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目指すのは、みんなが一緒に普通の生活ができる社会! 25年間以上、視覚障がい者に向けてパソコンを教え続ける高岩聖悟さん

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この記事はグリーンズで発信したい思いがある方々からのご寄稿を、そのままの内容で掲載しています。寄稿にご興味のある方は、こちらをご覧ください。

近年、視覚障がい者のパソコン環境は、大きく発展をしています。今まで目の見えない人には容易でなかった文字での交流や情報の収集が、パソコンの進化により身近になったのです。

大阪にある浪速区民センターで月2回開催している、視覚障がい者向けパソコン教室「青い鳥音声ワープロ教室」。ここでは視覚障がい者向けのパソコンがまだ一般的ではなかった頃から、目の見えない人たちへパソコンを教え続けています。

「日記が書きたい、手紙が書きたい」視覚障がい者のそんな思いを現実に

現在、青い鳥の代表を勤めている高岩聖悟さんは約25年間、視覚障がい者のパソコン教室に関わっています。

高岩さんが青い鳥を知ったのは、17歳の時でした。視覚障がい者向けパソコン教室で教える人の募集をみて、「高性能のパソコンが触れる」と思った高岩さん。最初は視覚障がい者向けの教室よりも、パソコンが目当てでやってきた青年でした。  
 
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青い鳥代表の高岩さん。高岩さん強い信念あるからこそ、大きな信頼関係を築き上げています。

今では一般のパソコンでも専用のソフトを利用すれば、目が見えない人たちも使えるようになりました。しかし当時は、視覚障がい者向けのパソコンが100万円以上で販売されていた時代。そんな高額な視覚障がい者向けパソコンでも手に入れた人を、高岩さんは何人も見てきました。

文字は目の見えない人たちにとって、それほどまでしても取得したいコミュニケーション手段なのです。

また点字では、視覚障がい者同士でしか交流ができません。しかも視覚障がい者の中でも、点字をできる人は1割ほどしかいないのが現状です。文字は視覚障がい者と健常者だけでなく、目の見えない人同士を結ぶ手段でもあるのです。

視覚障がいに対応したスクリーンリーダーと呼ばれるソフトは、パソコンの操作や文字の読み上げ、変換した漢字の説明などを、音声で案内する仕組みです。入力はホームポジションの他に主要なキーに印をつけ、キーボードを使用。「これが本当のブラインドタッチ」と笑う高岩さん。 
 
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キーボードには主要キーだけに印を付けて、あとは音声読み上げソフトに頼りって入力をしています。

「自分でできることは自分でする」が教室のルール

青い鳥では、大きなルールがひとつあります。それは、「教室への行き帰りは、自分でなんとかする」こと。つえをついて来る人や盲導犬を連れてくる人、ヘルパーを頼む人など、今まで多くの人が、さまざまな形で参加をしてきました。このルールは高岩さんが感じている、日本の福祉への疑問から生まれました。

日本での福祉の考え方は「なんでもしてあげる」が前提になっているけれど、それはおかしいと思っているんです。自分でできるのになんでも手を貸してしまおうとするのは、親切のつもりが迷惑になっていることも多い。

まずは自分でやってみて、手を貸して欲しい時があれば手助けを求める。まわりの人はその時に、手を貸せばいいんです。

このルールは、一見すると厳しく思えるかもしれません。しかし教室に参加している人たちは、この一歩を踏み出したからこそ、新しい世界を広げています。またこのルールがあるからこそ、障がい者と健常者の壁がなく接してくれている実感があると、感じているようです。

高岩さんと同じ会社でITを担当している野口むつみさんは、高岩さんから誘われて顔を出しているうちに教える側になり、5年になります。野口さんも高岩さんの考え方を、自然と引き継いでいます。

パソコンを教えているけれど、見えていないと意識をしていない場合がほとんどです。見えないのをまったく忘れて話をしていて、「見えてなかったね、ごめん」ってなることもあります。

そんな風に思わせるのは高岩さんを始め、教えている人たちの頑なポリシーがあるのはもちろんですが、参加している人たちのポテンシャルの高さにあります。教室にきている人たちは、FacebookやTwitterも駆使。

またこの日は購入したiPod touchを、各自設定をしながら楽しんでいました。新しいことも積極的に取り入れ、いつまでも学びたい気持ちを全員が持ち続けています。 
 
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初めて手にしたiPod touch。新しいことも青い鳥教室に通う人たちは積極的に学んでいきます。

視覚障がい者を対象にしたパソコン教室は、全国で増えています。しかし導入部は教えても、それ以上を教えるところはほとんどありません。

青い鳥では教室に来て学んでいる人たちに、やりたいことや悩みを聞きながら、どうすればそれに対応できるかを試行錯誤しながら教えています。最後に高岩さんから、視覚障がい者福祉の未来についての思いを聞きました。

近年、障がい者と高齢者の問題が同様の問題として議論されることが多くなりました。年齢を重ねれば、見えにくくなったり、聞こえにくくなったり、足が不自由になったりします。

だから障がいは誰にでも関係するもので、障がい者の問題と高齢者の問題は同様と考えるととても理解しやすいでしょう。パソコンなどの利用に関しても、障がい者・高齢者に配慮した機器・システムの普及やアクセシビリティーの議論が、多くなされているように思います。

しかし、そんな特別ではありません。Twitterで知り合った人とオフ会をしたら、たまたま障がい者や高齢者だったり、視覚障がい者が道案内をしたり。

いろいろな違いを意識せず、みんなが一緒に普通の生活ができる社会と、必要なときにそれを支える人たち。すてきだと思いませんか?

パソコンを触りたい思いから視覚障がい者との付き合いが始まった高岩さんは、福祉の未来に強い信念を持つおとなになりました。これからもみんなが一緒に生活できる社会に向けて、高岩さんはこれからも教室を続けていきます。

(Text: 多田明子)

多田明子(ただ・あきこ)
大阪在住のフリーライター。Webを中心にライティング活動をおこないながら、大好きなあべの・天王寺エリアの魅力の魅力を探求する日々を送る。興味のある分野は、コミュニケーションについて。コミュニケーションで悩む人たちや幅広い人たちとの交流などを、伝えていきたいと考えています。