みなさんは、学校の調理実習のことを覚えていますか?
ただ座って聞くだけの退屈な授業の合間に、友だちとわいわい言いながらホットケーキを焼いたり、楽しかったという方は多いのではないかなと思います。
でも、この調理実習、外国では当たり前のことではないようです。たとえばアメリカでは調理実習用のキッチンがない学校も多く、自分が口にするものに対しての知識が少なく、加工食品ばかりを食べて生活している子どもたちも多い様子。
実際、その食生活の乱れは子どもの頃からの肥満や糖尿病につながり、アメリカ国立衛生研究所の2013年の調査によると、アメリカ国民の肥満率が31%まで達しているのだとか。
アメリカの子どもたちにも、健康な食事の素晴らしさを体験してもらいたい。今回は、そんな目標を掲げて栄養士のCarolyn Federman(以下、キャロリンさん)が発案した「The Charlie Cart Project」を紹介します。
チャーリーカートのプロトタイプ第一号
「The Charlie Cart Project」を立ち上げるにあたって、キャロリンさんは様々な料理の道具とレシピ、授業プランを組み込んだ、移動可能なキッチンカートを発明。そのカートを各地の小学校に持っていき、子どもたちに調理実習のプログラムを提供しています。
カートは3つの部分から成り立っていて、対流式オーブンと、30人ほどの子どもたちが使える材料を切ったり混ぜたりするためのコーナー、そして洗い場を備えています。電源ケーブルがついているので、学校の先生たちは、教室や運動場の間のどこでも使うことができます。
加熱調理をする場所、食材を切る場所、食材を洗う場所の3つの部分でつくられています。
栄養士として仕事をしてきたキャロリンさんは、これまでにも学校の校庭で野菜や果物を育てたり、調理実習を実施してきたそう。しかし、そのたびにいろいろな苦労も経験したのだとか。
当時、子どもたちと調理実習をしたいと思っても、まずホットプレートやプラスチックのバケツなど、ありとあらゆるものをかき集めるところから始めなければいけなかったんです。
「どうすれば、もっと多くの子どもたちに食事の大切さを伝えることができるだろう?」と悩んでいたんです。
と、キャロリンさん。
そこでデザイナーであるBrian Dougherty(以下、ブライアンさん)に相談したところ、ふたりは”どこでも授業のできる移動式のキッチン”というアイデアを思いつき、さっそく開発を開始。
やがて生まれた試作品第一号をもって、カリフォルニア州の学校に訪問をしたところ、多くの子どもたちが集まりはじめ、一躍人気のプログラムに。他の学校からも、「うちにも来て!」とひっぱりだこになっているのだとか。
キャロリンさんがチャーリーカートとともに訪れると、子どもたちも興味津々です!
昨年にはKickstarterでのクラウドファンディングに挑戦した、「The Charlie Cart Project」。見事300人以上のサポーターの援助により、40,000ドルを上回る額を集めることに成功しました。今後はスポンサーをつのりながら、2015年秋の販売スタートを目指しているといいます。
日本では学校教育での調理実習が普及しているので、アメリカよりも食に関する教育は進んでいるのかもしれません。
しかしコンビニやファストフードの普及などにより、ついつい手軽に済ませられる加工食品で食事を済ませてしまうという方は多いのではないでしょうか?
もし私がチャーリーカートを手にしたなら、畑まで運んでいき、収穫したての野菜をその場で料理したいと思います。
材料ができるところからそれが料理の姿になるまでを体験することができるチャーリーカートは、日本に住む私たちにも、食の大切さに気づかせてくれます。
[via CharlieCart, Kickstarter, inhabitat]
(Text: 前田雅彦)