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福岡とポートランドにみるスタートアップのかたち。福岡市国家戦略特区部長の袴着賢治さんが目指すのは、市民が挑戦したり応援できるエコシステム

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福岡市内の観光スポット巡りが楽しめる、西鉄が運行する2階建てオープントップバスの前で。(右)袴着賢治さん (左)編集長の鈴木菜央

特集「マイプロSHOWCASE福岡編」は、「“20年後の天神“を一緒につくろう!」をテーマに、福岡を拠点に活躍するソーシャルデザインの担い手を紹介していく、西鉄天神委員会との共同企画です。

福岡といえば…アジアの玄関口、豚骨ラーメン、水炊き、焼き鳥などの食べ物が美味しい、どんたくや山笠などのお祭りetc…どんなイメージがありますか?

最近では、都市部と郊外との距離が近くて暮らしやすいと移住先としても人気で、2013年にはついに福岡市の人口は150万人を突破。人口増加率は全国の政令市の中で1位、また若者率が高い都市としてもトップに輝きました。そして、2015年の国勢調査(速報値)の結果、政令市で人口5位の都市になりました。

そんな急成長を見せる福岡市ですが、2012年に高島市長が「スタートアップ都市ふくおか宣言」を行って以降、新しいまちづくりに取り組む中で、国家戦略特区での創業支援を打ち出してきました。

今回は、そんな福岡の魅力と可能性を探るべく、その推進役のひとりである福岡市国家戦略特区部長の袴着賢治さんのもとへ、greenz.jp編集長の鈴木菜央が訪ねました。年齢も近く、どちらも奥さまが東北出身という共通点もあり、対談はリラックスした雰囲気の中、始まりました。
 
02profile

袴着賢治(はかまき・けんじ)
福岡県直方市出身。県立東筑高校へ進学し、学生時代は野球少年だった。大学は早稲田へ。卒業後は大学院へ進み、政治学や行政法を学ぶ。その後、財務省に入り、霞ヶ関で行政の仕事に10年携わる。そのうち2年間は、内閣府経済財政諮問会議の事務局で「骨太方針」の作成などの業務を行う。2014年7月、福岡市国家戦略特区部長に就任。

故郷の役に立てるような仕事がしたかった

菜央 初めまして。実は、僕は福岡に関してはまだまだ初心者なんです。九州の地を踏んだのはほんの6、7年前くらいで。最近は福岡に訪れる機会も増えて、ようやく本当の面白みがわかりはじめた、というところです。

今日は、グリーンズの読者にももっと福岡の面白さを知ってもらいたいということで、袴着さんご自身の思いや考えも交えつつ、創業特区に選ばれた福岡の魅力について伺えればと思います。

袴着さん 初めまして。どうぞよろしくお願いします。
 
03福岡市役所(福岡市中央区天神)にて、菜央さんの質問に丁寧に答える袴着さん

菜央 国家戦略特区部長というのは、それまでやっていた霞ヶ関の行政の仕事とはかなり内容の違うお仕事だと思うのですが、ご自分から手を挙げられたんですよね?

袴着さん ええ。特区に指定される前から福岡市は人口も伸びていて、だんだんと注目されるようになっていましたから、福岡市が国家戦略特区部長を公募するという話を聞きまして、「これだ!これしかない」と迷わず公募に手を挙げたんです。

もともと私自身が福岡県直方市の出身で、いつかは故郷の役に立てるような仕事がしたいと思っていたんですね。公務員としてやってきた自分の経験が活かせる仕事かなと。

菜央 なるほど。秋田出身の奥様はどんな反応だったんですか?(笑)

袴着さん そうですね、応援してくれましたよ。今では食べものも美味しいし、子育てしやすいと喜んでいます。

菜央 確かに、福岡のごはんは美味しいですよね。
 
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「スタートアップ支援」で街を元気に

菜央 僕はグリーンズで、何かを始める人だったり、自分がこういう風に生きていきたい、仕事をつくりたい、こういう風な社会になったらいいなという思いをかたちにする人たちを取材して応援してきたんですね。

そういう意味では、創業支援や雇用を創出することなど、街が今までにないかたちで盛り上がることは、すごく面白いなと感じます。具体的に国家戦略特区というのはどんな取り組みなんですか?

