ハドソン川を下る船
みなさんの住んでいる場所に、川はありますか?あったとしても、特に意識して川を”使う”という目線で眺めることは、なかなかないかもしれません。
今回ご紹介するのは船で川を下ってローカルグッズの販路を拡大し、地域を元気付けるという、古くて新しいユニークなプロジェクトです。
場所はアメリカ北東部のバーモント州。カナダの国境近くから大都会ニューヨークまで、ハドソン川という大きな川が流れています。なんと長さは500km!そのハドソン川の流れは静かで汚染も少なく、船を比較的自由に停泊させることができることで有名。そこにErik Andrus(以下エリックさん)という起業家マインドにあふれる農家さんが目をつけました。
船上のエリックさん
さっそくエリックさんは「Vermont Sail Freight」というプロジェクトを立ち上げます。小麦や肉といった農産物だけでなく、ヨーグルトやチーズ、ハーブなどこだわりの農家さんと提携したさまざまな特産品を載せ、帆船をポップアップストアにしてしまったのです。
仕組みはいたってシンプル。オンラインで欲しいアイテムを注文すると、なんと船乗りたちが最寄りの港や係留所まで届けに来てくれます。お届けする直前に電話やメールで到着時間を報告してくれたり、払い戻しも可能だったりと細かい気配りもバッチリですね。
ちなみに普段は米農家として働くエリックさんですが、以前は木工に関わる仕事の経験の持ち主で、彼の自慢の帆船CERES号は、なんと彼自身のデザインなのだとか。
彼がデザインした船”CERES”
19世紀頃には地域の流通にとってなくてはならない存在だったハドソン川も、20世紀以降は車にその役割を奪われてしまいました。しかし風を動力として動く帆船を使えば、物流にかかるエネルギーコストを下げることができ、環境保護にもつながるはず。
道路が整備される前は、川こそが生産者と消費者とをつなげていたものでした。そんな歴史的な風土を復活することで、そのつながりの深さをもう一度知ってもらえたらと思います。
と、エリックさんは言います。
帆船で運ばれるグッズ
グリーンズでも「水都大阪」や鶴見川の取り組みなど”川づくり”の事例を紹介してきましたが、もともと日本でも多くの都市が川とともに発展してきたからこそ、その可能性をもう一度見つめ直す時機なのかもしれません。
あなたも近くの川の使い方を考えてみませんか?
Vermont Sail Freight Project: Maiden Voyage from Visual River Studios on Vimeo.
(Text: いむきょんみん)
[via Fast Company]