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音楽が変えるまちの風景。坂口修一郎さん、松尾伸也さん、佐藤雅樹さんと「音楽×まちづくり」の可能性について考えてみました [イベントレポート]

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特集「音楽の街づくりプロジェクト」は、音楽の力を通じてコミュニティの未来をつくるプロジェクトを紹介していく、ヤマハミュージックジャパンとの共同企画です。

みなさんは、まち中を歩いていて、ふと耳に入ってきた音楽に足を止めてしまったことはありませんか?

大通りでストリートミュージシャンが奏でる音楽、あるいはデパートやホテルのスペースで演奏されるピアノの音。

僕は、たとえ自分が聞いたことがない曲でも、まち中で豊かな音を耳にするたび、その時間を愛おしく感じます。

それはきっと、音楽そのものが素晴らしいだけではなくて、音楽がつくりだすまちの風景に魅了されているからかもしれません。

2014年12月18日、グリーンズはヤマハミュージックジャパンとの共同企画で、「音楽 × まちづくり」の可能性を考えるイベントを開催。

ゲストには、「ランドスケーププロダクツ/BAGN」の坂口修一郎さん、「西鉄エージェンシー」の松尾伸也さん。そしてファシリテーターに「フューチャーセッションズ」の有福英幸さんを迎え、音楽がまちづくりに果たせる役割について話し合いました。

人が主役になれるまちって?

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右から佐藤さん、坂口さん、松尾さん、有福さん

イベント冒頭、有福さんから、あるひとつの問いが投げかけられました。それは、「人が主役になれるまちって?」というもの。その問いかけの背景について、有福さんはこう話します。

有福さん これまでまちを元気にしてきたのは文化だったと思うんです。でも今、人やまちに元気がないと聞くことがあります。それはもしかしたら、文化を支えてきた施設やものを楽しむ、私たちの心のゆとりがなくなってきたからではないでしょうか?

そこで今日は、まちや人が元気になるために、自分たちが主役になれるまちを起点に考えていきたいと思います。

ヤマハミュージックジャパンが2009年から展開している「音楽の街づくりプロジェクト(通称おとまち)」は、まさに人が主役になれるまちを目指しているプロジェクトです。

このプロジェクトが誕生した背景には、日本人の持つ絆やつながりがあったと話すのは、同社でプロジェクトリーダーを務める佐藤雅樹さん。

佐藤さん ヤマハは「音楽が持っている人と人をつなげる力をツールにしよう」という思いを強く持っています。

そして音楽というツールを使って、持続可能なコミュニティづくりにチャレンジしながら、音楽ビジネスをさせていただきたいというのが、この仕事で私たちが共通して持っているミッションです。

ゲストとして登壇した「ランドスケーププロダクツ/BAGN」の坂口修一郎さんは、無国籍音楽楽団DOUBLE FAMOUSのメンバーとして知られています。

そんな坂口さんが、2010年に鹿児島県の「かわなべ森の学校」を拠点に立ち上げたイベントが「GOOD NEIGHBORS JAMBOREE」です。

坂口さん DOUBLE FAMOUSも、以前はフジロックのようなフェスティバルに出ていたんですが、「GOOD NEIGHBORS JAMBOREE」を立ち上げてからは、自分たちでステージのないところへ入って行き、お客さんの間をねり歩きながら演奏するというスタイルが多くなりました。

そのひとつが「グッドネイバーズ・マーチングバンド」。これは、その場で楽器を持ってきた人に集まってもらい、リズムを決め、メロディーをその場で教えて、みんなで演奏しながら練り歩くというものです。

例えばイベントにフードで出店していただいている方々も、ステージまで観に来ることができないので、「音楽のほうから会いに行こう」ということで始めました。

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「GOOD NEIGHBORS JAMBOREE」さんの紹介をする坂口さん

「西鉄エージェンシー」の松尾伸也さんは、福岡県の天神で「ミュージックシティ天神」を2002年からオーガナイズされています。

毎年9月末に開催されるこのイベントには、2日間で13万人ものお客さんが集まるのだとか!

