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今から15年後、どうなっていたら理想的? グリーンバード×仕事旅行社×日本親子ダンス協会×国立環境研究所で「2030年のTOKYO暮らし」を考えてみました!

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特集「ぼくらの未来シナリオ」は、国立環境研究所「2030年の未来シナリオ」研究チームと一緒にお届けするインタビュー企画です。有識者の方々に「2030年の日本が直面しうるリスク」と「よりよい未来にしていくためにいま必要なこと」を伺っていきます。

「2030年、日本はどうなっているのでしょうか?」

特集「ぼくらの未来シナリオ」では過去4回にわたり、各界で活躍する専門家の方々にこの問いを投げかけてきました。毎回、示唆に富む意見を伺うことができ、よりよい未来をつくるためのヒントを得られたと思っています。

同じ問いをもっとたくさんの方と一緒に考えるべく、10月8日に東京で「2030年のTOKYO暮らしを考えよう」ワークショップを開催しました。

ゲストには、“都市におけるコミュニティづくり”の実践者として、NPO法人グリーンバードの横尾俊成さん、“多様な働き方”の専門家として、仕事旅行社の田中翼さん、“ダイバーシティ”の当事者兼“お母さん”代表として、日本親子ダンス協会の石川さやかさんをお招きしました。

今回はその様子をレポートします。
 
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会場は港区芝浦の「SHIBAURA HOUSE」。当日は50人を超える参加者が集まり、会場は大賑わいでした。

「自己実現を望む強さ」と「リスク感度」が人生の分かれ道になる

まずはこの連載のパートナーである、国立環境研究所「2030年の未来シナリオ」研究チームの青柳みどりさんから、研究の主旨をご紹介いただきました。

国立環境研究所は環境問題を専門に研究する組織ですが、環境問題は人々のライフスタイルに強い影響を受けることから、まずは15年後のライフスタイルがどう変化していくかを研究することにしたそうです。

(詳細はこちらの対談記事をどうぞ!)

青柳さんが手に持っているのは、研究過程と成果がコンパクトにまとめられたパンフレット。中身を少しだけ紹介しましょう。
 
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こちらは、研究の過程で導き出された「8つの未来イシュー」。2030年の未来像を考える上で検討すべき論点です。
 
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青柳さん 「8つの未来イシュー」の上4つは自己実現できた人たち、下4つはリスクに対応できなかった人たちの姿です。この研究を通して、「自己実現を望む強さ」と「リスクへの感度」が、私たちの人生の分かれ道になるということがわかりました。

青柳さんたち「2030年の未来シナリオ」研究チームは、こうした研究の成果を広く共有しながら、さらなる共有を進め、政策づくりのための提言を行っていく予定だといいます。

このパンフレットはこちらのウェブサイトからダウンロードできるので、気になる人はぜひご覧くださいね。

2030年、“ごみ拾い”という概念はなくなっている!?

さて、その次はゲストトークの時間です。

ゲストのみなさんには、活動内容を紹介していただいた後、「今から15年後の東京、どうなっていたら理想的ですか?」「逆にどうなっていたらとても残念ですか?」「上記の変化の要因となりそうなポイントは何だと思いますか?」という3つの質問に答えていただきました。
 
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最初にマイクを握ってもらったのは、全国で楽しくごみ拾いを行うNPO法人グリーンバード代表の横尾俊成さんです。

横尾さんは10年前、「環境問題は大きな問題だから自分にできることはあまりないと思いがちだけど、小さくごみを拾うことで変えられることがあるんじゃないか」と考え、グリーンバードの活動を始めました。

いまでは国内外に60のチームがあり、年間約3万人がごみ拾いに参加しています。
 
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横尾さん 大事なのは、「いかにもごみを拾いそうな良い人」ではなく、「環境問題なんて関心がなさそうに見える若者」に参加してもらうこと。

たとえば、ホストやキャバ嬢がごみ拾いをしていたら、「なんだなんだ!?」と多くの人の興味を惹きますよね。似たような価値観の人たちで小さくまとまるのではなく、どうしたらまち全体を巻き込めるかをいつも考えています。

横尾さんがこうした考え方をしているから、グリーンバードにはさまざまな人が参加し、国を越えて活動が広がっているのでしょうね。そんな横尾さんに、先に挙げた3つの質問に対する答えを教えていただきました。
 
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横尾さん 理想は、ごみ拾いという概念がなくなっていること。すなわち、誰もポイ捨てしない社会です。

逆に残念なのは、みんなが自分のことだけを考えていて、まちのことは行政任せにしている社会。

自分だけでなく、自分と家族、自分と友人たち、自分とまち全体と、範囲を広げて考えてもらえるといいなと思っています。

そうそう、さっき気づいたんですけど、「グリーンバード」から濁点をとると、「クリーンハート」になるんですよ!

