2014年の「カンヌ国際クリエイティブ祭」受賞作の連載「Cannes Lions 2014」。今回は、ブラジルで実施された事例「BENTLEY BURIAL」をご紹介します。
「愛車のベントレーを庭に埋葬します」
Facebookで突然そんな発表をしたのは、ブラジルでもっとも有名な富豪であるChiquinho Scarpa(以下、シキーニョさん)。
なんでも古代エジプトのファラオたちが自分たちの宝物を遺体とともに埋葬していたことにならって、自分が死んだあとも愛車に乗り続けられるように埋葬することに決めた、とのこと。
ベントレーというと、ベンツと並ぶ高級車の代名詞のような車です。前代未聞の発表は、「なんてもったいない!」という非難とともに、たちまち世間の話題に。
発表から一週間後、注目を集めるその埋葬の日に、シキーニョさんは報道陣を庭に招きました。そしてブルドーザーで掘られた大きな穴にいよいよベントレーが埋葬されるというそのとき、「その前に」と、報道陣をお屋敷に招き入れます。
固唾を飲んで見守る報道陣を前に、シキーニョさんはこうスピーチしました。
みなさん、ベントレーを埋葬するという話を聞いたとき、なんて不条理なことだと思ったことでしょう。しかし実に多くの人が、私の車なんかよりずっと価値のあるものを埋めてしまっているんです。それは、臓器です。私はこれは、世界で最ももったいないことだと思います。
続いて、臓器移植を広める活動をしている非営利団体を紹介。この騒動は、臓器移植についての意識を高めるための作戦だったと種明かしされます。
シキーニョさん
ブラジルでは臓器移植への意識が低いことが問題になっていました。土葬の習慣が残っている地域も多いため、まさに人を生かす可能性がある臓器のほとんどが埋められていたのです。
このベントレー埋葬騒動はネットはもちろん、新聞やテレビ、雑誌やラジオなどでも大きな話題に。臓器移植の問題とともに多くの人々に広がり、一ヶ月で臓器提供者を31.5%も増やすことに成功したのです。
日本でも、セレブの言動はなにかと注目を集めるもの。その注目を社会のために生かそうとするのが、本当のセレブといえる時代が来ているのかも知れませんね。
カンヌ2014の連載は、まだまだ続きます。次回も、お楽しみに!
(翻訳アシスタント:猿田幸絵 /「greenz global」編集部)