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【求人あり】子どもの“ふるさと愛”を育てたい。岡山県・和気町の地域おこし協力隊が見つけた、地方創生のありかた

ここは晴れの国・岡山県。時代をさかのぼって江戸時代には、全国初の藩校や世界最古の庶民学校(私立学校)閑谷(しずたに)学校を開くなど、教育の面で先進的な取り組みが行われてきた土地柄です。

その旧閑谷学校のほど近く、岡山県の南東部に位置する和気町は、子どもの教育、とりわけ英語教育を主軸にしたまちおこしに取り組んでいます。(和気町の教育に主軸をおいたまちづくりについてはこちら

日本最初の私立学校、旧閑谷学校

「地域で子育て」といえば、豊かな自然環境のなかで子どもを育てるメリットを思い浮かべますが、「教育」となると、地域の過疎化と比例して、高い水準は望めなさそう…と考えてしまう人も少なくないのではないでしょうか。

そこで、和気町が地方創生の一手として考えたのが、子どもの教育に力を入れ、子育て世代が住みたいと思えるまちづくりです。

和気町内のすべての小中学校は、独自カリキュラムを導入できる文部科学省の教育課程特例校に指定。2017年度4月から「英語特区」と称し、英語教育を充実させます。これは自治体内のすべての小中学校が「英語特区」として認定をうけたのは岡山県内の市町村で初めてのことです。のんびりとした田舎町が国際社会を担う子どもたちを育てるまちになるのです。

そんな「英語特区」に先駆けて行われている施策のひとつが「町営の無料英語公営塾」(以下、「公営塾」)の開設です。和気町に住む小・中学生が通う公営塾は、地域おこし協力隊が中心になって運営しています。

都市部から移住して、3年間、地域に寄り添い、地方創生に取り組む地域おこし協力隊ですが、和気町にいる6名の地域おこし協力隊は、その全員が「教育」に携わります。

今回は、和気町地域おこし協力隊であり、公営塾運営の中心人物である中村和馬さんに「まちの未来は、子どもの教育にある」と、教育を軸にしたまちづくりを目指す、和気町の取り組みをお伝えします。

中村和馬(なかむら・かずま)
和気町地域おこし協力隊。千葉大学教育学部を卒業後、塾講師、IT企業勤務を経て2016年6月、初めて岡山県和気町を訪れる。滞在中、和気町公営塾のボランティアを経て、同年9月より地域おこし協力隊着任。現在は和気町公営塾の運営と講師、中学校の授業支援に携わる。

第一印象は「なにもない」山あいのまちで見つけたもの

東京の下町、葛飾区柴又で生まれ育った中村さんは社会人4年目の26歳。和気町にやってきたのは2016年6月のこと。中村さんの塾講師時代の友人で、和気町地域おこし協力隊に着任したばかりの友人に「遊びに来てみない?」と誘われたのがきっかけでした。

岡山へ移住する直前、英語学習のため海外へ行きました。教育に関わりたいという思いをずっと抱えていたなかで、近い将来、世界と教室がつながる日が来る気がしていて、英語を強化したいと考えていました。

和気町が「英語特区構想」をはじめとした教育に特化したまちづくりを進めていると訊き、興味を持った中村さん。半ば旅行気分で和気町を訪れます。

片鉄ロマン街道

岡山三大河川のひとつ、吉井川。和気町は里山に囲まれた山合いのまち。

第一印象は「なにもない」でした。でも、逆にそれが新鮮で。なにもないけれど、美しい里山や川、自然の風景がたくさんありました。こんな場所で地域ぐるみで学力向上を目指すなんてすごいなぁと。自分も力になれるかもしれないと考えて、しばらく和気町へ滞在してみようと思いました。

知らない土地への不安より好奇心が勝り、3ヶ月ほど滞在。その間、ボランティアスタッフとして公営塾を手伝います。

和気町の子どもたちと関わっていくうちに地域へ愛着が生まれ、すぐに和気町地域おこし協力隊に。初来訪からわずか3ヶ月のスピード移住を後押ししたのは、ずっと胸に秘めていた「教育に携わる」という挑戦でした。

