ショッピングセンター「オウル五香」に今春オープンしたコミュニティスペース「ほうほうステーション」
千葉県松戸市で「クリエイティブな自治区」をつくるまちづくりプロジェクト「MAD City」。DIYでの改装OK・原状回復なしの賃貸物件を貸し出す不動産事業や、入居者同士の交流を促すコミュニティづくり、コワーキングスペースの運営などを展開しています。(詳しくはこちら)
最近ではまちづくりのノウハウを生かし、ショッピングセンターを巻き込んだコミュニティ形成にも活動が広がっています。今回は、ショッピングセンター「オウル五香」(松戸市)にオープンした「ほうほうステーション」の取り組みをご紹介します。
ほうほうステーションって?
ほうほうステーションは、2014年4月にショッピングセンター内にオープンしたコミュニティスペースです。
平日は絵本を読める休憩スペースとして利用されており、週末には絵本の読み聞かせや絵本の交換会、MAD Cityのアーティストによるワークショップなどが開催されています。
絵本が置かれている棚は可動式のベンチで、スペースの用途に合わせて自由にレイアウトができる。MAD Cityに入居する西尾健史さんによる製作
取材当日には、絵本に書かれているキャラクターを自由に大きな紙に描くワークショップが行われていました。MAD Cityのクリエイターによるワークショップは、広いスペースを生かした大胆なもの。普段なかなかできない体験とあって、子どもたちにも大人気でした。
その他、「つなギブ」という紙を使った巨大ボールづくりなど、様々なワークショップを定期的に開催。親子連れを中心に市民に広く利用され、リピーターも増えてきています。
「ほうほう」というネーミングの由来は、来た人が「ほぅほぅ」と聞き入ってしまうようなイベントやワークショップで、暮らしをクリエイティブに楽しむいろいろな「方法」を知ることができる、ということ。また、松戸市の鳥であり、オウル五香のネーミングともつながるフクロウの鳴き声もイメージして名付けられたのだとか。
「ほうほうステーション」には、今日も市民みんなの「ほうほう」が集まり、新たな出会いと気づきを生み出しているのです。
ショッピングセンターに、消費以外の機能を
ほうほうステーションが誕生した背景には、老舗ショッピングセンターならではの悩みがありました。オウル五香には、スーパーや衣料品店、雑貨店など様々なお店が入っていますが、来店するのはシニア層が多数。最近は若い人たちの来客が減少傾向にありました。
そこで、買い物だけではなく「地元の若い夫婦が気軽に立ち寄れる場所」にしようと、MAD Cityを運営するまちづクリエイティブとオウル五香でほうほうステーションの企画を練っていったのだとか。
オウル五香の運営担当・鈴木浩文さんは、この企画を提案した背景についてこう語ります。
鈴木さん ショッピングセンターの再生にはハード面だけではなく、ソフト面が重要です。消費以外の機能として、地域の人たちが集い、活動していただけるような場所をつくりたいと思い、「まちづクリエイティブ」さんにお声がけしました。
約1年の準備期間を経て、今年4月末にオープンしたほうほうステーション。まちづクリエイティブ代表の寺井さんは、アーティストがこの企画に関わることについて、このように語ります。
寺井さん MAD Cityにいるアーティストやクリエイターがこのように地元の仕事で活躍できる環境をつくることは、僕らにとっても挑戦です。最近ではクリエイター側から自発的に、新たな企画を提案してくれる、といった動きも出てきています。
これからは物件を貸して終わり、ではなくその後の暮らしや仕事面でもサポートしていきたいです。
オウル五香にとっても、MAD Cityプロジェクトにとっても、新しいチャレンジの場であるほうほうステーションが、アーティストやクリエイターのアイデアで、これからどのように形を変えていくのか。
また、アーティストのみなさんがどのように活躍の幅を広げていくのか、今後がとても楽しみです。
「まちづくり」の拠点へと変化するショッピングセンター
近年、郊外型ショッピングセンターが各地で増え、様々な店やサービスが集まった商業の中心となっています。そしていまやショッピングセンターの存在は、その地域に住む人たちの暮らしに密接に関わっています。
ショッピングセンターというと、地域の商店街と対立しているようなイメージを抱きがちですが、「最近では地域のまちづくりに積極的に関わりはじめている」と寺井さんは言います。
寺井さん 例えば、ショッピングセンター内でも様々なイベントを開催している例が増えています。中には、地域のお祭りで使う御神輿を置くスペースを提供したり、商店街の中にショッピングセンターのテナントが入ったり、という事例もあるんです。
この背景には、ショッピングセンターが増えて飽和状態にあることが挙げられます。競争が激しく、売上をあげるためにはできるだけ日常的に長い時間ショッピングセンターで過ごしてもらう必要があります。
寺井さん そういったショッピングセンターの再生に、まちづくりやコミュニティ運営のノウハウが必要とされる時代が来たように思います。古くからあるショッピングセンターと対立するより、むしろ再生に協力すれば、まちづくりや地域住民のためにもプラスになると思います。
ほうほうステーションが、訪れることで知り合いが増えたり、楽しいことに出会えたりする場所になり、さらにこれからは地域の人たちが活用できる、開かれた場になっていってほしいです。
ほうほうステーションは、ショッピングセンターを一つのコミュニティの場として捉え直す試み。実際にスペース利用に関する問い合わせも届いているとのことなので、寺井さんの想いが実現する日もそう遠くはなさそうです。
リピーターを増やして、徐々に地域に根付く
オウル五香の鈴木さんも、この場所の成功イメージについてこう話します。
鈴木さん 買い物の用事がなくても、訪れてくれる人が増えることですね。今後は地域の自治会や学校関係などの自活組織などにも活用していただき、この場所に関わる主体を増やしていきたいです。
ほうほうステーションでは、この場所を活用したい団体を随時募集中とのことなので、関心のある方はぜひオウル五香に問い合わせてみてくださいね。
老舗ショッピングセンターを起点にしたまちづくり。アーティストやクリエイターが参画することでユニークな企画が生まれ、ワークショップのファンも増えてきています。地域のコミュニティをつくる、このようなソフト面からの取り組みは、今後ますます広がっていきそうです。