こんにちは、greenz.jpジュニアライターの宮本です。
読者のみなさんの中には、「グリーンズってどうやって成り立ってるんだろう?」とか、「グリーンズが多くの人を惹きつけているヒミツを知りたい」と思っている人も、多いのではないでしょうか?
そんな疑問に答えるべく「green Books」レーベルからリリースされたのが、この『グリーンズのつくりかた』(64ページ)です。
「green Books」レーベルは、2013年からグリーンズが取り組んでいる、「ほしい未来のつくり方」がわかるブックレーベル。といっても、その本、本屋さんにならんでいるわけではありません。NPO法人グリーンズの会員である、「greenz people」のためだけに出版されるという、とてもぜいたくなブックレーベルなのです。
2月に完成し、会員のみなさまにお届けしている『グリーンズのつくりかた』はその第二弾。今回はその気になる中身について、編集を担当したグリーンズ代表の鈴木菜央さんに聞いてみました。
鈴木菜央さんへのインタビュー
本を持っているのは、菜央さんの娘さん(7歳)
鈴木菜央(以下菜央) 「グリーンズについて話をしてほしい」という依頼で講演に行くことが多いのですが、終わった後「で、結局グリーンズはどうやって成り立ってるんですか?」って、とく聞かれるんです。なので、いつか、まとめてみんなに見えるカタチで本を出してみたいな、と前々から思っていました。
それに、グリーンズって、メディアとしても、組織としても、働き方としても実験しているようなところがある。そんな日々のチャレンジや、空気感をみんなと共有できたら、なにか価値を持つんじゃないかなって。でもやってみたら、意外とまとまらなくて(笑)
ただデータを出せば伝わるものではないし、仕組みを図式化しきれないところもある。いろいろ考えた結果、シンプルに、greenz people のみなさんから質問をいただいて、コアメンバーの3人(兼松佳宏、小野裕之、鈴木菜央)で答えるという形式にしてみました。
(右図はグリーンズのコミュニティ概要。アメーバのような組織をどう図式化するか、悩んだそう)
greenz peopleの質問。答えるのに苦労したそう。
宮本 どんな質問が集まったんですか?
菜央 質問は8つです。どれも、答えるのがハードなものばかり(笑)
Q1. 楽しく活動を続ける秘訣はなんですか?
Q2. 新しいことにトライし続けるためには?
Q3. ムーブメントのつくり方を教えてください!
Q4. 持続可能性のあるコミュニティの作り方は?
Q5. 企業に営業に行かれるとき、最初の一歩はどんな形?
Q6. グリーンズでは、中期戦略などは作ってるんですか?
Q7. 普通の高校生に関心を持ってもらうためには?
Q8. 結局駄目だった/続かなかったプロジェクトは?
宮本 ほかにも、データページもあるんですよね。
菜央 はい。2006年にgreenz.jpが始まってから今までのアクセス数の推移や、人気だった記事の一覧、グリーンズのメンバーが、どこに何人くらいいて、どんな役割なのか?という図をつくったり。他にもグリーンズの歴史をまとめたページや、NPOなので会計報告まであります。
greenz.jpで過去に人気だった記事一覧。歴代1位の記事は、なんとあの記事!
グリーンズの歴史をまとめたページ。いろいろありました。
宮本 かなり盛りだくさんですね。見どころをひとことでいうと?
菜央 できるだけ生のまま、「グリーンズの成分、構成要素」をお届けしたいと思ってつくったので、音楽で言うと「一発録り」「ライブ盤」っぽいところですね。会話のまま、あまり丸めずにまとめています。メンバー間の意見の相違や、まだ見えていないこと、プロセスそのものも見せてみたいなと思って。
greenz.jpも、グリーンズ全体も、まったく完成形じゃないんです。むしろ完成はない、って考え方で、今僕たちが見えていること、考えていることが伝わるといいですね。
宮本 最後に、もうひとつおまけがあるとか。
菜央 そうなんです。紙面の都合上、どうしても載せられなかった質問がありまして、ここで公開したいと思います。少しでも『グリーンズのつくりかた』の雰囲気が伝わるといいですね。
そして、本に興味を持っていただいた方は、greenz peopleを検討していただけると嬉しいです。よろしくおねがいします!
2007年ごろのgreen drinks Tokyoの写真
ナカムラケンタさんの質問にコアメンバーが答えます!
