現在のテーマは「子ども」と「教育」。「認定NPO法人カタリバ」と「チャンス・フォー・チルドレン」がチャレンジに取り組んでいます。
社会課題に対してクリエイティブな方法でチャレンジする「ソーシャルデザイン」の取り組み、みなさんはどのようなものが思い浮かびますか? 日ごろからgreenz.jpを読んでいる方ならば、印象に残っているプロジェクトを数多く挙げられるかもしれません。
でも一方で、実際に自分も参加してみたり、何らかの形でサポートしたプロジェクトはあまりない、という方も多いのではないでしょうか。
取り組みのストーリーを知ることはもちろんその第一歩ですが、そこから具体的な応援へと踏み出すのはなかなかスムーズにはいかないもの。もしそのスキマを埋めるようなしくみがあれば、ソーシャルデザインをめぐる環境はまた大きく変わってくるかもしれませんよね。
今回は、そんなしくみづくりのヒントになるかもしれないサービス「Social Design+」をご紹介します。
集まった応援の数に応じて支援金を提供するプログラム
「Social Design+」は、関西をより元気にすることを目指して大阪ガスとグリーンズが企画した、クラウドファンディング型の活動支援プログラムです。
まず、関西エリアで社会課題にチャレンジするプロジェクトを毎月ピックアップし、大阪ガスの会員サイト「マイ大阪ガス」上で紹介。サイト利用で貯まったポイント「さすガッス」を寄付してもらう形で会員の方々から応援を募り、募集期間中に集まったサポーターの人数に応じて大阪ガスが活動の支援金を決定。それを当該の団体に提供するという流れになっています。
支援金額は、サポーターが1000人以上の場合10万円、同3000人以上の場合30万円、そして同5000人以上の場合50万円と3段階で決まるしくみです。
実はこのプログラム、2012年からgreenz.jpが大阪ガスをパートナーに迎えて展開してきた連載企画「マイプロSHOWCASE 関西編」がきっかけで生まれたもの。
これまで80本以上の記事を掲載してきた本連載の取材先を、もっと広報以外にサポートできる機会をつくりたい。そんなグリーンズと大阪ガスの思いががっつりはまったことで生まれた、関西のソーシャルデザイナーをエンパワーするプログラムなのです!
どうすれば応援できるの?
応援に必要なのは、1プロジェクトにつき1回500ポイント。支援成立後には、そのお金がどのように活用されたのかがわかるレポート記事もサイト上に掲載されます。
ここで気になるのは「マイ大阪ガス」への登録資格や、応援の原資となる「さすガッス」ポイントの貯め方ですよね。
実は「マイ大阪ガス」には、大阪ガスのユーザーでなくても「ライト会員」として登録可能。ガスや電気料金の確認がWeb上で行えるサービスなどは本会員限定ですが、「Social Design+」を通じたプロジェクトの応援には、資格の区別なく参加することができるんです!
またポイントは、サイト上のコラムを閲覧したり、クイズやゲームに参加したりすることで気軽に貯めることが可能。コンテンツは、エコや省エネについてわかりやすく学べるマンガから、世界のエネルギー事情を知ることができる連載、家庭で役立つ生活の知恵を紹介する記事までさまざまです。
“主婦のカリスマ”として知られる消費生活アドバイザーの和田由貴さんが、エコな生活のためのユーザーの疑問に答える「エコわざ相談室」。記事を閲覧するだけでなく、疑問を投稿することでもポイントが貯まります。
マイ大阪ガスのマスコットキャラクター「マイマイ姉妹」がエネルギーについてわかりやすく解説する「マイマイ姉妹のマンガでわかるエネルギー」。毎回、マンガの後には、そのトピックに関する大阪ガスの具体的な取り組みも紹介されています。
毎月、一つの国をピックアップして、省エネに関するユニークな実践例をまとめている連載「世界の省エネ」。読み応えあるボリュームで、先進的な事例について学ぶことができます。
サービスそのものの情報の入手にとどまらず、エコな暮らしに役立つ知識が得られたり、楽しみながら環境問題について考えられる点が支持され、「マイ大阪ガス」には現在約65万人が登録しているのだとか。
生活用品や食材が抽選で当たるプレゼントへの応募もポイントの魅力的な使い方の一つになっているなか、「Social Design+」でサポート対象に選ばれたプロジェクトには、毎回コンスタントに3000人から5000人の会員から応援が寄せられてきました。
それでは、昨年1月のスタートから今年にかけてプログラムに参加した14の団体で、サポーターが特に多かったプロジェクトについて、支援の結果どのようなインパクトにつながったのか、簡単にご紹介していきましょう。
事例1:5340人からの応援が集まった!