地域のまなざしが反映された公営塾

和気町まちづくりの拠点「Enter Wake」は駅からすぐの好立地にある。

公営塾を開講しているのは、JR和気駅のすぐ目の前にある旧銀行跡地施設を利用したまちづくり拠点「ENTER WAKE(エンターワケ)」。公営塾の対象は小学生5、6年生と中学生で、和気町に住む子どもであれば誰でも無料で受講することができます。

講師は、地域おこし協力隊が5名、県内の大学生が13名、プラス外国人留学生が3名在籍。水曜日と土曜日の週2回開講し、時間帯で小学生と中学生に分かれ、英検対策、イングリッシュネイティブと話す英会話など、英語習熟度や目標別に応じてクラスがあります。

塾で使用する教材は、市販の教材とあわせて和気町の子どもたち用に講師が手づくりしています。子どもの様子を見ながら、特に小学生は遊びを取り入れて、英語を楽しめるような授業をしています。

子どもたちは笑顔で公営塾にやってくる。まるで遊び場へ来たように生き生きしているのが印象的。

外国人講師とコミュニケーションをする経験を重ねるメリットは大きいと感じています。地方は外国人と接する機会が極端に少ないですから。

英語は異文化コミュニケーションの学問です。僕らのように、生まれ育った地域が異なる人々が交わることも異文化コミュニケーションだと思っています。

子どもたちにとって「地域おこし協力隊」もよそ者という名の外国人。公営塾は、彼らを含めて「異文化コミュニケーション」なのです。

ネイティブスピーカーとして講師を勤める岡山大学に留学中のクリスさん。子どもたちとフレンドリーに接する。

そしてもうひとつ、一般的な教育現場と決定的に違うのは、先生と生徒の「世代間」の近さ。公営塾運営スタッフのほとんどが20代、講師も大学生が大多数です。子どもたちにとって、「先生」というよりも「先輩」に教えてもらっているという感覚が近いといいます。

世代が近いと感性も近い。友人のような気安さがあるけれど、持ち寄る知識は多様でグローバル。風通しのよい良質なコミュニケーションにこそ「英語を学ぶこと」の本質があるのです。

中学生には、英語の試験対策や受験英語をしっかり教えるのが主ですが、中学2年生で英検準2級に挑戦する子もいます。子どもが学びたいものを、すぐにアレンジして用意できるのは、地域おこし協力隊ならではですね。

そもそも、地域は教育も過疎化しているのでしょうか?
確かに生徒数は極端に減少傾向。学校の数が少なく、選択の余地はありません。

しかし、子どもの数が少ない分、地域は子どもを「宝」と呼び、親だけではなく地域全体で大切に育てます。和気町も人口1万5千人弱の小さなまちだからこそ、柔軟にまちづくりを考え、和気の子どもが全員通える無料の公営塾を開くことができたのです。むしろ、地域の教育は手厚く感じます。

和気町の子どもたちはとてもフレンドリーで、それだけで英語の第一段階をクリアしています。それは地方で英語教育をするメリットだと考えています。

また、僕が学習支援に行く中学校は全校生徒合わせて64人しかいないので、上下関係もなくみんな仲良しです。僕が通っていた東京の中学校は全校生徒が500人以上いたし、その中で先輩後輩の強い上下関係がありました。そこが全然違うと感じます。都会にはヒエラルキーがある気がします。

地域のまなざしで子どもを育てることの一環が、公営塾というかたちなのだと中村さんは続けます。

和気町にも民間の塾はあります。民間の塾は勉強に特化していますが、公営塾はある意味、ちょっと変わった場所、面白い場所だと思われているでしょう。なによりも子どもたちがリラックスできる居場所です。勉強をガツガツ頑張る子もいれば、自分のペースで英語に取り組む子もいる。そんな多様性のある場所にしたいと考えています。