袴着さん 一番の軸は「スタートアップ支援」という取り組みです。福岡は住みやすい街ということで人口も増えて、大学も多く、若い人材がたくさんいます。新しい会社ができれば、そんな若者の雇用を創出する大部分を担うでしょうし、そこで生み出されるサービスや商品が市民生活を豊かにしていきます。

そんな循環が生まれれば、街全体が元気になる。そうしたことを目的とした取り組みなんですね。東京に比べるとビジネスコストが安いこともあって、「チャレンジができる街なんだ」とアピールしているんですよ。
 
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菜央 「チャレンジができる」ですか。うんうん、なるほど。

袴着さん この街だったらトライ&エラーができるという、福岡の街の特性を生かして、スタートアップで都市づくりに取り組もうということなんです。

アイデアさえあれば起業できる!「スタートアップカフェ」

菜央 具体的にはどんなことをやっているんですか?

袴着さん スタートアップ支援の中で一番大きな取り組みとして挙げられるのが、一昨年の10月にオープンした「スタートアップカフェ」です。まさにカフェスタイルで支援の拠点となる場所なんですが、コンシェルジュが常駐していて、事業の計画や資金調達、会社設立の手続きなどを、アイデアベースのスタンスで無料で相談できるんですよ。

菜央 僕も行ってみました。天神のTSUTAYAのブックストアの中にあるんですね。いろんな人が相談に来ていて、にぎわっている様子でした。
 
06cafeTSUTAYA BOOKSTORE TENJIN 3F内に併設され、起業や独立を志す人のための支援を行う場。一角には弁護士や社労士が常駐する雇用労働相談センターもある

07市長を囲んで、スタートアップした人やこれから挑戦したいと思っている人が参加した「FUKUOKA INNOVATION WAVE」の様子

袴着さん これまでも市が創業相談をやってきてはいたんです。ところが、ある程度、事業内容をまとめてからいかないと…という心理的なハードルもあってか、相談件数としてはそんなに多くなかったんですね。

カフェがオープンしてからは、年間400件だった相談数が1500件くらいに、4倍ほどアップしました。これは大きな成果だと思います。やはりカフェのオープンなスタイルがよかったんだと思いますね。

菜央 確かに明るくてオシャレですし、誰でも利用できる感じがいいですね。

目指すは民間が民間を支えるエコシステム

菜央 スタートアップカフェの主体は福岡市になるんですか?

袴着さん はい、市が運営を委託しています。

菜央 相談を受ける側のコンシェルジュはどんな方々なんですか?

袴着さん いわゆる地元のプロフェッショナルですね。地元で中小企業支援を行う金融コンサルティング会社のDOGAN、TSUTAYA事業を中心としたエンタテインメント事業を行うカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の九州カンパニーの方々が担当しています。

菜央 先輩に相談に乗ってもらえるということですね。企業に必要な人的ネットワークもここでつくれると。

袴着さん 「スタートアップクラブ」といってスタートアップを支援するサポーター登録をしてくれる企業も40社ほどになっています。

例えば、名刺やオフィス家具であったり、事務所であったり、スタートアップ利用者向けの特別なサービスを提供してくれているんです。行政の手から離れて、「民間が民間を支えるエコシステム」ができているわけなんです。

菜央 なるほど。頼るより自分で考えてやってみようよと。そして、それをお互いに市民同士で応援するというかたちですね。

袴着さん その輪がだんだんと広がってきたというのが嬉しいですね。

菜央 僕たちも10年前に起業したんですけど、こういうかたちがあったらもっと楽だったろうなって思います(笑)

袴着さん スタートアップカフェ自体も1年半が経って、市民権を得てきたのではないかと思います。例えば、普段から学生の姿もあれば、昼間は主婦の方、夕方は会社帰りのサラリーマンの方など多くのみなさまにご利用いただいています。
 
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さまざまな年代の人が立ち寄っているスタートアップカフェ

菜央 今すぐスタートアップはしないけれども、チャンスがあったらしたいなというような潜在的に意識を持った人も惹き付けているということですね。たくさんの人に起業してもらうためには、重要なポイントです。

まだまだ、みんなの潜在意識には「小さな起業は大したことができないだろう」という意識があると思うんですが、みんなが幸せになれる地域社会をつくるためには、小さな起業がたくさん集まる必要があると感じています。いいなぁ福岡(笑)

規制緩和から広がる福岡の可能性

菜央 ほかには特区でどんな取り組みがあるんですか?