NPO法人チャイルド・ケモ・ハウス「闘病中でも、食べたいものを、食べたいときに」
「チャイルド・ケモ・ハウス」は、小児がんの子どもたちとその家族が、自分の家のような心穏やかに過ごせる環境の中で治療を受けられる空間づくりと、彼らの生活の質を向上するためのさまざまな啓発活動に取り組んでいる団体。
近年の医療技術の向上で、小児がんの治癒率は70〜80%にまで高まっているといいますが、まだまだその病への情報が少ないことで誤解が生まれたり、子どもたちが過ごしやすい闘病環境が整っていないのだとか。
そこで「チャイルド・ケモ・ハウス」では、まるで自宅のように居心地の良い環境で化学療法を受けることでき、小児がんを患っていても美味しい食事をとり、遊べ、そして辛いときにはサポートを受けられる環境を準備しています。
そんな彼らが、「Social Design+」で昨年5月~6月期の支援対象として選ばれたときは、
入院中に食欲が落ち込むときでも、食べたいという気持ちが高まる、おいしい食事をタイミングよく摂れないか。
付添家族の食事が準備されない場合が多く、調達に苦労する。毎日コンビニ弁当やカップ麺ですませるような状況を変えたい。
といった子どもたちや家族からの意見をもとにプロジェクトを立ち上げ、サポートを呼びかけました。
結果、5340人の応援者と大阪ガスからの支援を得て、9月末にチャイルド・ケモ・ハウスは“闘病中でも食べたいものを、食べたいときに”をテーマとしたイベント「みんなのごはん」を開催。
満員となったイベントには、経験豊富な料理人が講師として招かれ、家庭の味を長期間にわたって美味しく保存できる「煮沸保存」という手法について学ぶ講習会とワークショップが開かれ、闘病中の子どもたちが実際に試食しながら改善点などをディスカッションする時間も設けられました。
「チャイルド・ケモ・ハウス」の拠点施設だけでなく、小児がん患者の子どもを支える家庭でも実践できる「煮沸保存」のレシピを知ることは、闘病中の食について改めて考える機会となった様子。
そしてこのイベントを機に「チャイルド・ケモ・ハウス」を訪れた近隣の人たちが、一般にも開放されているレストランを備えたこの空間を「地域の憩いの場」として再発見するきっかけにもなったようです。
事例2:5439人からの応援が集まった!
仮認定NPO法人ノーべル「より多くの“おかん”に『何とかなる』のロールモデルを届けたい!」
「仮認定NPO法人ノーベル」が取り組むのは、働く親たちを支える病児保育サービス。“子どもが病気だけど仕事を休めない…”というお父さんやお母さんの悩みに寄り添うべく、当日朝の要請でも100%対応可能な会員制の訪問型病児保育事業を、2010年に関西で初めて立ち上げました。
そんなノーベルが「Social Design+」でチャレンジしたのは、子育てと仕事が両立できる社会の実現に向けたソーシャルプロモーション事業の一環として2012年に制作された冊子『働く!!おかん図鑑』の無償配布キャンペーン。
キャッチーなタイトルとイラスト、そして何よりも“先輩おかん”100名の声をもとにした「子どもの病気」を明るく乗り切るさまざまなノウハウの詰まったこの冊子は、多くの働くお母さんたちに支持されてきました。
3年間で約4000部を販売するほど人気を集めたこの冊子を、「大丈夫。大丈夫。何とかなるって」というメッセージとしてさらに多くの“おかん”に届けたい。企画には、そんな思いが込められました。
5439人からの応援を得て昨年4月にキャンペーンがスタートすると、産休や育休から職場に復帰したお母さんたちだけでなく、そうした子育て中の女性を職場の同僚に持つ人や、奥さんの職場復帰を間近に控える男性からも希望する声が多く寄せられ、1000部の配布につながりました。
事例3:5341人からの応援が集まった!
NPO法人トイボックス「みんなが笑顔になる教育現場をつくり続ける。」
不登校や発達障害などのために、既存の教育の枠組みからこぼれてしまう子どもたち。そんな彼らのための居場所づくりや教育プログラムを各地で展開しているのが「トイボックス」です。
大阪府池田市と連携した教育相談事業を2003年に実現し、翌年からは同市の要請で「池田市立山の家」でのスクーリングをスタート。学校になじめない子どもたちが、やがて一般社会の中で自立した生活を送れるようになることを目指した、公民協働の教育モデルとして注目を集めました。
そして昨年11月、トイボックスが「Social Design+」で挑戦したのは、「山の家」の移転に伴う学習相談サポートの拡充でした。池田市内の移転先、旧・伏尾台小学校では受け入れ規模が2.5倍になるにもかかわらず、人員不足という課題の解消はめどが立たなかったため、支援を呼びかけたのです。
5341人からの応援を受けて得た支援をもとに、トイボックスは臨床心理士などの専門家や教員免許を持つスタッフによるサポート体制を充実。懸案だった待機児童の問題も解消され、子どもたちが安心して学べる環境が整いました。
現在では、「がっこうづくり」から「まちづくり」へとプロジェクトのスケールはまた一つ大きくなり、学校が池田市の進める「伏尾台エリア創生」の拠点として、子育てと若者支援の機能まで発揮できるよう、取り組みが進められています。
ソーシャルデザインを草の根的に広げてゆくプラットフォームに。
「Social Design+」のページでは、支援が実現したこれまでのプロジェクトのレポートを順次公開中!
こうして今年4月までに14の活動をピックアップしてきた「Social Design+」では、関西圏のさまざまなソーシャルデザインの取り組みに対して、多くの応援が集められてきました。
初めにご紹介したように、ポイントの寄付を通じたこの支援プログラムには、大阪ガスを暮らしのなかで利用しているかどうかにかかわらず、だれでも参加することができます。
よりさまざまな立場や考えを持った人がこのしくみに加わり、社会課題に取り組むクリエイティブな活動を知ること。それをサポートするために、エコや省エネについて理解を深めること。そして具体的な「応援」として、貯めたポイントを差し出すこと。
気軽さの演出だけでなく、ささやかな学びの要素がプラスされた「Social Design+」プログラムは、これまで共感と応援のあいだに横たわっていた小さくて大きなスキマを埋めるだけでなく、「ソーシャルデザインの担い手」を草の根的に広げてゆくプラットフォームになっているとも言えるでしょう。
みなさんも、ぜひこのプログラムを通じてサポーターのひとりに名乗りをあげてみませんか?
– INFORMATION –
現在のテーマは、「子ども・教育」!
みなさんも「マイ大阪ガス」に登録して、関西のソーシャルデザイナーを応援してみませんか?
https://services.osakagas.co.jp/portalc/contents-2/pc/social/