォルニアに見つけました。その名は、「TerraFarms」。なんでも、農業の生産地と消費者の距離をぐんと近づけてくれるハイテク農業だというのです。

「TerraFarms」の一番のポイントは、これまで貨物の輸送に使っていたコンテナを農場に活用していること。どこでも容易に設置できるので、スーパーや市場のすぐ近く、あるいはレストラン街に置いて「FARM TO TABLE(畑からテーブルに)」を実現できます。

1つのコンテナで栽培ができる作物の量は、サッカーグラウンド1つ分。しかも、同じ広さで行う一般的な農業方法よりも、2倍も多く収穫できるというのだから驚きです。

長さはおよそ12m。建物でたとえると、3〜4階ぐらいの高さに相当。運送に時間をかける必要がなく、すぐに新鮮な野菜や果物を食べることができるのはとてもうれしいですね。

栽培できる種類も実に豊富。現在はレタスやケールなどの葉野菜、ミントやバジルなどのハーブ類まで! 今後はさらに増え、私たち日本人にはなじみ深い、わさびまで栽培できるようになるとか。もちろんすべて無農薬で栽培できます!

どうしてたくさんの野菜や果物を、コンテナの中だけで、しかも無農薬で栽培できるのでしょうか? それは「TerraFarms」が単なるコンテナ農場ではなく、最先端のIT技術を利用した「ハイテク水耕栽培農場」だからです。

まず、コンテナ内には農業で一番必要な土が一切なく、代わりに栄養分を含んだ水を使っています。しかもその水は循環利用する仕組みなので、従来の農業とくらべて97%もの水の節約を実現しているそう!

水は循環して再び使用されるので、1日およそ18L〜75Lほどしか消費しません。

コンテナの中には太陽の光は届きませんが、LEDライトがしっかりと設置されているので問題はありません。なので、外が雨であろうと嵐であろうと、野菜や果物はぐんぐん育ちます!

植物は赤や青の光をよく吸収するので、コンテナ内はピンクか紫色。

とはいえ、これだけテクノロジーが駆使されたコンテナ農場、初期投資に莫大な費用がかかるのでは? そう思う方は多いかもしれません。でも初めに必要なのは、コンテナとそれを置くための少しの場所だけ。従来の農場のように、広大な土地や農業機械を購入する必要がないので、初期費用を抑えることができます。

また、農場の運営についても、水の循環や栄養分、光などすべてをシステムが管理。野菜や果物の成長具合に合わせ調整してくれるので、人の手間や時間をたくさんかける必要は無し。このように労働・輸送コストをカットしつつ、効率的に365日栽培しているので、収穫される野菜や果物の値段が市場流通価格と同じぐらいまでに下げることができるんです。

緻密に野菜や果物の栄養の分析や成長具合も管理されています。

カリフォルニア州を拠点とする会社「Local Roots」が「TerraFarms」を生み出した背景には、アメリカで深刻な問題となっている、フードデザートという社会課題があります。

フードデザートとは、スーパーや食品を売っているお店が近くにはなく、簡単には新鮮な食品を買うことができない地域のこと。こういったエリアに住んでいる人たちは、ジャンクフードや冷凍食品に頼らざるをえなく、健康状態が必ずしも良好というわけではありません。

このアメリカの食品問題に対し、「Local Roots」のファウンダーのひとり、Eric Ellestadさんはこう述べます。

今、アメリカには3000万人もの人びとが、フードデザートに住んでいるんです。

フードデザートが生まれてしまうのは理由は単純で、企業が利益が出にくい地域にコストがかかる新鮮な作物をわざわざ運ばないことが原因です。ならば、どこでも配置できるような農場をつくり、それをフードデザートの地域に置くことができれば、この問題が解決できるのではないか? と考えたんです。

Eric Ellestadさん

食べものがあふれる便利な世の中。その裏には、フードデザートや、長距離を運送できるようにするために大量に使用されている農薬などの陰も存在しています。こういった問題を解決するには、「Local Roots」が描くように、生産者と消費者の距離が近い、グローバル社会以前のローカルに重きを置くあり方が重要な鍵かもしれません。

私たち自身が手を使って育てることも大事ですが、このようにテクノロジーの力を借りることで、世界どこでも質の豊かな食生活が実現できる日が近づくのではないでしょうか。

[via inhabitat, The Washington Post, Local Roots, Facebook, YouTube]

(Text: 川又彩華)
(編集: スズキコウタ)