前回からお届けしている、2014年の「カンヌ国際クリエイティブ祭」受賞作の連載「Cannes Lions 2014」。今回は、スーダンで実施された事例をご紹介します。
アフリカのスーダンでは、南北の国境をめぐる激しい紛争が続いています。この紛争では民間人の多くも犠牲となっており、これまでに5万人以上の人が腕を失っているそうです。そして悲しいことに、その多くは子どもたちと言われています。(出典元:BLUNTBIT)
そんな子どもたちを救うため立ち上がったのが、テクノロジーとクラウドソーシングを活用して世界のさまざまな医療問題を解決するチーム「Not Impossible Labs」。
スーダンに向かったチームが出会ったのは、両腕を失った14歳の少年、ダニエルくんでした。ダニエルくんは、自分ひとりで何もできないことや、家族など周りの人々に迷惑をかけていることに悩み、生きる希望を失いかけていました。
ダニエルくん
そんなダニエルくんのために、Not Impossible LabsはIT企業のIntelとエンジニアリング企業のPrecipartの支援のもと、「PROJECT DANIEL」というプロジェクトをスタートしました。
世界のロボットハンド開発者や神経学者からなるチームが開発したのは、3Dプリンターとノートパソコン、そしてプラスチック部品を使って、100ドルという低価格で義手をつくる仕組み。
プロジェクトの代表であるMick Ebeling(以下、ミックさん)は、ノートパソコンと3Dプリンターと部品を持ってダニエルくんのもとへ。世界の英知と最新の技術は、ダニエルくんに腕と生きる希望を取り戻すことに成功しました。
PROJECT DANIELのチャレンジはさらに続きます。次の目標は、ダニエルくん以外の子どもたちにも3Dプリンタでつくった義手を届けること。チームはスーダンの現地にオープンソースのラボをつくりました。このラボはハードをそろえただけでなく、ミックさんがいなくても義手がつくれるように、現地の人たちにレクチャーも行っています。
レクチャーをするミックさん
この取り組みを紹介したコマーシャル映像は、14週間で420万人もの人々が視聴したそう。そして、世界中のメディアが詳しく紹介することで、このプロジェクトはスーダンにおける現実とともに、より多くの人に伝わる結果となったのです。
ITなどのテクノロジーは、ただ便利や効率だけのためのものだけではない。そのことを体で知った子どもたちがつくりだす、新しいスーダン、新しい世界に期待するとともに、一日でも早くスーダンに平和が訪れることを祈ってやみません。
カンヌ2014の連載は、まだまだ続きます。次をお楽しみに!
(翻訳アシスタント:スズキコウタ/「greenz global」編集部)