リトルトーキョーで3人がやりたいことは、それぞれどんなことですか?市民として、開拓者として、グリーンズとして、主語はいろいろあると思います。
(「日本仕事百貨」代表 ナカムラ ケンタさん)
左から編集長兼松佳宏、発行人鈴木菜央、フクヘン小野裕之
小野裕之 僕はなるべく、みんながやりたいことの実験ができるといいなぁと思っていて。それは自律してやっていく大人たちが増えるといいなぁと。僕はリトルトーキョーの「はじめるひとの、つくるまち」というコンセプトを、そう理解しています。
あとは、そのやり方が大阪や福岡みたいに、ちょっと離れた場所での活動が増えているグリーンズのの運営にも活きてくるかもしれないし。とにかく、グリーンズやシゴトヒトといったコアスタッフはどっぷり関われないけど、自律的なコミュニティを育ていくために、外側からのサポートがどうできるかをいろいろと試行錯誤していきたいですね。
菜央 なるほど。
小野 たとえば、リトルトーキョー市民のなかに、陶芸家をやりたい人とセレクトショップをやりたい人がいたら、「一緒にやったら?」って外側からアドバイスだけして。なるべくコアスタッフがいないと物事が前に進まないという状態にはならないようにしたいなぁと。本当は自分たちで考えて「こうしていいですか?」って提案してくれる人がたくさんいればいいんですけど、なかなか難しくて・・・。
菜央 それはたぶん、大きな矢印が必要なのかなと僕は思っているんだよね。隙のない東京に隙間をつくろうというのがリトルトーキョーで、それはいいよねとみんな思ってくれてる。でも、どういうところに矢印が向いているのかが、明確ではない。ある意味、わざと、という部分もあるけど。
なにか明確なゴールがあって、そこに向かう矢印に惹かれてみんなが集まってきて、お互いを見るよりも向こうを一緒に見て歩いていく。そうするとやることも明確だし、居場所になる。
僕が今興味のある矢印は、「暮らしをつくる」ってことなんだよね。究極のお客さんである、都市に住んでいる僕たちが、どうやったらお客さんじゃない暮らしを取り戻せるのか。リトルトーキョーには土地もあるから、すでにソーラー発電は始めているけど、他にも畑をつくって野菜を育ててもいいし、雨水タンクをつくってもいいし。
そうしてたとえば、夏はソーラーで発電した電気で扇風機を回して、畑でとれた野菜で小さいパーティを開く。そういう東京の中で暮らしを取り戻す実験場にしたいですね。で、それが「わたしたち電力」の企画になったらいいなぁと思っています。
兼松佳宏 なおくんが「わたしたち電力」をやりたいみたいに、僕は「わたしたち大学院」をここでやりたい。それぞれの専門性を持ち寄った学びの場をつくること。編集スクールをやってみて、リトルトーキョーは1階も2階もあって学びの場としてはすごくいいなと思って。
小野 僕はそういう矢印って必要ないんじゃないかって、この前ケンタさんと話していてすごく思って。 みんな意識が高いっていうことに対して居心地の悪さを覚える人は一定数いるので、ある意味、明確な意志やゴールがあるわけではない集合体の方が「居場所」としては居心地がいいのかなと。
菜央 でもおのっちが言っていることも、結局は矢印なんじゃないかな。商いをやりたいなら小さくてすぐできることから始めて大きくしていけばいいじゃん、なんでその実験おもしろいのにやらないの?っていう矢印。
兼松 「わたしたち商店街」なんだ。
菜央 矢印は、全体の矢印が必要と言うつもりはなくて、それぞれ実験したい人が矢印を持ち込んでみればいいんじゃないかと思って。僕は「暮らし」で、YOSHは「学び」だし、おのっちは「商店街」。で、仕事百貨にも仕事百貨の考えとかやり方はあるから、リトルトーキョーはみんなが共存できる場になればいいんじゃないかと思う。
兼松 僕らが持ちこむように、「わたしたち◯◯をやりたい」って人が出てきてもいいってことだよね。「わたしたち工房やりたいんですけど」っていう市民が出てきて、そこでまた人を巻き込んでやっていってもいいと。
菜央 もちろん!
兼松 お店をつくりたい人はおのっちと一緒にやればいいし、学びの場をつくりたい人もいるだろうし、暮らしをつくりたい人もいるだろうし。それ以外にやりたいことがあれば自分でつくればいい。
菜央 たとえば区にわけて、「暮らし区」「学び区」「商店街区」。ナカムラケンタも「なんとか区長」になってもらって。それぞれ相談のときは第◯何曜日にここね、みたいな。
兼松 その区長が今後いっぱい出てきて、ムーブメントになってく。
菜央 区長がたくさんいて、「商店街のことなら◯◯区長が1番詳しいから聞いてみよう!」みたいになっていくとおもしろいよね。
メディアとしても、組織としても、働き方としても実験しているグリーンズ。ここで話された内容も、きっと半年後には実際のプロジェクトとして実現しているかもしれません。(あるいはいっそやめていたりも!?)
そんな日々のチャレンジの様子は、 greenz people(グリーンズ会員)になると受け取ることができる限定メールマガジンなどでもお届けしています。
『グリーンズのつくりかた』がほしい!という方も、グリーンズに興味を持っていただいた方も、ぜひこの機会に greenz people になって、ほしい未来をつくる一員になりませんか?
(Text: 宮本裕人)