松尾さん 天神は九州最大の繁華街であり、西日本鉄道の電車やバスのターミナルがあるまちです。「ミュージックシティ天神」は、そのエリアをより活性化しようということから生まれました。

「ミュージックシティ天神」のコンセプトは、「まち中に音楽があふれ出す」。音楽による集客とまちの活性化、そして福岡の音楽関連産業を盛り上げることが、開催の目的です。

当初から「福岡を音楽でご飯が食べられるまちにしたいね」ということを考えていました。

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「ミュージックシティ天神」の紹介をする松尾さん

よき隣人関係を生み出すために。

音楽だけではなく、様々なジャンルのアーティストとの交流を生み出している「GOOD NEIGHBORS JAMBOREE」。音楽フェスが、音楽外の分野のアーティストに声をかけている背景には、坂口さんのこんな思いがありました。

坂口さん 「GOOD NEIGHBORS JAMBOREE」という名前は、ロサンゼルスのまち中に「Be a good neighbor(よき隣人になれ)」という落書きがしてあったのを、僕の仕事仲間でもある編集者の岡本仁さんが見つけてきたのが由来なんです。

僕らは音楽が好きですけど、それをよく思わない人もいます。そんなとき、ただ単純に静かにするんじゃなくて、よき隣人になるためにはどうしたらいいのか? 僕は、その人を呼んで、一緒に飲み会を始めてみてもいいんじゃないかなと思うんですね。

「GOOD NEIGHBORS JAMBOREE」は音楽祭ですが、ものづくりをしている人や作家・ライターなど、鹿児島に縁がある方々に声をかけています。それは、多様な価値観を持った人が集まって、お互いを認め合いながら楽しめる場をつくりたいからです。

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GOOD NEIGHBORS JAMBOREEの様子

音楽がつなぐ人々、音楽が変えるまちの風景

音楽には人と人を結びつける力があると考える方は、きっとみなさんの中にも多いことでしょう。松尾さんは、自身のイベントで体験した、こんなエピソードを紹介してくれました。

松尾さん 「ミュージックシティ天神」には、プロもアマチュアの方も、海外のアーティストにも出ていただいています。福岡は中国や韓国と距離が近いので、すぐに行ったり来たりできるので、アジアからの参加者が多いんです。

そこでエントリーしていた日本人と韓国人が意気投合して、次の年には一緒にバンドで出るなど、国境を超えた出来事があり、そのときは音楽の力を感じました。

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ミュージックシティ天神の様子

一方、坂口さんは「音楽には風景を一変させる力がある」と話します。

坂口さん 小学生のときに「ウォークマン」を買ってもらい、お気に入りの音楽を聞きながら自転車で出かけたときに、目の前の風景が一変した経験があります。

音楽のように風景を変える力を持っていて、みんなが共有できるアートってなかなかないですよね?

佐藤さん 僕はこれから、録音された音楽ではなく生の音楽を外に持ち出していくという波が来るんじゃないかなと思います。

それをうるさいという人もいらっしゃると思うんですけど、そんな人々も巻き込んで一緒になって音楽を楽しむことが、ウォークマンをはじめとするポータブルプレイヤーに次ぐ改革になるのではないでしょうか?

ゲストが考える、これから音楽を使ってつくりたい街とは?

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トークセッションの最後に、みなさんにこれから音楽を使ってつくっていきたいまちについて伺いました。

松尾さん まちの面白いところって、新しいものと出会えることなんじゃないかと思います。今まで体験したことのないものとの出会いは、まちの魅力の一つかなと思っています。

そういった意味で、まち中で新しいジャンルの音楽やミュージシャンに出会える体験を、まちの新しい魅力として提供できれば面白そうですね。そして音楽だけではなく、いろいろなジャンルで志を持っている人たちがたくさん集まるまちをつくっていきたいです。

坂口さん いろんな人がいろんなことをやってるまちが理想です。例えば工業団地で全員が同じ工場に勤めているというのも悪くはないんですが、みんな同じは少し息苦しい。

その中に一人すごく変なおじさんがいたりするほうが、やっぱり楽しいですよね。

それがたまたま音楽をやってるでもいいし、陶芸家でも、絵描きでもいい。そういう人がたくさんいて、お互いに認め合えているまちのほうが暮らしやすいし、楽しいんじゃないかなと思うんです。

佐藤さん まちって文化の積み重ねみたいなところがあると思うんです。家並みで文化をつくるには長い年月がかかってしまいますが、音楽は手っ取り早く使うことができます。

みんながすぐに感じられるし、誰かの作品に反応して会話が生まれることもある。まちづくりは、文化をどれくらいつくれるかにかかっているのかもしれません。

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トークセッションにつづいて、参加者全員によるワークショップも開催。「『音楽×○○』で実現したいプロジェクト」をテーマにアイデアを出し合い、未来新聞をつくって発表しました。

まちづくりに音楽が貢献できること。3人の言葉を聞いて、その可能性の広さに気付かされた方も多いのではないでしょうか?

まちに音楽があふれていくことで、街の風景が一変していく。そんな機会が増えていくといいですね。

みなさんは「音楽×◯◯」で、どんなことを実現してみたいですか?

(撮影:鈴木 絵美里)
(編集協力:細貝 太伊朗)

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