2030年にはグリーンバードという組織はなくなっていて、みんながクリーンハートになっているといいなと思います。

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2030年、働き方に多様性が生まれ、みんなが想いに従って働いている!?

2人目のゲストは、魅力的な職業体験の場を展開している仕事旅行社の田中翼さんです。
 
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田中さんが運営する仕事旅行社のミッションは、「一人ひとりが自分に合った働き方ができる社会をつくる」こと。憧れの仕事を1日体験できる「仕事旅行」というサービスを提供しています。いわば、大人版のキッザニアですね。 

金融業界で働いていたとき、田中さんは周囲の先輩たちから「仕事は厳しいもの」と教わり、悶々とする日々を送っていたそう。しかし、知人の会社を訪問すると、そこでは自由な雰囲気の中みんなが機嫌良く働いていました。

「世の中にはいろんな会社があって、いろんな働き方があるんだ」と感銘を受けた田中さんは、「この体験をほかの人にも提供したい」と考えるように。それが仕事旅行社の誕生につながりました。
 
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2014年秋現在、仕事旅行社では花屋や占い師、デザイナーに探偵など、約100個の旅を取り揃えています。きっと、たくさんの人が仕事旅行によって一歩踏み出すきっかけをもらっているのでしょうね。

そんな田中さんが思い描く「2030年の東京」はどんなものなのでしょうか?
 
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田中さん いま、さまざまなところで“多様性”がキーワードになっていますが、仕事の多様性は置いてけぼりになっている気がします。もっといろんな働き方があって、自分に合うものが選べる時代が理想ですね。

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2030年、育児が「楽しい>大変」になっている!?

3人目のゲスト・石川さやかさんは、楽しい育児のありかたを追求する日本親子ダンス協会の代表です。
 
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石川さんは以前、大手企業で働いていました。しかし、そこで目の当たりにしたのは、人間関係が希薄な社内で、心のバランスを崩してしまう同僚たちの姿。この状況をなんとかできないだろうか…?そう考えていたときに開かれた、ダンスを使った職場活性化イベントが転機となりました。

小学校の頃からダンスを続けてきた石川さんはみんなを指導する立場へ。すると、練習を通してみんなが元気になり、一致団結したそうです。

「あ、これだ」と思った石川さんは、社会をイキイキさせるためのツールとしてダンスを使うことを仕事にしようと決めました。

妊娠・出産を機に育児中の母親の辛さや大変さを実感していたため、「日本親子ダンス協会」を設立。「100台ベビーカーダンス」など前例のない試みをはじめました。
  
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ベビーカーに乗せた赤ちゃんとママが一緒に踊るベビーカーダンス。「いないいないばぁ」「ほっぺにチュ」などを振り付けに取り入れています。

石川さん 乳児の育児中は日々がルーティン作業になりがちです。それが、ベビーカーダンスの発表会に出るという目標ができると張り合いができるんです。

「子どもにイライラしていたけど、参加してよかった。私が笑顔になると、子どもも笑顔になってくれることに気づいた」と涙するお母さんもいて、やってよかったなぁと思いました。

石川さんの夢は、東京オリンピックの開会式に出ることだそう。母子の元気な姿を、日本から世界へ発信してほしいですね。

そんな石川さんが描く「2030年の東京」はこちらです。
 
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石川さん これは今もなんですけど、時間と心に余裕がない母親が多いんです。そうすると、ピリピリした母親に恐る恐る接するようになったり、あまりにも長い時間保育園に預けられたり、皺寄せは子どもに向かいます。

それを防ぐには、男性の家庭進出が大事。パパも一週間くらい育休をとって、育児と家事に専念してみるといいと思うんです。そうすると、育児の大変さが夫婦の共通認識になって、お互いに労い合えるから。

それともうひとつ。子どもが生まれると、親は「◯◯ちゃんのママ、パパ」と呼ばれるようになります。いつでも子どもが中心なんですね。でも、出産前と地続きの、自分らしい自分でいられる場所があることが大事だと思います。

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イベントにはお子さんたち3人も来てくれました!

