渋谷駅から歩くこと7分。喧噪を抜けた静かな場所に、青山オヤコサロン「BONHEUR DE SAKURA(ボヌール ド サクラ)」はあります。
サロンのなかは、シックで落ち着いた大人の空間。そのなかに、選び抜かれた絵本やおもちゃが美しく置かれています。
「子育て中のママが落ち着ける場所をつくりたかった」というオヤコライフクリエイターの石井櫻子さんに、オヤコサロンを始めた経緯をお聞きしました。
子ども連れの外出は、休める場所もなかった
青山オヤコサロン ボヌール ド サクラ代表の石井櫻子さん。親子で楽しめるカフェ。英語でおててサインなどレッスンやワークショップも開催。
石井さんはもともと、都内の高級ホテルでウェディングプランナーとして15年ほど勤めていました。2人のお子さんを出産して、週末の外出が大変になり、落ち着いて休める場所もない…。それから、オヤコサロンという場の提供を考えるようになったと言います。
外出すると、子ども目線のお店ばっかりで。それがオヤコサロンをオープンしたきっかけのひとつですね。
私自身の趣味志向は何も変わっていないのに、親子というと、その瞬間からパステルカラーなどの色合いになって、クマやうさぎのイラストが並ぶような世界観のお店しか用意されていない。こういう世界観は好きじゃないなって思ったんです。
こうして「ママの願いを叶える場所」として、2012年6月に会員制の青山オヤコサロン ボヌール ド サクラをオープン。お子さんと一緒に楽しめる、ヨガレッスンやアロマテラピー講座などのイベントやワークショップを随時開催。またママ会やお誕生日会で借りることのできる場にもなっています。
「子ども用」を用意しないというこだわり
親子カフェという形態のサロンですが、普通であれば入り口にゲートがあるもの。石井さんは、「子ども用のゲートはわざとつけていない」と言います。
女性が子どもを産むんだという覚悟をしたその瞬間から、親子なんですよね。逆に言うと、ママには、常にその視野には子どもがいるっていう、その覚悟を持って産んでほしいという気持ちもあって。
例えば子どもを自由に遊ばせることのできる、独立型のプレイルームがあるカフェもあります。子どもを見てくれる人が常時いて、ママたちは子どもを見なくても大丈夫。そうしたカフェにしていないのは、「母と子は切っても切っても切れないもの」という石井さんのこだわりがあります。
母と子は、たとえ一緒にいない時間でも、時空を超越してつながっているものだと思うんです。仕事をしていても頭のどこかにはいる、母ってそういうもの。それを感じていてほしいというメッセージがあって。だから子ども用のゲートをつけていないんです。
床も、子ども用のプレイマットを敷かないシックな色合いのフローリングに。
転んだら、痛いかもしれない。でも痛いってことを知るじゃないですか。コップだって、落としたら割れる。それでいいと思うし、それこそが教育だと思っていて。
日本って子どもを過剰に守る傾向があって、子ども向け製品がたくさんありますが、クマとかうさぎとかをつけるのが子ども用のデザインという固定概念がある。中には可愛いものもあるかもしれないけど、子どもの感性を馬鹿にするなって言いたいです。子どものほうがずっと感性はするどいんですよ。
「家族」というキーワード
じつは祖母が幼稚園の創立者だという石井さんの周りには、幼児教育に携わる人が多いのだそう。自分自身もその幼稚園に通い、お母さんも幼児教育者。「自分は母と同じ道はいかない」と思っていたという石井さんですが、振り返ると“家族”というものがテーマだったと言います。
でも、よく考えてみると“オヤコライフクリエイター”って名乗っていて、結局同じ道だったんですよね(笑)自分が子どもを育てるようになってから急にそう思うようになりました。
振り返ると、ずっとやってきたウェディングプランナーも、子育てとは人生のステージが違うけれど、”家族”がキーワードなんです。
結婚式という、家族というものをはじめて構築していくという儀式。自分自身で選んだ職業は、家族というキーワードだった。結局そんなに変わっていなかったと石井さんは笑います。
