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ありのままを魅せる水着で美を問い直す。フィンランド発、乳がんを克服した女性たちのアートプロジェクト「Monokini 2.0」

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Photo courtesy: Monokini 2.0

みなさんは、どういうときに女性の美しさを感じますか?

明るくハツラツとした表情や、凛とした眼差しで物事に取り組む姿を目にしたとき、心の内に秘めた強い志や思いが垣間見えたときなど、様々な瞬間があげられるのではないでしょうか?

今回ご紹介する取り組みの主人公は、片方の胸を切除する手術を経て、乳がんを無事克服した女性たち。身体のひとつのシンボルである乳房を失った彼女たちがモデルとなって、失われた乳房が隠れない水着を着るアートプロジェクトがスタートし、いま注目を集めています。
 
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Photo courtesy: Monokini 2.0

Monokini 2.0」は、一人の女性が抱いた思いをきっかけとして、北欧のフィンランドで始まりました。

自らもデザイナーとして参加しているElina Halttunen(エリーナ・ハルットゥネン、以下エリーナさん)はかつて、片方の乳房を切除する手術を受けて無事乳がんを克服。

泳ぐことが好きだった彼女は、術後、片胸だけの自分にもフィットするような水着を探したものの、適当なものを見つけるのは難しく、結局”monokini”(上下一体の水着)を自分で制作することにしました。

その時エリーナさんは、「自分の身体に合う水着が無くて悩んでいる、同じ境遇の女性がほかにもきっといるのではないか」という思いを抱きます。

そんな彼女のアイデアに、フィンランドを拠点に活動するアーティストやデザイナーが次々と賛同。様々な思想やポリシーを持つ彼らによって、芸術的な表現も強く織り込まれた様々な水着が制作されることになりました。
 
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エリーナさん自身もモデルとなり、自らデザインした水着を着用。Photo courtesy: Monokini 2.0

Monokini 2.0では、男女合わせて10名がデザインを担当。カメラマンやグラフィックデザイナーもチームに参加してプロジェクトが展開されています。

エリーナさんが直感した通り、個性豊かな作品群をウェブページで公開したところ、胸を乳がんの治療で失った女性たちから、自分もぜひモデルとして参加したいという声が寄せられるようになったそうです。
 
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Photo courtesy: Monokini 2.0

例えば、集まったボランティアモデルのうちの一人であるこちらの写真の女性は、参加した感想について次のように語っています。

私の姿を収めた写真が、手術で乳房を切除した女性たちにとって、心の支えになったり、希望になったり、勇気の源になったりすればいいなと思っています。女性であることはなにも、胸があることばかりを言うのではないのですから。

Monokini 2.0を通して、こういう話題についてもっと気楽に自然な形で話し合えるようになったらいいですね。

現在、プロジェクトをさらに拡大させるために、北欧各国の美術館などで写真展を開催中。将来的に作品を製品化することも検討されているようです。

先入観や固定観念を見つめ直す

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Photo courtesy: Monokini 2.0

“Who says you need two?”(「ふたつ無いといけないなんてだれが言ったの?」)というストレートなスローガンを掲げている「Monokini 2.0」ですが、目指しているのは単に水着を制作することにとどまりません。

プロジェクト全体のアートディレクションを手がけるアーティストデュオは、次のように話します。

理想の美をめぐる問題は、私たちの創作活動の中心テーマです。どういうものが美しいと考えられて、どういうものが受け入れられないのか。そういう私たちの文化の規範を深掘りしてみることに、一番の関心があります。

日本ではあまり馴染みのない大胆なスタンスのアートプロジェクトですが、女性という性別や乳がんという病気にかかわらず、自分らしさや身体の状態、またその美しさについての先入観や固定観念を見つめ直すきっかけとなる、素敵な取り組みではないでしょうか。

ぜひ、ほかにモデルとして参加している女性の姿や思いもご覧になってください。

[via: Monokini 2.0]