袴着さん そうですね、「天神ビッグバン」という取り組みがあって、今回、航空法の高さ制限の緩和ということを提案して認められたんですよ。

天神は福岡市の中でも博多駅周辺と並んで商業的に発展しているエリアなんですが、その中でも古くから発達してきた場所17ヘクタールを対象にして、17階建てまで2階分高く建てられることになったんです。

今後10年間で、ビル30棟の立替えを誘導し、新しく生まれる空間にスタートアップで誕生した企業等に入居していただいて雇用創出を図るという計画なんですよ。道路、地下街、公園の整備などもあわせて、天神地区全体の街づくりの更新をしようというプロジェクトを始めています。

菜央 なるほど。他にもまだ規制緩和の事例というのはあるんですか?

袴着さん ええ。道路占用事業というのも新たに認められて、その規制の特例を活用した「ストリートパーティ」を実施しています。これは道路にテーブルや飲食ブースを置いて占用できるようにしたんです。
 
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天神のきらめき通りで一昨年の11月に行ったストリートパーティの様子。来場者数約13万人、約14億円という経済効果が出た

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週末に催されたストリートパーティは、夜もたくさんの人でにぎわいを見せた

袴着さん 福岡市は交流人口が多くて、休日になれば西日本一円から集まってきていますから、福岡という都市の特性に合った、ひとつの規制緩和による経済効果を生むイベントだと思います。

菜央  なるほど。たとえば最近起業した人や、天神のカフェなんかがストリートで何かをやりたいと思ったら、昔よりも道路占用許可を取りやすくなっているということですか?

袴着さん はい、そうなんです。

あと、MICE(国際会議やセミナー等)誘致の取り組みの一環として、ストリートパーティでMICEの懇親会を行いました。アフターコンベンションということで、道路をパーティ会場にして、乾杯したりしたんですよ。会議以外の楽しみがあるよという点で、誘致の上でもセールスポイントになったと思います。

菜央 それは面白いですね。広く、「公共空間」をもっと活用してください、という提案でもあると。ぜひ、大きなイベントだけでなく地元のカフェやアパレルなんかにストリートを活用して遊んでいただきたいですね。

袴着さん それ以外には、国内初のスタートアップビザ(外国人創業活動促進事業)や法人税の軽減措置、電波法の規制緩和、高度医療を行う場合に病床を増やしたことなどがあります。

福岡に来れば、ビザがあるしカフェで相談もできる、雇用労働相談センターもあって、法人税の措置もある。いわば「福岡市スタートアップ・パッケージ」というような支援メニューが揃っているんですよ。

ポートランドにみるローカルの視点

菜央 例えば、スタートアップできる環境にいる若者はいいけれど、所得が低い方々に対してどんな風なサポートができるかなど、その辺りはどうお考えですか?

袴着さん そうですね、まずは特区によって雇用を創出していくことで、市民のみなさんにとっての選択肢を増やしていくことが大事だと思っています。

一方で、基本的な福岡市の政策として、都市の成長と生活の質の向上を同時に達成しようと掲げているんですね。都市が成長することでその果実を生活の質の向上に充て、好循環を生み出すことを目指しています。

菜央 僕はいろんな場所に取材に行って、ショックを受けるほど驚くときがたまにあるんですが、その中のひとつが米国のポートランドでした。

袴着さん 私も去年、視察に行きました。

菜央 ポートランド、面白いまちですよね。そこで僕が驚いたことの一つ目は、スタートアップの概念の広さです。日本だとスタートアップというとわりとIT関連の分野や、大きくなろう、という志向が強いと思うんですが、向こうではスタートアップは極めて多様な分野で起こっている。