地域の「教育」が弱いと感じるのは、わたしたちが偏差値偏重な日本の社会に翻弄されているだけなのかもしれません。未来に舵をきった地域の教育は、むしろ「人間力」を育てる上ではおすすめしたい環境なのです。

地域+教育=子どもとまちの未来

和気町に移住して約4ヶ月。中村さん自身にはどんな変化があったのでしょう。

教育と地域を組み合わせる視点が、ここにくるまで全然なかったので、来てはじめて「こういう教育のあり方があるんだ」と思い知りました。公営塾を通して、地域とつながることができて嬉しいです。

また、和気町は教育に興味を持ってやってくる地域おこし協力隊や移住者が多いので、それぞれの教育の知識が和気町に集まるのも面白いと感じています。新しい教育現場にいることが楽しいんです。

取材に伺った日のプロジェクター。子どもたちが「無理じゃろ!」と岡山弁でツッコミ。

教育のかたちはひとつではないことを地域に移住して実感したという中村さん。偏差値偏重だけではない教育を和気町で目の当たりにしています。

地域に育つ子どもたちは、「地元に残るのか」、「都市部に出て働くのか」、「一度は出てもUターンして帰ってくるのか」、「まったく別の場所で生きるのか」。など、自分の暮らす場所を選択する日が来ます。

今は英語を教えていますが、もっと地域に愛着を持ってもらえるような教育ができたらいいですね。どんな教育が子どもたちの地域愛を育むのかは難しいところです。僕も和気町で暮らしていく中で考えていきたいです。

また、みんな喜んで公営塾に来てくれるのですが、公営塾は中学3年生までで、高校生を教えていません。だから中学3年生は、今年でおしまいです。

中学校を卒業したら、ほとんどが町外の高校へ進学するのですが、和気町内唯一の岡山県立和気閑谷高校への進学率は約3割です。町外に進学しまうと町との関係性がどんどん薄れてしまう。それは寂しいし「惜しい」気がするんです。

でも、町外に電車で通学する時、この塾は通り道なので自習するだけでも寄ってほしい。高校生とまちとの接点の役割を担いたい。できれば、講師として教えてもらいたい。公営塾とつながっていることで地域と結びついている、そんな絆のようなものでありたいです。

教育とは、学力を身につけるだけではなく、その先に無限に広がる世界を垣間みせることも必要で、それは社会の役割です。英語を学ぶ向こう側にある大切なことも、公営塾で教えたいと中村さんは言います。

英語教育が「無料」で受けられると聞くと、“無料”という言葉に惑わされてしまいそうですが、公営塾の本当のメリットは、子どもたちに対する地域のまなざしが反映されている塾であること。そして、未来を進む子どもたちが、中村さんをはじめ、地元で生きることを選択した20代に触れ合うことは、自分にとって近い将来が垣間見え、和気町という地域に暮らす子どもたちの“ふるさと愛”を育む場にもなりつつあるのです。

子どもに投資できるまちは、未来があるまち。
そんなまちに住みたいと思うのは、私だけではないはずです。

そして今、和気町では英語教育に携わる地域おこし協力隊を募集しています。「地域社会にコミットして自分の英語力を生かしたい」「子どもの英語教育に興味がある」という人は、和気町に足を運んでみてはいかがでしょう。

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– INFORMATION –

和気町での英語教育に携わる地域おこし協力隊に参加しませんか?

和気町では、都市地域の意欲あふれる人材を積極的に受け入れることにより、町が活気にあふれ元気になる施策を推進するとともに、町への移住・定住を図り、利便性が高く暮らしやすいまちづくりを実現していくため、「地域おこし協力隊員」を募集します。

募集対象、募集人員、勤務条件など詳しくは募集要項をご覧ください。

http://www.town.wake.okayama.jp/information/detail.php?id_information=442