参加者が考える、「2030年の◯◯」とは?

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こうしてゲスト3人から話題を提供してもらった後は、それをもとに参加者全員でトークセッションを行いました。

円形になって発言したい人が中央の円に加わるフィッシュボウル形式で、発言者は地球型のボールを抱えます。人がどんどん入れ替わり、議論は白熱していきました。

「6時間勤務が一般的になれば、育児の問題も解決できるのでは?」「“長時間勤務=美徳”ではなく、“残業をしない人=できる人”とマインドチェンジすることが大事」「そもそも働くって何?」「ゆとりや余裕があると周りに目が向けられる」「日雇い労働など、余裕なく働かなければいけない人々を救う社会のフレームワークとは?」

…などなどさまざまな発言がなされましたが、話題は「働き方」に関することが中心でした。それだけ仕事や働くことに対して悩んでいる人が多いということかもしれませんね。
 
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セッションを通して参加者それぞれが「自分がいま何に関心があるのか、何が課題だと考えているのか」を整理した後は、それらを踏まえて「2030年の東京」のことを考える時間です。

まずは、参加者から「2030年の◯◯」というお題を10個出してもらいました。どんなお題が出たのか、下記に挙げていきましょう。
 
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・2030年の「個性と教育」を考えたい
・2030年の「定年後の暮らし」とは?
・2030年の「地方から状況してきた人の暮らし方」
・2030年の「働きながらのゆとり」って?
・2030年の「会社員以外の働き方」について
・2030年の「過疎の田舎」をなんとかしたい
・2030年の「自分の生き方、暮らし方」
・2030年の「遊び」とは?
・2030年の「幸せな家族」って?
・2030年の「職場の飲み会で愚痴が少なくなるには?」を考えたい

ご覧の通り、とっても多種多様!参加者にはこの10個の中から気になるお題を選び、テーブルごとに分かれて話し合ってもらいました。
 
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「なぜこのお題を選んだのか」をメンバー同士で共有し、お題について話し合います。どの班も盛り上がっている様子!
 
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ある程度話がまとまってきたら、各テーブルごとに「理想の社会をつくるために大事な3つのポイント」を書き出してもらいました。実際のプリントを写真でご紹介しましょう。
 
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「定年後の暮らし」班

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「過疎の田舎」班

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「地方から東京へ上京した人の暮らし方」班

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「理想の家族」班

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「働きながらのゆとり」班

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「個性と教育」班

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「会社員以外の働き方」班

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「遊び」班

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「自分自身の生き方」班

どの班も、初対面にも関わらず深い議論ができていたようです。「まだまだ話したりない!」という雰囲気でしたが、そろそろ終了の時間。

司会からの「今日楽しかった人?」という質問に、みなさん元気よく手を挙げてくれました。

2030年のこと、あなたも考えてみませんか?

最後に、青柳さんから本日の感想を教えてもらいました。
 
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青柳さん 私は今日、感動しました。生きるということに真正面に向き合っている人がこんなにいるんだ、それも自分のことだけではなくて、日本の将来をどうしたらいいだろうと考えている人がこんなにいるんだということがわかって、とても感動しました。

みなさん、遅くまでどうもありがとうございました。

とても満足度が高かった様子の青柳さん。この日の熱気や、参加者のみなさんから出たアイデアが、国への政策提言に活かされていくといいですね。
 
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みなさんも、少しだけ立ち止まって、2030年の社会のこと、2030年の自分の暮らしのことを考えてみませんか?

できれば、家族や友人と一緒に。もしかすると、「私もそう思う!」「その考えはなかったな」と話が盛り上がるかもしれません。

きっと、そうした対話から理想の社会づくりが始まるのだと思います。

その際、本特集「ぼくらの未来シナリオ」や、研究成果をまとめたパンフレットが役に立つはずです。よかったら、ご覧になってくださいね!
 
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(撮影:山本恵太)