NPOもスタートアップだし、驚いたことの二つ目は、地元志向が極めて強いことです。「ローカルに資するスタートアップがかっこいいよね」といった感覚なんです。
 
11自転車の街ポートランドのよくある風景。自転車停めがステキなデザイン。Some Rights Reserved

菜央 ほんとに驚いたのは、「自転車」です。修理屋さん、カスタム屋さん、職業訓練として刑務所から出てきた若者が自転車修理の技術を学ぶNPOがあって、そこ自体もスタートアップなんです。

そういう人たちがかっこいいカスタムショップとかをオープンしてるんですよね。お金がなくても移動できる、道行く人とも会話が生まれる、さまざまな関連産業を生み出す自転車は、単なる交通手段を超えて、ポートランドのアイデンティティになっている感じすらありましたね。

袴着さん スポーツ関連のショップもありますよね。自然も多く、非常にヘルシーな街という印象を受けました。

菜央 むちゃくちゃヘルシーですね。遊びと言えば、山にでかけたり、自転車で走ったり。

袴着さん ヘルシーと言えば、ファーマーズマーケットに私も行きましたけれど、美味しそうな地元の食材がいっぱい並んでいて、たくさんの人が集まり、すごいなと思いました。

NPOについていうと、福岡市でもNPO法人の認証手続きの迅速化というのが特区のメニューにあって活用し始めているんですよ。認証に4ヵ月ほどかかっていたものを2ヵ月半くらいに短縮できるようになって。NPOでもスタートアップと同様に新しいビジネスと雇用を生み出せて、生活ができる。そういう選択肢を増やすこともやっていきたいと思っています。
 
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菜央 そういった取り組みがどんどん進んでいくといいですよね。

さきほどの「地元」「ローカル」意識の話に戻りますが、ポートランドでは「ローカル」ということの価値観が深く広く浸透していることに驚きました。例えば、ぱっとその辺のレストランに入って「ローカルのビールを飲みたいんだけど、どれかな?」って聞いても「なんでそんなこと聞くの? 全部ローカルのクラフトビールさ!」って返ってくるんです。
 
13ポートランド市内にあるクラフトビール醸造所「HOPWORKS URBAN BREWARY」で出されるビール。ミッションは「世界基準の味、環境保護、コミュニティの向上」Some Rights Reserved.

菜央 ブルーパブ(クラフトビールをつくり、その場での飲めるバー)に行ったりもしたんですけど、そこもやっぱりスタートアップで起業しているんですよね。アメリカ中で「クラフトビールスタートアップ」がめちゃめちゃ流行っているんですね。あと、最近はチーズで起業する「チーズスタートアップ」や「チョコレートスタートアップ」もとても注目されています。

袴着さん それは楽しそうなスタートアップですよね。

菜央 そういう食べ物って地元の食材でつくられていて、地元の個性を出そうと努力するし、地元の人を起用して、地元のお店で基本的には地元の人たちにふるまうかたちなんですね。もちろん遊びに来た人にも「いいだろ、ポートランド」って自慢しながら飲むみたいな。

人口60万人のポートランド市にクラフトビールのブルワリーが65社もあって、全米一だそうです。

一方で州単位でみるとブルワリーの密集度全米一のバーモント州のブルーパブで見たんですが、店内にポスターが貼ってあって「君の一杯はアイツの雇用に」って書いてあるんですよ。ただの飲み物じゃない。地元の誇りであり、味であり、コミュニティのつながりであり、雇用、暮らしであると。そういう感覚なんだなって。
 
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菜央 アメリカは世界一の経済大国としてグローバル経済の恩恵もたくさん受けてきたけれども、一方で難しい問題として、格差がすごく大きい社会です。そんな中、難しい状況に置かれている人達もたくさんいるんですよね。

そういう人たちがローカルという場で小商いという仕事をつくってスタートアップして、地元の人とつながって地元の経済をつくっていく。地域できちんとお金を回して行こうよという物事が起きている分野が、自転車であり、ビール、チーズ、チョコレートなんだなあって。

袴着さん 地のもので成立するというのが面白いですよね。そこは地方創生という観点が大事だと思います。地方のいいものってありますよね。何かひとつ、つながりを得ることで花開くことってたくさんあると思うんですよ。その魅力を再発見して、資源を活用することも地方が取り組むべきことだと思います。

