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たとえ大変でも、体が喜ぶことを。自然のあるがままを受け入れて、美味しい野菜と向き合う「自然農園TOM」[野良的生活のススメ]

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特集「野良的生活のススメ」は、“野良”な生活、“野良”な働き方を探求する連載企画です。自由気ままに人間らしく、自然のリズムと共に生きる人々の知恵やアイデアを掘り下げ、野良的な感性をみなさんの元へ届けます。

「自分らしく生きたい」と、多くの人が願います。自分が本当はどうしたいのか、体の声に耳を傾けてみる。そのために、土に触れ、自然と向き合いながら感性を高めることで、自分の求める生き方を知ることができるかもしれません。

今回の特集「野良的生活のススメ」でお届けするのは、成田空港からほど近い千葉県山武郡にある「自然農園TOM」です。

自然のあるがままを受け入れ、素直に向き合う

畑に足を踏み入れてまず目を引くのは、立派なドングリの木や杉の木。多くの農家さんは切ってしまうところを、「あえて残している」と話すのは、「自然農園TOM」の戸村重雄さん。

そのほうが自然に合っていていいと思ったから残したんだ。そしたら、木々の落ち葉や実が畑に落ちて堆肥になるんだよね。風がちょうど良く散らしてくれる。思いがけず雪の降った日には、これらの木々が屋根になってくれたこともあるよ。

その土地に生きる植物が土に還ることで、土を豊かにし、次の生命を育んでいきます。自然の循環を大切にするために、戸村さんは農薬や化学肥料は使いません。そして、刈り取った雑草や野菜くずを土に還すことで、有機肥料も基本的には使っていません。
 
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土に還るドングリの実

酷使しなければ、少し手を加えるだけで十分育ちます。子どもを育てるように、暑ければ団扇で扇いであげたり、風の強い寒い日はカーディガンをかけてあげたりする。無理に見ようとすると見えないけれど、素直に向き合うとふっと見えてくる。

自然の条件は毎年ちがいます。春は風の強さを感じ取り蒔いた種を守る、冬は霜に負けてしまわないようにちょうど良い深さに種を蒔く、台風で大雨が降った時には土が流れ出ないよう水の動きを見る。大いなる自然を前に、戸村さんは柔軟に挑みます。

自分らしく自然と向き合ったことで、今の農法にたどりつく

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カブを手に取り、話をする戸村さん

戸村さんは約30年前に、有機農業をはじめました。農薬と化学肥料を使わない農法がめずらしかった時代。安全なこだわった野菜をつくりたいという想いで仲間達と販路を切り開き、生産に追われるほどになります。転機となったのは、休養のため2年ほど農業から離れた時のこと。

荒れた畑を手入れしながら、もっと自分に合ったやり方をしたいと思ったんです。自分のペースでじっくりと自然に向き合っていくうちに、今のやり方にたどり着きました。

そしてその頃から「青山ファーマーズマーケット」に出店し、市場を介した販売方法をやめて、対面販売に挑戦します。

「青山ファーマーズマーケット」を選んだ理由は、有機農法・自然農法という枠に限定されない多種多様な農家が揃う場所で、自分のやり方を主張したいと思ったから。例えば、大根は自然に育てると、ものすごく辛い。だから有機肥料を入れるなど手を加えて、お客さんに受け入れられる味にアレンジする。美味しさとは、体が受け入れられる味だと思うから。

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やさしい甘みのある赤筋大根

たとえ大変でも、体が喜ぶことを

このほうれん草は50歳くらいだね。ほら茎に空洞があるでしょう。人間の年に例えて話すと、お客さんに伝わりやすいんだよね。

戸村さんは慣れた口調で話します。しかし対面販売を始めた頃は、ブースの後ろにずっと立っていたといいます。

手伝ってくれるスタッフから、接客について一から教わるなど苦労もあったけど、周りに支えられ続けることができました。おかげで固定客もついて嬉しい反面、気が抜けない。「青山ファーマーズマーケット」への出店準備も一人でするので体力的には大変だけど、体がおもしろがっているから続けられる。

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ほどよく水分を含み、ふかふかとした感触。少し掘ると関東ロームと呼ばれる赤土が出てきます

仕事を通じて人とつながり、感性を育み、自分を高めていくこと。自然体で語る戸村さんには、なんとも言えない豊かさに満ちているように感じました。体を動かして汗をかき、地に足をつけるだけでなく、何より「今を生きること」こそが、“野良的”な暮らしといえるのかもしれません。

青山ファーマーズマーケットにお立ち寄りの際は、ぜひ戸村さんの手がけた野菜に会いに行ってみてください。