みなさんは生鮮品を買うとき、どこへ行きますか? 近所のスーパーや、商店街の八百屋さん、あるいはファーマーズマーケットを利用する方もいらっしゃるかもしれません。
日本では食の関心が高まり、運送技術の向上や買い物の選択肢が増えてきたことで、簡単に新鮮でオーガニックな食品を購入できるようになりました。
しかし一方で、大都市の郊外などには経済的に安定する仕事が少ないために、家計の事情から加工品ばかりに食が偏ってしまう方も多いようです。
そんな現状を目にして「知らず知らずに化学的な食品の危険にさらされている、子どもたちに自然の恵みを生かした健康な食を届けたい」と思い活動を始めたのが、自身も母親であるカリフォルニア州のNPO団体「Turning Green」代表、Judi Shils(以下、ジュディさん)と、地元のレストランのシェフであるJustin Everett(以下、ジャスティンさん)。
ふたりが始めたのは、公立学校にオーガニックの食堂をつくる「Conscious Kitchen」というプロジェクトでした。
(左)Judi Shilsさん、(右)Justin Everettさん
「Conscious Kitchen」は「Cavallo Point Lodge」や「Whole Foods Market」など多くのスポンサーに支えられ、2013年に「Bayside MLK Jr. Academy」で始まりました。
ジュディさんとジャスティンさんは、「Fresh. Local. Organic. Seasonal. Non-GMO.」の“FLOSN”をミッションとし、単にオーガニックだけではなく良質な食材を使い、地元で腕をふるうシェフたちとともに、子どもたちのために朝食と昼食を提供しています。
ポイントは、事前に加工された食材を一切使わず、その場で新鮮な食材を使って調理をすること。食材の下ごしらえは、子どもたちの親に協力をお願いしているそうで、ふだん加工品ばかりに頼っている親たちも、生鮮品をつかったレシピを学ぶことができます。
そんな準備風景は、子どもたちにもオープンにしているそう。その場でスタッフやシェフと話をすることもできるので、オーガニック食材が美味しいランチになっていく様子を学ぶ機会にも恵まれます。そして雰囲気づくりも抜群で、おしゃれなメニューや各テーブルにはお花が飾られるなど、まさにレストランに顔負けです!
とても、学校の食堂のごはんとは思えません!
美味しい食事に、自然に笑顔と会話が生まれている様子
ジュディさんの活動は新鮮で健康的な食事だけではなく、子どもたちに新しい世界のドアを開けているようです。なぜなら、最近ではスクールガーデンを設け、子どもたちと共に野菜の育て方から収穫の仕方を学び、実際にその食材を使った料理を食堂で出す取り組みを新たにスタートしているから。
更に、「Conscious Kitchen Ambassador」という、料理の基礎から栄養への知識を身に着け、最終的にはシェフと一緒にメニューの開発をするプログラムも開始。今まで加工品に頼った食事ばかりしていた子どもたちは、このような取り組みを通じて食への意識が向上しているそうで、中には将来プロのシェフになりたいという夢を持つようになった生徒もいるのだとか!
Conscious Kitchen Ambassadorに参加している生徒たち
子どもたちの健康が、地球の健康につながる
「Conscious Kitchen」が展開されているカリフォルニア州のマリン郡は、大都市サンフランシスコにほど近い地域ですが、マリン群の平均年間所得$90,000である一方、「Bayside MLK Jr. Academy」に通う子どもたちの家庭は$39,000と格差が激しい地域となっています。
そして地域は、健康な食へのアクセスがしにくい”Food Desert(食の砂漠)”と言われ、経済的にも豊かでないことも相まって、加工された食品を主に摂取し、50%の中学生が肥満もしくは肥満になる恐れがあるという深刻な影響も懸念されていました。( 参照元)
そこで「Conscious Kitchen」では、貧困家庭で暮らす95%以上の生徒に、無料もしくは割引された値段で食事を提供しています。その結果、規律を犯す生徒が67%も減り、また授業の出席率も向上しました。健康的な食を届けることは、子どもたちの生活へのモチベーションを上げることにもつながっているといいます。
ジュディさんは、このように思いを語ります。
「Conscious Kitchen」は、USDA(アメリカ合衆国農務省)の栄養基準をはるかに超えた食事を提供しています。私たちは子どもたちの健康を保つことが、そして地球の健康を保つことにもつながると考えていて、人間と地球の健康、どちらも無視してはいけないということを伝えたいんです。
日本のように深刻な貧困が見えにくい社会で生活をしていると、もしかしたらオーガニックの食材を食べることをファッションのように感じる方もいらっしゃるかもしれません。
私はオーガニック食品の消費を広げると、食だけではなく、環境問題や子どもたちの健康、コミュニティの促進などへ無限大にいい影響が広がっていく気がします。
みなさんもこの機会に、毎日の食に少しだけオーガニックを取り入れてみませんか? 美味しい食事を摂りながら、社会や環境を向上させることに、きっとつながるはずです。
(Text: 笹澤つかさ)
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