自分たちの経済は自分たちの手でつくる

菜央 誰かがチャレンジして、それをみんなが応援することで、地域が活力を取り戻していって、環境も、人のつながりも、経済も大事にしていく。そういう事例をたくさん見て来た中で、彼らは自分たちの経済を自分たちの手でつくっていこうという意識が強いんだなと感じました。

日本でも各地でいろんな取り組みが行われていますが、そういう感覚で、突破口は、「ローカル起業家の生態系」なんじゃないかなと思っています。
 
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袴着さん そうですね。自転車の街というところも福岡との共通性を感じます。東京にいた頃は私自身も1時間くらいかけて満員電車で通勤していましたけども、福岡はコンパクトな街ですから、通勤時間も短く自転車通勤の方も多いですね。

それでいて、休日にすぐ自然のある場所へ出かけられたり、近場に温泉もあって食べ物も美味しい。リフレッシュするのに非常にいいところだと思います。

菜央 福岡がポートランドと似ているといわれる点は、ある種そういうヘルシーさだったりしますよね。

袴着さん そうだと思います。そんな心地いい暮らし方が、仕事をする上でもクリエイティブな発想を生むと思うんですよ。生産性を上げていくという意味では、福岡のように暮らしやすい街というのが重要な要素になるのではと。

菜央 同感です。

生活を楽しむことができる街・福岡に

袴着さん 福岡市の中心である天神エリアは九州一円、西日本一円の元気を集めているところだと思うんですね。けれど、高層ビルでいっぱいになるというより、見上げたら空があって、海も山も近くにある。生活を楽しむことができる、ゆとりのある街であってほしいと思います。

ですから、例えば働き方にしても、家でできるテレワークや地方にいながら東京の仕事をして、しっかり給料や報酬がもらえるリモートなど多様化も可能でしょうし、福岡から世界へつながっていく企業も生み出していきたい。起業だけでなく、いろんな分野にチャレンジできる街になったらいいですよね。そういう選択肢の多い街にして、新しい働き方を提供することも市の大事な役割だと思います。

菜央 僕も福岡がそんな街であってほしいと思います。子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまで、いろんなチャレンジがあって、それが失敗できるという様に考えると、今はまだ実現していない政策やサポートもたくさん必要になってくるでしょうね。

ポートランドのような感じのスタートアップの取り組みを通じて、それぞれの個性がもっと際立つようなことが広がっていくと、今度はCO2の削減だったり環境対策にもなって、暮らしやすさの向上にもつながっていくんじゃないかと思うんですよ。

袴着さん そうですね。スタートアップカフェをもっと市民の方々に活用していただいて、行政からも、市民からも、コミュニティやエコシステムができていくことで、福岡らしい仕事やにぎわいを生んで育んでいけたらいいなと思います。 

菜央 楽しみですね。僕らもできることがあれば、参加していきたいと思います。今日はありがとうございました!
 
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対談後、市役所ロビーで、福岡市の地図を見ながら談笑するひととき

(対談ここまで)

 
というわけで、スタートアップ支援など創業特区を通じて始まっている福岡市のさまざまな試みや、ポートランド事情などについて意見を交わしたひとときでしたが、いかがでしたか?

自分たちの経済を自分たちの手でつくって地域でまわす。そんな有機的な街、ポートランドと比較されることも多い福岡。

経済というとお金を優先するグローバルなイメージを抱きがちですが、改めて辞書を引いてみると、「世の中を治め、人民を救う」経世済民という意味があります。

今の福岡には、グローバルな視点で経済成長をとり込む機運があることも街の大きな魅力となって期待されていますが、一方で、ポートランドを例に、福岡らしいローカルの特性を生かしながら、地元の人同士がつながり合って小商いのような地域経済をつくっていく。そんな内側の循環づくりも、同時にまちを元気にしていくための大切な鍵ではないかと思えた対談でした。

挑戦する人が転ばないように、あらかじめ相談役になってサポートしてくれる「スタートアップ支援」の取り組み。それによって、5年後、10年後の福岡市は、いったいどんな表情のまちになっているのでしょう。

(撮影:テトラグラフ写真室 雨宮康子)