2013カンヌ受賞作の連載、今回は中国からの事例をご紹介します。
ある日突然、姿を消す子どもたち。中国では年間約2万人もの子どもが行方不明になっており、その多くが誘拐によるものとされています。誘拐の目的は、身代金ではありません。労働のための奴隷や、売春、あるいは物乞いをさせるために、子どもたちを売るのです。
子どもたちを取り戻したい。そんな親たちの願いにこたえるために活動しているのが、「Baby Back Home」という団体です。
団体のホームページには、行方不明になった子どもたちのプロフィールが公開されているのですが、広い国土のなかで小さな子どもを見つけるのはとても難しく、成功例はあまりありませんでした。
しかし、希望はあります。中国には14億人もの人びとがいるのです。多くの人が簡単に子どもたちを探すボランティアに参加できるようになれば、子どもたちが見つかるチャンスがぐっと広がります。
そこで「Baby Back Home」が活用したのが、モバイル端末のカメラを使った顔認証技術です。カメラで写した顔と団体がもつ行方不明者のデータベースと照合できるアプリ「Missing Children APP」を開発。街をひとりで歩いていたり、働かされている子どもたちの写真を撮るだけで、行方不明に鳴った子どもたちを探すボランティアに参加できるようにしたのです。
同時に、アプリを知らせるためのPR施策も実施しました。主要な街の公共スペースに、子どものところがぽっかり空いた家族の彫像を展示。AR技術を活用し、彫像を撮影すると、行方不明になった子どもたちの写真とプロフィール、そして音声などが現れ、アプリのダウンロードを促すしくみになっていました。
このPRがさまざまなメディアで取り上げられたこともあり、「Missing Children APP」はリリースから1週間で2万ダウンロードを達成。そして二組の親と子どもの再会を成功させるという好スタートを切りました。
最新の技術と、たくさんの人の気持ちがひとつになることで、かけがえのない子どもたちが救われるという仕組み。さらに広まることで、多くの子どもたちが見つかることはもちろん、誘拐、そして人身売買の抑止につながるのではないでしょうか。
カンヌライオンズ受賞作の連載は続きます!引き続きお楽しみに。
(翻訳協力:モリジュンヤ)