みなさんは、幼いころに金魚やグッピーを育てたことはありますか?夏祭りの金魚すくいであったり、ペットショップでの出会いであったり、人によって思い出は違ってくるかもしれません。
今回紹介するのは、アメリカ・テキサス州のオースティン市に住む大学生が開発した、魚と植物を同時に育てるシステム「AquaSprouts」。都会に住んでいても自然の生態系を体感し、味わうことができる、新しい形の家庭菜園です。
「AquaSprouts」は、黒を基調とした本体容器と水槽の2つのパーツでできています。この容器を水槽にはめることで菜園が完成します。
システムの寸法は、幅約71cm×高さ43cm×奥行8cm(ライトスタンドを含めず)。アメリカで最も一般的な10ガロン(約38リットル)水槽に合うデザイン。付属の専用ライトスタンドを使えば、室内で置ける場所も広がります。(ライトは別途購入の必要あり)
では一体、どんな仕組みで魚と野菜が同時に育つのでしょうか?
循環のスタート地点は、下の水槽。魚の排泄物を含んだこの水がポンプによって上の容器に運ばれ、バクテリアが分解、これを栄養として植物が吸収し育ちます。そして、植物によって浄化された水が再び水槽に戻る、という「循環菜園」なのです。
「AquaSprouts」の構造説明図
実はこのシステムは、グリーンズでも以前紹介している「アクアポニック」と呼ばれるもの。
循環型であるがゆえに、節水ができたり、生態系を体感できたり、規模も自由に調整できたりと、様々な可能性を秘めた農法として注目を浴びています。これを家庭に身近な形でデザインしたものが、「AquaSprouts」なのです。
「AquaSprouts」を観察する子どもたちの前にはお皿が。小さな生態系を感じつつ収穫した野菜も味わえる、新しい自然との接し方です。
アクアリウムの世界に家庭菜園を
この製品の開発者であるJack Ikard(以下、ジャックさん)は、子どもの頃から熱帯魚の世界(アクアリウム)に夢中で、あるとき初めて「アクアポニック」について知ります。
この栽培方法を知ったとき、すぐに「これをアクアリウムの世界に持ち込めないか」と思いました。熱帯魚飼育の世界に新しい価値をプラスできると思ったんです。
「AquaSprouts」の開発者、ジャックさん
こうして「アクアリウム×家庭菜園」という発想が生まれ、高校時代には自作のシステムを完成。これを周囲に見せたところ、かなり好評だったそう。
高校時代に自作した初期のプロトタイプ。水だけで育てる栽培方法(水耕栽培)を採用しており、上に敷き詰められている粘土質ボールが、土の変わりになる「ハイドロボール」と呼ばれるものです。
そしてこのアイデアを製品化するために、2014年4月にクラウドファンディングプロジェクトを開始。しかし、目標金額(10万ドル)には届かず、プロジェクトは一旦停止。それでも、ジャックさんは諦めませんでした。
あれから5ヵ月。今回は新たに公式パートナーとして、アクアポニック業界をリードする米国の会社「Aquaponic Source」と”食の知的冒険”を届ける日本の会社「おうち菜園」を迎え、9月15日、2度目のクラウドファンディングプロジェクトをKickstarterでスタートしました。
一度であきらめなかったのは、この商品を求めている人が多くいると強く感じているからです。そして今回は心強いパートナーにも恵まれ、二度目の挑戦をします。
「AquaSprouts」は、すでに皆さんが持っている水槽をアップサイクルすることで、そこに新しい”芽”を生み出し、小さな生態系に変えるアイデアです。
アクアポニックの世界をもっとシンプルに、そしてより身近な形で家庭に届けることで、都会に住む人でも自然を感じ、味わうことができる機会を増やしていきたいのです。
と、ジャックさん。
私たちの生活は自然界の循環があってこそ成り立っているはずなのに、日々の暮らしで感じる機会って少ないと思いませんか?特に都会でそう感じる方は、多いかもしれません。
都会と自然、そして食。皆さんは、どんな仕掛けがあればこの3つがより身近な存在になると思いますか?
(Text: 江里祥和 / おうち菜園)
[via AquaSprouts, Kickstarter]
– INFORMATION -(2016年1月22日更新)
「AquaSprouts」が「おうち菜園」で販売開始になりました!
こちらの記事を寄稿いただきました、江里祥和さんの会社「おうち菜園」で、「AquaSprouts」の販売がスタートしました。
”さかなで、野菜を育てる”アクアポニックスを実際に体験してみたい方は、ぜひ!
http://aquaponics.co.jp/aquaspouts-product-page/
(編集デスク:スズキコウタ)