こっちには公園、あっちには学校。あの通りには市役所があって、その向かい側は図書館…。そんな”誰か”がつくったあなたの街のデザイン。でも、もし街に何をつくるのか自分で決められたら、ちょっとわくわくしませんか?
今回ご紹介する「Upcycle Urbanism」は、そんなわくわくを実現に近づけてくれるプロジェクトです。
2013年にカナダ・バンクーバーにておこなわれたUpcycle Urbanismは、600個以上の巨大なブロックを並べ、だれもが自由に作品をつくることができるというもの。
この企画が行われたグランビル通りは、観光地にも近く、人通りの多い場所。当日は、1500人以上が参加し、さまざまな作品の”建設”と”破壊”。そして、”再構築”が行われつづけました。
自分の背丈の何倍もある像をつくる通行人。当日は、飛び入り参加者も多くいました。
ブロックを積み上げることで、こんな規則的な建造物をつくることも!
ああっ、危ない!でも、ブロックは軽いので、くずれても安全。その後、また”建設”しなおすことができます。
この巨大な真っ白のブロックの正体は、なんと廃材。街には、地元の橋の建設に使われた廃材が大量に残っていたのです。
廃材の形は建築学科の学生によって考えられています。できるだけシンプルに、それでいて、それぞれが個性的。たとえば建築学科の学生のMinnie Chanさんは、中国の伝統的な建造物をイメージした設計を選択。学生にとっても、自分の作品を表現する場になっています。
山のように積まれた廃材。これが見事に生まれ変わります。
Upcycle Urbanismは「Museum of Vancouver(以下、MOV)」が、UBC School of Architecture and Landscape Architecture at the University of British Columbiaと共同で企画したもの。
MOVは「過去、現在、そして未来の街のをうつす鏡であり、刺激的な対話の場」として、市民とアイデアをつなげることをめざしている、バンクーバーでも代表的な美術館のひとつです。
企画のテーマも文化や歴史に関するものだけではなく、都市計画や公共スペースの利用の仕方、サステナビリティや貧困・健康など、社会性の強いテーマも多く取り扱っているのが特徴。
最近では「Vancouver’s Neon Stories」という専用のアプリを通して、街全体がネオンの博物館になる市民参加型プロジェクトを運営し、ネオンを通して街の歴史や科学の進歩について学ぶ機会をつくっているのだとか。
企画のために、事前に行われたワークショップ。小さな模型を使って新たな公共空間デザインについて話し合います。
運営メンバーのひとりで、Urban PlannerのLarry Barsleyさんは、このように語っています。
普通、街に住んでいる人たちは、どのように街がデザインされているのかを知りません。バンクーバーに住んでいる人たちもです。
そして、ほとんどの人は自分たちが街の一部であり、街の変化の一部になれることを感じていませんでした。
毎日を忙しく過ごしていると、自分の街がどのようにつくられているのかを考えるチャンスはあまりありません。そうすると、実は自分も街の一部をになう「つくり手」であるということを忘れてしまいがち。Upcycle Urbanismは、わたしたちの街へ向き合う姿勢を、問い直します。
さて、みなさんは自分の街になんでもつくれるとしたら、どんなものをつくりますか?
[via Museum of Vancouver, This City Life, Vancouver Magazine, The Happy City]
(企画 / Text: きとうかよ)