わたしもあなたも、海もハッピー!(Photo by: Ed Gregory)
じめじめした梅雨の季節が終わり、「いよいよこれから夏休み!」と心が弾んでいる方は多いのではないでしょうか?
きっと読者のみなさんも、今年の夏休みにどこかへ旅行へ行こうと予定をたてているかと思いますが、海でも山でも、楽しい時間が終わった後にきちんと掃除をして、元の姿に戻すのが大人のマナーですよね。
そんななか、昨今問題になっているのが海洋汚染。環境省は、その深刻さが毎年増していると指摘しており、海洋汚染が進むと海の生態系異常や漁業への悪影響が発生し、やがて私たちの生活そのものに大きなダメージを与える危険性もあるといいます。
「海で泳ぐことを楽しみたい! でもこれ以上、海の汚染が進むことはなんとか食い止めたい」。今回は、そんな思いで開発されたビキニ「Sponge Suit」をご紹介します。
攻めているのは見た目だけではなく……
泳ぎながら海を綺麗にできるビキニとして開発された、「Sponge Suit」。その仕組みはとってもシンプルで、大きく分けて2つの構造から成り立っています。
1つは、3Dプリンタでつくられた、ビキニの土台となる骨組み。弾力性のあるプラスチック素材によってできています。そしてもうひとつは「スポンジ」と呼ばれる、「Sponge Suit」最大の特徴となる新素材。こちらは、海の汚れをろ過するフィルターの役割を果たします。
この「スポンジ」は、なんと「砂糖」からつくられているのです! 液状の砂糖を別の素材と混ぜ合わせて加熱し、デザイン通りの型に流し込むことで、水着ができあがります。
原料が「砂糖」だから、1gあたりにかかるコストは15セント(1ドル=106円とすると、約16円)。大量に生産すればもっとコストは下がります。
とはいえ、「水着に汚れがくっつくなんて…」と、ちょっと心配になりますよね。いえいえ大丈夫! 「スポンジ」の働きは大きなゴミをくっつけるのではなく、肉眼では見えないくらいの小さな汚れをキャッチすること。1000℃程度の熱で加熱しない限り、汚れが落ちてくることもないのだとか。
そして、着心地や動きやすさも魅力のポイント。とても弾力性がある素材なので、身体にもフィットし、着心地はまるで「裸の感覚」なのだそう。現行のデザインで、重さはわずか54g、薄さはわずか2mmと、問題なし。そしてもちろん「スポンジ」を洗濯することも可能だといいます。
この「Sponge Suit」は、まだコンセプトが発表されているのみですが、Reshape15というウェアラブル技術のコンクールで2015年に1位をとり、将来の商品化も現実味を帯びてきているそう。商品化が実現すれば、この素材をさらに広めていき、今後は海にやさしいランドリーづくりまで広めていく計画もあるのだとか。
「Sponge Suit」を開発した、アメリカを拠点とする4人のチームメンバーは、開発のきっかけと目指す未来について、こう話します。
身につけられて、しかも洗える技術というのは、まだ発展途上の分野です。だからこそ、再利用可能でコスト面からみても現実的であるというこの技術に、非常に好奇心をそそられました。
私たちは、誰もがスポーツや夏のバカンスを通じて、海をキレイにすることに貢献できる未来を目指しています。
こんなサーフィンになってしまわないように…(Photo by:YouTube)
海で遊び、ただ「楽しかった!」と終わらせるのではなく、自分も思い切り楽しみながら、さらに海まで綺麗にしてしまう、この「Sponge Suit」。
見た目のデザインだけではなく、「どれだけ海をキレイにできるか?」という視点で水着を選ぶ。そんな時代もそう遠くないのかもしれません。
みなさんは、この「Sponge Suit」、着てみたいですか?
(Text: 吉原海)