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突然ですが、みなさんはどんなときに音楽が聞きたくなりますか?
通勤通学をしているとき。散歩をしているとき。あるいは、自宅でくつろいでいるとき。きっとさまざまな機会に、さまざまな音楽を聞いている方が多いかと思います。
そんななか、みなさんはクラシック音楽が健康に良いと言われていることをご存知でしょうか。そんな健康に良く、私たちの心をなごませてくれるクラシック音楽の医学的効果に着目して、そのときの体調や気分によって音楽を処方してくれるウェブサイトが生まれました。それが今回ご紹介する「サウンドサプリメント」です。
クラシック音楽は1/f ゆらぎというα波が誘発される周波数を多く含みリラクゼーション効果があることは知られていますが、サウンドサプリメントはさらに細かく一人一人の症状にひとつひとつの楽曲を処方しているサイトです。
例えば体調の改善に関しては、
・リラックスしたい人には人間の脈拍数に近いアダージョと呼ばれるスローテンポの音楽が気持ちを落ち着かせるショパンの雨だれ。
気分に関しては、
などこのコンテンツのユニークなところは何気なく音楽を聴いて気分が落ち着くということではなく、あらかじめ効果が期待できる音楽が選ばれていることです。
音楽が薬やサプリメントの代わりになるのか?
もう少し詳しい説明を制作者の青木陽亮さんにして頂きました。
グラフィックデザイナー。自分の体験をきっかけに音や音楽に秘められた効果・効能に着目。音楽によって身体の予防や改善出来ればという想いからsoundsupplemetを公開している。
松田 なぜこの様なコンテンツをつくろうと思ったのですか?
青木さん 一時期、原因の分からない頭痛に悩まされていたことがあり、ふと何気なく音楽療法の本を読んでみると音楽が人間の体調に良い影響を与えることを知り、試しに音楽を取り入れてみました。
すると症状が軽くなり「これは凄い!」と色々と音楽療法のことを調べていく中で1952年に発表されたポドルスキーの音楽処方という論文をしりました。
その論文の内容はドビュッシーの「ピアノのために」は高血圧に、ラヴェルの「高雅で感傷的なワルツ」は胃腸障害に効果的といったクラシック音楽の効果を症状別にまとめた論文で、とても面白い論文だと思いました。
ただ症状の内容が現代とミスマッチがあったので、この音楽処方を参考にして時代のニーズに合わせた症状を調べ、デザインやレイアウトを一新しコンテンツを整えていきました。
ポドルスキーの音楽処方(Music Therapy)には神経衰弱状態の音楽処方、心身症の音楽処方(高血圧の処方)、心身症の音楽処方(胃腸障害の処方)という病気の症状に対して、作曲者と作品名がそれぞれ10数曲記載されている。
松田 それでサウンドサプリメントというwebコンテンツが生まれたのですね。
青木さん いや最初は自分のiPodの中だけで症状のプレイリストを作成して日常生活で活用していました。ところがある日、友人に見せたところ面白がって自分にもプレイリストを作って欲しいと言われたので、気に入ってもらえる人がいるならと思い、WEB上で公開することにしました。
松田 音楽は薬やサプリメントの代用品として機能すると考えていますか?
青木さん 正直、代用品になるかは分かりません。ただ音や音楽は聴覚刺激を通じて情動に作用し、自律神経を調整し血液の流れをよくすることで臓器を安定させます。
それは薬やサプリメントと同様の効果があると考えられます。それと先ほどお話した自分の頭痛の経験から音楽がある程度は人間の健康に影響すると考えられます。
松田 今後はサウンドサプリメントをどの様にして行こうと思いますか?
青木さん 個々の生活環境のなかで、音楽に秘められた「効果・効能」を広く普及させ、健康増進に向け、これからも豊かな社会づくりに貢献出来ればと考えています。
今後はカウンセラー、セラピスト等、あらゆる専門領域の方々と連携・協働しながらさらに細かく1人1人の症状にあわせて音楽を処方するというオーダーメイドの聴き方を提案できればと考えています。
今回インタビューさせてもらいサウンドサプリメントは予防医学の一筋の光になると感じました。現代社会は生活環境の複雑さが生み出すストレス過剰の社会に加え、薬剤依存の社会、精神不安の急増など、国民の健康を蝕む要因が非常に増加し、健康不安を増幅させています。
このような状況の中、従来の病薬剤や手術を中心としたものではなく音楽も広い意味での身体的・精神的健康の予防医学の一環と考えられるのではないでしょうか。
(Text: 松田洋祐)