ウェディングプランナーをしている時は気づかなかったんです。結婚式という、幸せに関わる仕事をやりたいという思いがあって仕事をしていました。自分自身が結婚をしていなかったこともあって、リアルじゃなかったんでしょうね。
でも今こうしてオヤコライフクリエイターになってみると、同じ線上のことを仕事として選んでいる。この先も、私のキーワードは”家族”なんだろうなって思います。
ママが幸せであることの大切さ
このオヤコサロンは、未来を担う子どものためでもあるけど、その子どもを育てるママが幸せじゃなくちゃダメだという石井さん。
母親の愛って絶対なんですよね。子どもが輝くためには、子どもが幸せでなければならない。子どもが幸せになるためには、ママが幸せでなければならないって。
特に、今はママが働いていると、子どもと接する時間は短いんですね。そのなかでいかに子どもの愛情のタンクを満たせるか。でも、満たしてあげるために、ママ自身も幸せでいないと。
人間だから、時には怒ることだってある、とも言います。
でも、ただ怒られただけだと、子どもは「自分は愛されていないんだ」と思ってしまうかもしれない。だから、愛情のタンクを十分に満たしてあげることが肝心です。あなたは、ママにどんな時でも絶対に愛されているという確信を与えてあげるのです。
また、簡単におもちゃを買い与えるのではなく、ママ自身が想像力を働かせて、紙一枚でどれだけ遊べるか、どれだけ子どもを惹き付けられるか。部屋を散らかしても、壁に落書きをしたとしても、その遊びや絵の素晴らしさに気づかずに、ダメの一言で終わってしまうのではなく、子どもの想像力を伸ばしてあげてほしいなって思います。
家族は最小単位の「グループ」
働き方で悩んだりするのと同じように、ママも、どんなママが自分らしいママなのか分からなかったり、子どもが産まれてから夫婦関係がぎくしゃくしたりと、家族というものが分からなくなってしまう人もいるかもしれません。
子どもが産まれる前は、夫婦ってパートナーなんですよね。でも子どもが産まれることで、家族という最小単位のグループになると思うんです。夫婦とか、家族といったものがよく分からなくなってしまった、という時には、「チーム」だと思えばいいと思うんです。どんなチームだったら自分らしく生きられる?って。
この世に生まれてきたのだから、人生を豊かにして生きる権利がある。だから夫婦でもいいし、結婚をしていないパートナーでもいい。絶対に、絶対的に自分の味方であるというチームをつくる…。
チームだと捉え直すと、チームメンバーには気を遣いますよね。自分を応援してほしいですし(笑)そう考えると人に優しくなれたりして。家族って、その定義を学ぶ機会ってないと思うんです。
たいていは自分の家族しか知らないから、自分が親になったときに、どうすればいいのか実はそんなに事例をたくさん知らない。でもチームとして考えてみると、もっと分かりやすいかなって
石井さんは、「自分を応援してくれる人が誰もいない人生なんて、きっとつまらない」とも言います。
いろんな人に、自分のチームをつくってねと言っているんです。そしてチームができたら、いかにチームを育てるかが大事。オヤコサロンは、家族を育んでいくためのきっかけづくりの場なんです。そんな仕掛けをオヤコライフクリエイターとしてつくっていきたいなと思います。
お話を伺っている間も、自身もママである石井さんがいきいきと話されているのが印象的で、元気をもらったような気分になりました。このサロンに足を運ぶママたちも、きっとそう感じているのだろうと思います。
へその緒でつながっていたママと子どもの心は生涯つながっていること。そしてパートナーとともにチームという家族をつくること。
愛情を注いでいるようで、もしかするとそれ以上に、子どもからもたくさんの愛情を受けて家族という船は大海原へと旅立っているのかもしれません。
ママ業に疲れてしまっている方は、こうしたサロンに足を運んで、子どもとの向き合い方や家族の育み方について、少し立ち止まってゆっくりと考えてみませんか?
東京都渋谷区渋谷1-5-10 OGASAWARAビル1F
営業時間:AM10:30~PM3:00 土、日、祝日 AM11:00~
http://bonheur-de-sakura.jp