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愛する人との最期の瞬間に、誰もが立ち会えるように。末期ガン患者の家族にマイルを寄付する仕組み「The Extra Mile」

2014年6月20日に公開した記事を再編集してお届けします!

いつもは離れて暮らしていても、大切な人の最期の瞬間には立ち会いたい…それは誰もが抱く自然な思いです。とはいえ経済的に余裕がなく、その場に立ち会えなかったという人もいるかもしれません。

少しでもそんな困っている人を減らしたい。その想いから始まったのが、末期ガン患者の家族に飛行機のマイルを提供する「The Extra Mile」というプロジェクトです。

The Extra Mileを立ち上げたMatt Dimmer(以下、マットさん)は、シカゴからロサンゼルスに引っ越したばかりのときに、父親が末期ガンだと知らされました。お父さんが亡くなるまでに、毎週のようにシカゴへ通う中で、ひとつの問いが浮かんできます。それは、「自分は頻繁に父親に会うことができたけど、その余裕がない人はどうしているんだろう?」というものでした。

飛行機で移動するには、お金だけでなく航空会社が提供しているマイレージも使えます。でも、人によっては使う機会がなく、期限が切れてしまう人もいるはず。そこで末期ガン患者の家族のために、マイルを提供する非営利団体を立ち上げることを決意したのです。

各国の航空会社が会員に向けてマイルの寄付を呼びかけていますが、寄付先の多くが大きなNGOやNPOです。The Extra Mileは現在マイルを提供してくれる航空会社が見つかっておらず、まずはクレジットカード会社と提携し、そのポイントをマイルとして寄付したり、引き落としによる寄付を受け付けています。

父親に会いに行ったJJさん

最初のフライトの受け取り人は、JJ Rolleさん(以下、JJさん)。グルジア出身でシアトルを拠点に活動する53歳の俳優です。

同性愛者であるJJさんは、お父さんとセクシュアリティや仕事観のすれ違いから不仲となり、23年間一度も顔を合わせていませんでした。そんなあるとき、妹からガンがかなり進行していて深刻な状況であることを知らされます。

しかし、彼にはグルジアまで行くためのお金がありませんでした。そんなとき始まったばかりのThe Extra Mileのことを知り、マットさんのもとにメールが届いたのです。

無事に病院に着いて、23年ぶりにお父さんと再会したJJさん。いくら話しかけても、お父さんは人口呼吸器につながれたまま目を閉じ、無反応…そこでJJさんがお父さんの手をにぎると驚くべきことが。なんとお父さんも、JJさんの手をぎゅっと握り返してくれたのです。

このときの経験をJJさんはこう振り返ります。

このとき私にとって、過去が変わったのです。愛する誰かの悲しい知らせ聞くと、良いことも悪いことも、さまざまなことを思い出します。愛する人と心の中でいつも寄り添い、残りの人生をともにするのです。

もし過去にしがらみがあって、どこかで後悔したままになっているのなら、死の瞬間に立ち会うのは、それらを取り除く最後のチャンスなのだと思います。

愛する人の死は言葉にはできないくらい悲しいこと。それを前向きに乗り越えるために、「最期の瞬間に誰もが立ち会えるようにしたい」というマットさんの思いは、ニュースに取り上げられるなど少しずつ注目を集めているようです。

使われていなかったポイントを非営利団体や社会活動に寄付する仕組みは普及しましたが、本当に必要な人に貢献できたという実感が持ちにくいときも。さまざまな人に大切な機会を提供するこの仕組み、日本で展開するには何から始めたらいいのでしょう。一緒に考えてみませんか?

[via FastCompany, theextramile]

(Text: 大久保咲希)
(編集: 兼松佳宏、スズキコウタ)